リバネス研究費

2023年12月公募第63回リバネス研究費

第63回 プランテックス先端植物研究賞

植物の生産性や機能性を高めるあらゆる研究

植物の生産性や機能性を高めるあらゆる研究を募集します。育種や栽培時における光や灌水、施肥などの環境条件の調節等により水耕栽培や養液栽培のポテンシャルを引き出し植物の生産性や機能性を高める研究テーマを歓迎します。

設置企業・組織 株式会社プランテックス
設置概要

採択件数:若干名
助成内容:研究費50万円、Type XSの栽培試験環境を提供

スケジュール 応募締切:2024年1月31日(水)18:00まで
審査結果:2024年4月ごろにご連絡予定
募集対象 大学・研究機関に所属する40歳以下の研究者
※海外に留学中の方でも申請可能
※研究室に所属して研究を始めていれば、学部生からでも申請可能
担当者より一言
プランテックスは環境制御性能を高めた独自の植物工場システムの普及を目指し事業展開しています。植物研究の成果を、工場規模での量産につなげる技術の開発に力を入れてきました。本研究費では、植物の生産性や機能性を高めることを目指す先進的な研究テーマを幅広く募集します。研究成果が将来的に植物工場の用途拡大や価値向上を通じて、世界の食や農業を取り巻く様々な問題解決に寄与することを期待します。
設置企業インタビュー記事
株式会社プランテックス
創業者&取締役 秋山 卓二 氏
企画室長 竹山 政仁氏
(写真向かって左から)

世界に通用する植物研究を共に進める未来の仲間へ

世界の食と農に新しい常識が生まれることを目指す株式会社プランテックス。高度なものづくり技術を結集し、人工光型植物工場による新しい食料供給システムを実現すべく、日々研究開発に取り組んでいる。今回は、秋山氏と竹山氏にリバネス研究費プランテックス先端植物研究賞設置の想いを伺った。

研究開発から量産までを繋ぐ植物栽培装置

プランテックスは、2014年に産業用工場の技術者らが立ち上げたベンチャー企業だ。秋山氏も、創業メンバーの一人であり、前職では製造や医療、金融分野のソフトウェア開発を手がけていた。植物工場に関する事業をやってみないかと声がけをされた際に、衣食住に関わる仕事に関心を持っていたこともあり、参画を決めたそうだ。同社は、植物を制御する仕組みの数式化とエンジニアリングを駆使し、栽培空間を作業室から隔離した密閉方式の植物栽培装置を独自に開発している。現在、同社の植物栽培装置は2つのタイプがある。ひとつは、栽培条件の研究開発を小回りよく行うための研究用栽培装置(Type XS)で、もうひとつは量産栽培装置(Type M)だ。生産性の高い栽培条件(栽培レシピ)をType XSで作り出し、量産用のType Mで栽培レシピをもとに連続生産しても生産重量の変動幅が非常に狭く安定的な生産が可能となっている。通常、小規模栽培で良い結果が得られても、量産環境でその通りに管理しようとしても栽培環境が思うように制御できず上手くいかないということが起きがちであるが、Type XSとType Mの栽培ユニットの構造を共通化、密閉型で精密な管理ができるため異なる装置間や規模を拡大してもそのようなことが起こらない。

本格稼働した先端植物研究所

Type XSのプロトタイプの製作の際には、部品の調達から秋山氏が手がけたそうだ。創業時は植物工場の運営支援を行っていたが、装置として未熟なものが多いと感じたことをきっかけに、植物工場のポテンシャルを引き出すうえで、新たに装置を開発した方が良いという考えに至ったという。実際に開発を進める中で、CO2や、蒸散速度、光合成速度などのリアルタイムにデータを取得するものがある一方で、植物の生長に対する効果は時間差でみえてくることから、俯瞰的に捉えることが難しかったそうだ。トレイ単位で重量を測定することで植物の成長を可視化したところが拘りの一つだ。レタスの成長量をみてみると、移植タイミング等を反映して如実に変化するのが面白いと秋山氏は話す。昨年度に開所した先端植物研究所では、Type XSを合計32台設置し、植物の成分を分析するための分析室を設け、2023年4月より本格的な稼働を開始している。様々な条件を設定し、レタスやホウレンソウ、バジルなどのハーブ類、イチゴなどの果菜類、穀類などの多様な種類の植物に関する栽培研究を行っており、栽培日数の短縮や生産性向上、味・品質の向上、葉の長さのコントロール、特定の成分含有量向上などにつながる研究を進めている。

世界の食と農に新しい常識を生み出す

2023年5月には、同社は、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所とロート製薬株式会社と国内での薬用植物の安定的栽培及びそれを活用した事業化に向けて、共同研究契約を締結。薬用植物のオタネニンジンの安定的な栽培方法の構築および、それを活用した事業化に向けて3社で研究を始めている。本研究を推進する秋山氏は、「色々な植物を育ててみないと、わからないことが多い」と話す。環境制御をメインに植物のコントロールを行ってきたなかで、品種、環境など複雑に要素が絡んでおり、これまでに取り組めていなかった部分を認識している一方で、今まで以上に植物の生産性や機能性を高められる可能性があると感じているそうだ。竹山氏も同社の栽培研究において品種はまだまだ取組余地の広い領域だと思っている。これまでの農業では露地で栽培しやすいものが選ばれ、品種として残ってきた。植物工場の市場が大きく拡大する中で、光のあたらなかった品種が活躍する世界が来るのではないかと期待を寄せる。今回のプランテックス先端植物研究賞では、10年後、20年後に大きな事業や産業につながっていくような野心的なテーマの応募も期待していると竹山氏。秋山氏も「プランテックスは世界を目指している。研究者と共に世界を目指せる夢のある研究テーマに期待している」と話す。植物工場産業全体を捉えたときに、収穫後の機能性や保存性を高める研究テーマも注目しているそうだ。新しい植物栽培装置と植物科学分野の研究者が組み合わさることで、社会実装する技術が生まれる未来に期待したい。
(文・宮内 陽介)

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