リバネス研究費

2024年9月公募第66回リバネス研究費

第66回 &タウリン賞

タウリンを介した生命現象・生体機能の解明に関わるあらゆる研究

抗老化作用等、近年再発見が続くタウリンのポテンシャルを掘り下げ、少子高齢化社会における 健康寿命の延伸に寄与するあらゆるテーマを募集します。 これまでのテーマに新たにタウリンを取り入れた研究も推奨します。

設置企業・組織 大正製薬株式会社
設置概要

採択件数:若干名
助成内容:研究費50万円

スケジュール 応募締切:2024年11月1日(金)18:00まで
審査結果:2025年1月ごろにご連絡予定
募集対象 ・大学・研究機関に所属する40歳以下の研究者
・海外に留学中の方でも申請可能
・研究室に所属して研究を始めていれば、学部生からでも申請可能
担当者より一言
近年、 国内外においてタウリンに関する大きな研究成果が生まれてきています。若手研究者の皆様にも関心を持っていただくことで、その可能性をさらに広げていただければ幸いです。特にこれまでにタウリンを題材として取り扱ったことのないような分野からの応募を期待しています。 リバネス研究費「&タウリン賞」の表題の通り、今後実施される予定の研究にぜひタウリンを取り入れてください。熱心に研究に打ち込んでいる多くの方のご応募をお待ちしております。
設置企業インタビュー記事
大正製薬株式会社 研究本部 セルフメディケーション研究センター センター長 内田 さえこ 氏(中央)
セルフメディケーション開発薬理研究室 室長 森戸 暁久 氏(右)
製剤第1研究室 グループマネージャー 堂本 隆史 氏(左)

タウリンを介してヒトの健康寿命の延伸に貢献する

2023年6月Science誌で発表された論文は、各方面で驚きを持って迎えられた。その報告はタウリンが老化を抑制する可能性を示したものだ。約200年前に発見され、世界中で研究されてきたタウリンが今、再び注目されている。

幅広い作用を持つアミノ酸、タウリン

タウリン研究の歴史は古く、1827年にウシの胆汁から発見されたことに始まる。大正製薬株式会社では、1941年からタウリンの研究に着手していて、当時はタコから抽出して研究に用いていた。その後、同社では化学合成にも成功した。タウリンはアミノ酸の一種で、体内でもわずかに合成されるが、食事などからも日々摂取されている。人間の心臓、脳、肺、肝臓、目、骨格筋など、あらゆる臓器や組織に分布しており、体内の存在量は体重の約0.1%相当とされる。また、タウリンはタンパク質を構成するアミノ酸とは構造が異なり、多くは他のアミノ酸とは結合せずに体内で遊離した状態で存在する。この特性から、体内の機能を一定の状態に保とうとするホメオスタシス作用を有しており、生命を維持するために必要不可欠な物質と考えられている。具体的には、抗酸化、細胞の浸透圧調節、胆汁酸抱合、抑制性神経伝達、解毒などの作用がある他、タンパク質のフォールディング、ミトコンドリアのタンパク質翻訳などに関与している。大正製薬は、含硫アミノ酸研究会や国際タウリン研究会等を通じてアカデミアと連携しながら、ミトコンドリアでのエネルギー産生への影響や抗疲労効果等を中心にタウリンの生理活性や作用機序の研究を進めてきた。

明らかになった老化抑制機能

アミノ酸であるがゆえに体の各所に作用することが明らかにされてきたタウリンが、2023年にScience誌に掲載された論文から老化との関係が大きく注目を集めた。マウスに継続的にタウリンの経口投与を行うと、対照群に比べて約10%寿命が延長した。この寿命の延伸率は人間では7〜8年分に相当すると考えられる。これらの一連の報告は、タウリンが健康や寿命に影響を与える可能性があることを包括的に示しており、タウリン研究の長い歴史に、新しい風を吹き込んだと言える。抗老化領域の注目度が社会的にも高まりつつある中、今後より詳細なメカニズムの解明が期待される。また、寿命を大きく延伸する可能性のある栄養素であるならば、様々な生命現象においても重要な役割を果たしているのではないか、という期待を持つこともできる。このような期待の中、大正製薬はタウリン研究に新しい切り口を持ち込み、裾野を広げていく仲間を増やしていきたい。今回の研究費をきっかけに、自らが注目する生命現象に関する研究の中でタウリンがどう働くか、または投与するとどのような変化が現れるかを考えてみてはいかがだろうか。(文・中嶋 香織)

Taurine deficiency as a driver of aging. Science, Vol 380, Issue 6649 https://www.science.org/doi/10.1126/science.abn9257

 

現在募集中のリバネス研究費