
2025年3月公募第68回リバネス研究費
第68回 三洋化成賞 募集テーマはこちら
茨城大学大学院 理工学研究科
篠田 明優さん
- 採択テーマ
- 納豆菌を活用した光改質反応による食物廃棄物の高付加価値化
光改質反応による地域の未利用資源の有効活用
バイオマスの分解と水素製造を両立させる光改質反応の研究を行う、茨城大学の篠田さんら。本採択テーマでは、地域の特産物であるさつまいもの加工プロセスで、産業廃棄物として発生する皮を原料として、有価物化とエネルギー創出を可能とする研究に取り組んでいる。
エネルギーと有価物を生み出す光改質反応
農業や食品用途から出るバイオマスをケミカルリサイクルする方法の一つとして近年注目されているのが、光改質反応だ。硫化カドミウム(CdS)をはじめとする光触媒に光を照射すると、内部で伝導帯電子(e-)と価電子帯正孔(h+)が生成する。この電荷分離を活用して、光改質反応ではh+で有機廃棄物を酸化することでアルコールや有機酸へ低分子化する改質を行いながら、一方でe-が水を還元することで水素(H₂)を同時に生成することが可能である。篠田氏が所属する研究室では、この光改質に関する研究に積極的に取り組み、これまでにバイオマスや廃プラスチックの分解に取り組んできた。篠田氏自身も、未利用なバイオマスの有価物化を可能とする光改質の研究に取り組みたいと思い、これまで光触媒の水素生成活性を向上させる助触媒の研究に携わってきたという。
環境負荷の低い前処理方法への挑戦
篠田氏らが今回の三洋化成賞への申請にあたり特に議論した点が、廃棄物の選定およびその前処理方法だという。食品廃棄物や加工副産物の利活用が国内および世界的に望まれる中で着目したのは、茨城県内での発生量も多い加工副産物である、さつまいもの皮だった。一部は飼料や堆肥として消費されるが、より付加価値の高い活用が望まれる地域資源である。所属研究室内でも、これまでセルロース系バイオマスの光改質反応の実績があることから、繊維質の多い材料であるさつまいもの皮は十分材料候補になり得た。次に前処理方法の検討を行った。一般的にセルロース系バイオマスの分解には熱処理やアルカリ処理を施すことが多いが、環境負荷が高いことが問題視されていた。そこで考案したのが、納豆菌を活用したセルラーゼ反応によるサンプルの低分子化だ。この生物処理を細かく裁断したさつまいもの皮に適用する他、反応に用いる光触媒も、CdSフリーにすることで、環境負荷の低減を試みるという。
地域の未利用“資源”活用モデルの構築を目指して
「県内のバイオマス資源を活用した光改質反応に成功したら、将来的には各地域の廃棄物をその場で消費して有価物やエネルギーを産み出す『地消地産』モデルを実現したい」と語る篠田氏。既に、地域のさつまいもの加工業者からサンプル提供の協力を取り付け、本研究のために研究室に導入したインキュベーターで納豆菌の培養も始めている。光改質反応という最先端の研究領域の知見を用いた篠田氏らの挑戦は、本賞の募集テーマ「未利用資源を高機能化し有効活用するあらゆる研究」にまさに適合する。食品廃棄物や加工副産物の“資源化”は各地域の社会課題の解決につながる着実な第一歩となるだろう。(文責・井上 剛史)