設置企業インタビュー記事
コーポレート研究所 先進高分子創発ユニット 部長
北村 幸太 氏
高分子材料の基礎的、汎用的な研究人と人とのつながりが研究開発を加速し、新しいテーマを生み出す
「高分子材料の基礎的、汎用的な研究」を対象分野とするリバネス研究費 東洋紡 高分子科学賞の設置も4回目となった。北村 幸太 氏 は、前回初めて審査に参加した感想を「どの申請書からも、研究者の方々の熱意と、研究の意義についての考えが強く感じられた」と話す。基礎・原理原則なくして応用はない。現象に対して「なぜそうなるのか」を突き詰めていくような研究テーマの申請を期待している。
研究開発から事業化までを一気通貫で経験
北村氏は、入社以来多くの研究開発に携わってきた。最も印象に残っているのは、「ゼノマックス®」という高耐熱性ポリイミドフィルムの立ち上げだ。東洋紡が有するポリマー合成技術や溶液製膜技術を駆使し、500°Cでも反りや変形が発生しない高耐熱性と、ガラス・シリコンウェハと同等の線膨張係数を示す優れた寸法安定性を両立したフィルムだ。北村氏は、ポリマー重合パイロット技術開発に参画し、事業化を見据えた品質管理・製造・応用開発を一体として行う事業開発プロジェクト、次いで新設工場の立ち上げプロジェクトに携わった。「研究開発を事業としてかたちにする大変さを、身を持って実感しました」。これが、どうやったら今のテーマを事業にできるかを考えるときの基盤になっている。
会話から新しいアイデアを生み出したい
現在、北村氏は、研究開発から事業化まで幅広く取り組んできた経験を活かし、材料系の研究開発を行う先進高分子創発ユニットを率いており、現テーマの推進とともに、新たなテーマの探索・立ち上げにも取り組んでいる。その中での組織活性化の1つとして、ユニットを構成するグループリーダーが様々なことを話し合う機会を定期的に設けている。
「テーマの探索や立ち上げには、リーダー間での協力関係が重要。グループ内で日頃困っていることや起こっている課題などを共有・議論すること、何より、同じ立場の者同士で気楽に話せる場があることが大事なのでは」と北村氏。「1人1人が持つ知識や技術は重要ですが、1人でできることは限られている。異なる知識や視点を持つ人が集まることで、研究の加速と発展が進むと考えています」。
基礎的・汎用的な研究も企業で活きる
東洋紡では、事業化を見据えた研究開発テーマや連携先を社外に求める動きも別で行なわれているが、リバネス研究費 東洋紡 高分子科学賞で募集するのは、自社で行う基礎研究よりももっと「基礎的・汎用的」な研究テーマだ。それは、なぜなのだろうか。「東洋紡 高分子科学賞に応募いただいた研究テーマが面白いのは、ある現象のメカニズムや原理原則を論理的に深く掘り下げて検証しようとしているところ。そういう研究があるからこそ、我々企業が、応用・発展のための研究開発ができるのだと思っています」。今後、採択者と研究員が互いの知識や技術についての対話を重ねることで、新たな研究テーマが生まれるかもしれない。「申請してくださったテーマを東洋紡で活かせるときが来ると確信しています」と北村氏は力強く言い切った。(文・磯貝 里子)
高分子材料の基礎的、汎用的な研究
高分子材料に関する幅広い“科学”研究を募集します。キーワードとして、有機合成、重合反応、有機・無機化学、材料工学、熱力学、相平衡、組織形成、電気化学、表面・界面化学などが挙げられますが、これに限りません。幅広く、高分子材料に関する基礎的または汎用的な研究を対象としています。
設置企業・組織 | 東洋紡株式会社 |
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設置概要 | 採択件数:若干名 |
スケジュール | 応募締切:2024年11月1日(金)18:00まで 審査結果:2025年1月ごろにご連絡予定 |
募集対象 | ・大学・研究機関に所属する40歳以下の研究者 ・海外に留学中の方でも申請可能 ・研究室に所属して研究を始めていれば、学部生からでも申請可能 |
- 担当者より一言
- 私たち東洋紡が長年培ってきたコア技術の1つに「高分子技術」が挙げられます。今後も東洋紡はコア技術の深化・融合と事業の組み合わせにより、様々なソリューションを創造していきます。このような背景から、高分子科学に関する幅広い分野からの研究テーマを募集します。新素材や産業利用への展開を視野に入れたテーマの他、高分子の本質理解に迫るような基礎研究に関わるテーマの提案も歓迎いたします。