リバネス研究費

2022年9月公募第58回リバネス研究費

第58回 日本ハム賞

設置企業インタビュー記事
日本ハム株式会社
中央研究所
リーダー、西山 泰孝氏
マネージャー、髙萩 陽一氏
リーダー、神田 理瑳氏
次長、菅原 幸博氏
所長、岩間 清氏
シニアプロモーター、松本 貴之氏

持続可能で美味しいたんぱく質の提供を目指して

長年、食肉や食肉加工品などの食品を提供してきた日本ハム。環境意識の高まりや消費者による食品選択の考え方が多様化し続ける中、外部の知恵を取り込むことで持続可能なたんぱく質の提供を目指す。

環境問題と人の欲求のバランスポイント

持続可能な社会への転換に向けた動きが世界的に加速している。畜産業界においても、家畜生産に伴う環境負荷低減に向けた取り組みが強く求められている。その中で植物原料による代替肉がすでにコンビニやスーパーマーケットに並び、培養肉の技術開発も進む。日本ハムでもそれらを手掛けているが、一方で「消費者に求められる美味しさを提供しつつ、環境負荷を低減するのが非常に難しい課題です」と西山氏は話す。特に日本においては、古くから豆腐やがんもどきなど、植物からたんぱく質を摂取する食文化があった。それゆえに大豆原料の代替肉を受け入れるハードルは低いだろうが、あえて高い金額で代替肉の形になったものを買うかというのが、味と値段のバランスにシビアな日本市場の難しい点だという。「だからこそ、畜肉をなくしていくのではなく、残しながらより持続可能な形を目指していくための研究が重要なのです」。

単一解でなく、多くのアイデアを試したい

農林水産省の畜産統計によると、国内での飼養頭数は肉 用牛が260万頭、豚が929万頭。それらが排出するメタンや排泄物が地球温暖化の原因となり、また飼料を育てるために多量の肥料や水が必要であることなどが課題視されている。日本ハムでも研究機関との連携で家畜由来の温室効果ガス排出削減に関する共同研究を進める他、食品製造工場において食品製造の際に排出される動植物性油脂を燃料として活用するなどに取り組んできた。
農場での生産から屠畜、加工、流通、販売までを総合的に手掛ける日本ハムだからこそ、「単一解を求めているのでなく、多様な解決策のアイデアを外部から取り入れて、 試していきたいと考えています。例えば生産プロセスを考えても、国内や国外、大規模農場や小規模農場、といった多様なフィールドの中で、適用しうる技術も変わるはずです」と西山氏は話す。

多様化する食に、もっと自由な発想で挑む

環境負荷低減の取り組みの一方で、ニッポンハムグループでは2030年に向けたマテリアリティ (重要課題) の一つとして「食の多様化と健康への対応」を掲げている。1996年から食物アレルギーケアに対する研究開発を進め、様々な食物アレルギー対応商品や、食物アレルゲンの混入を検査するキットなどを世に送り出してきた。またたんぱく質摂取と運動の組み合わせによる高齢者のフレイル予防効果を検証するなど、高齢者のQOL向上に向けた研究にも取り組む。他方、最近では冷蔵・冷凍食品の利用の増加や、全国から取り寄せ可能な多種多様な食品、調理家電の進化など、普段の食生活を取り巻く環境も激変している。 「栄養としてたんぱく質を摂取することは生きるために必須です。また、美味しく食べることも、人間として必要なことだと思います。その一方で、日々の忙しさや個人の体質といった様々な理由で“美味しい食事”を追い求めるのが難しい人もいるし、“美味しくて健康”などプラスの価値を求めたい人もいる。たんぱく質を提供する会社として、いろいろな選択肢を提示していきたいと考えています」。 一人ひとりが食を自由に選び、楽しめるような社会の実現に向け、従来の製品や発想に囚われることなく食事を中心とした商品・サービスの提供の多様化へ挑んでいる。

異分野とのコラボレーションにも期待

リバネス研究費日本ハム賞は今回で5回目の設置となる。 設置に当たっては社外からの新しい視点を得たいという狙いがある。自社の知識や技術、ノウハウだけでできることは限られている。畜産・食品分野の研究者に限らず、アカデミアの研究者と連携し知識を掛け合わせることで、可能性は格段に広がる。昨年度のリバネス研究費を通じてつながった化学系研究者とは、環境対策に関する共同研究を開始している。初めて会ってから3ヶ月後には共同研究を開始するスピード感だった。
食品産業の環境負荷低減の実現や、未来の”食卓”の創造を通じて、2030年に向けたグループのビジョン「たんぱく質を、もっと自由に。」へつながる申請を期待している。
(文・瀬野亜希)

食の未来につながる研究

以下のようなテーマを募集します。
1. 食品産業の環境負荷低減に関する研究
食のサプライチェーンにおける温室効果ガス排出 (食品工場からのCO2排出や家畜からのメタンガス排出など) の削減に繋がりうる研究、循環農業に繋がりうる研究など
2. 未来の“食卓”に関する研究
食卓に関わる各種社会課題の解決や、スマートキッチン、食に関するAIの開発、食に関わる購買行動などに関する研究

設置企業・組織 日本ハム株式会社
設置概要

採択件数:若干名
助成内容:研究費50万円

スケジュール 応募締切:2022年10月31日(月)18:00まで
審査結果:2023年1月ごろにご連絡予定
募集対象 ・大学・研究機関に所属する40歳以下の研究者
・海外に留学中の方でも申請可能
・研究室に所属して研究を始めていれば、学部生からでも申請可能
担当者より一言
日本ハムはたんぱく質を中心とした事業活動を行ってきましたが、現在、食を取り巻く状況が大きく変わろうとしています。多様化する需要に応えながら、将来にわたって安定的に良質な食品を提供するのが私共の使命ですが、そのためには多くの課題を解決していかなくてはなりません。これまでもリバネス研究費を通して多くの研究者と出会うことができましたが、今回も、食の未来を探求していく熱意を持った多くの皆様と出会えることを楽しみにしています。
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