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2020.06.01 研究費設置企業のご紹介

個人の「面白い!」が食の価値を創る源泉 日本製粉株式会社

日本製粉株式会社 イノベーションセンター
(左から)
猪熊 貴之 氏、大島 晴高 氏、福光 聡 氏、新畑 智也 氏

日本製粉(以下ニップンと表記)は製粉業から始まり、食品事業を広く展開して食の業界を牽引してきた。近年では、肌の保湿に効果がある機能性食品素材をはじめとした新規分野の研究開発にも力を入れ、常に新しい時代を切り開くことを目指している。今回の研究費では、共に食の世界を変えていく仲間として、研究者からの独創的なアイデアをたくさん寄せてほしいと考えている。

総合食品企業「ニップン」への進化

 明治中期、日本で初めて機械式製粉機を導入した民間企業がニップンだ。以来120年以上に渡り、常に時代の変化に先駆けていち早く商品を生み出してきた。例えば、「オーマイ」ブランドとして定着している、ロングパスタやショートパスタ、さらにはその素材を引き立たせるパスタソースや冷凍パスタだ。その後も、共働き世帯や個食の増加などの社会変化に合わせて、冷凍食品事業、中食事業、ヘルスケア事業など、食に関わる新たな事業を拡大しており、総合食品企業への進化を遂げつつある。
同社の現在のスローガンは、「いつも食卓に、ニップン」というものだ。いまやニップンの事業売上において、祖業の製粉は全体の3割にとどまり、6割が食品事業だ。総合食品企業として、「さまざまな食シーンの中でニップンを身近に感じていただきたい」という思いからも、消費者に寄り添って新しい時代を切り開く、という姿勢が表れている。

研究員個人の「やりたい!」を起点にする

 既存事業にとらわれずに新規の研究開発を推進して事業化を目指す組織として、4年前に新設されたのがイノベーションセンターだ。社内公募制度により個々の社員から独自のアイデアを拾い上げ、採択されるとその課題を担当し、実用化を目指して一定期間その研究に専念できるという思い切った体制を取っている。
このユニークな組織の前身は、「26年前、小麦からセラミドが抽出できる、という論文を見つけて『これだ!』と思ったのが始まりでした」と現・副センター長の宮下氏は振り返る。それまであった多くのテーマをセラミド1本に絞る覚悟を決め、知見がほとんど無い中、抽出技術の開発から機能性の評価、製造販売に至るまで、全てゼロから構築した。社内には「なぜニップンで機能性素材?」と冷ややかな反応もあったが、「自分たちが『面白い!』と信じる新しいテーマをやりたい!やらねばならない、という一心で、社内認知は無かったものの、逆に言うと好きにさせてもらえたのが良かった」。現在、肌の保湿に効果があるとされるグルコシルセラミドは、ニップンのヘルスケア事業の要となるまで成長した。こうした経験が、研究員個人のアイデアを起点に据えるイノベーションセンターの組織づくりに生かされているのだ。

企業イメージにとらわれない研究課題を求めて

 現在20名ほど在籍する研究員は、世の中の研究シーズにもアンテナを張りながら、事業化に向けて自らの研究開発課題に取り組む。研究分野は大きく二つあり、一つは機能性食品素材に関する研究だ。例えば福光氏は、ロコモティブシンドローム対策の機能性素材として、オリーブ油の搾りかすに含まれるマスリン酸の研究を手掛けてきた。「残渣には有効成分が含まれることが多く、未利用資源活用というサステナビリティの観点からもその活用法や抽出技術、健康機能に注目しています」と話す。
注力分野のもう一つは、作物の栽培や育種およびその技術に関する研究だ。新畑氏と猪熊氏は、独自性のある小麦粉を生み出すための育種研究を行ってきた。「差別化が難しい食品業界の中で、加工技術や商品設計で競い合うだけでなく、素材づくりという上流からも特徴付けをしていきたい」と考えている。
イノベーションセンターではこの他に、健康に寄与する成分を豊富に含む機能性野菜の栽培技術開発、養殖魚用の人工仔魚飼料の研究、味覚の研究、アレルギーの研究、腸内細菌叢の研究など、従来の範囲に留まらない多様な研究テーマが進行中だという。

研究者と共に“食”のイノベーションに挑戦する

 現在の食の業界は、高齢化や女性の社会進出、世帯数の減少などの社会情勢を受けて、人によって食に求めるものが大きく異なっており、食の多様化が進んでいる。昨今の新型コロナウイルスの影響によるリモートワークの増加なども、この変化に拍車をかけるだろう。今回のリバネス研究費では、食の需要が大きく変化していく時代に、食に新たな付加価値を生み出す研究テーマを幅広く募集したいという。「私たちの既存テーマに関係するものも、そうでないものも大歓迎です。『その手があったか!』『面白い!』と唸るような、独創的なアイデアを研究者の皆様には期待しています」。研究者にとっては、自分のアイデアをニップンという出口を通して社会に実装する、という一つのチャンスかもしれない。「食を通じて社会を変え、面白くしたい」と考えている方はぜひ応募してほしい。
(文・西村 知也)

第49回リバネス研究費 ニップン 食のイノベーション賞 募集開始

募集対象:大学・研究機関に所属する40歳以下の研究者

  • 海外に留学中の方でも申請可能
  • 研究室に所属して研究を始めていれば、学部生からでも申請可能

対象分野

“食”に関して新たな価値を生み出すあらゆる研究

原材料に関する研究(育種、栽培、食品素材、薬用植物など)
食と健康・栄養に関する研究(健康機能性食品、嚥下食品など)
食品加工技術に関する研究(抽出、造粒、乳化、乾燥、安定化、低コスト化など)
保存・流通に関する研究(冷凍技術、包装など)
おいしさに関する研究(おいしさの見える化、味覚等五感の研究など)

採択件数

若干名

助成内容

研究費50万円

応募締切

2020年7月31日(金)24時まで

担当者より一言

 ニップンでは、製粉・食品加工だけではなく、作物育種、機能性食品素材など“食”に関わる研究開発に取り組んでおり、お客様にとって価値ある“食”を提供するため、将来を見据えた新規分野の開拓・事業化に向けた調査・研究開発を進めています。ニップンの既存事業にこだわらず、“食”に関する研究を広い視点で探索すると共に、研究者との繋がりをつくるため、本研究費を設置しました。上記に例を挙げましたが、“食”の付加価値を上げられる研究であれば分野を問いません。“食”をより良くしたいという方、“食”に対して斬新な発想をお持ちの方とお会いできることを楽しみにしています。

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リバネス研究費の申請について

皆様のご応募お待ちしております。