リバネス研究費

2024年6月公募第65回リバネス研究費

第65回 綜研化学賞

社会課題の解決につながる高分子化合物に関するあらゆる研究

・ヘルスケア、エネルギー、サステナブル分野に応用できる新規材料に関する研究
・次世代の粘着剤、微粒子、コーティング材料の開発につながる研究

設置企業・組織 綜研化学株式会社
設置概要

採択件数:若干名
助成内容:研究費50万円

スケジュール 応募締切:2024年7月31日(水)18:00まで
審査結果:2024年10月ごろにご連絡予定
募集対象 ・大学・研究機関に所属する40歳以下の研究者
・海外に留学中の方でも申請可能
・研究室に所属して研究を始めていれば、学部生からでも申請可能
担当者より一言
綜研化学は粘着剤をはじめとする様々な高分子材料を取り扱っていますが、より良い未来を実現するためには、これまでにない発想や技術を基にした新たな挑戦が必要だと考えています。我々のミッションは、皆さまの研究成果を早期に工業展開し、社会課題の解決に結びつけることです。共に挑戦していきたいと願っていますので、ご応募宜しくお願い致します。
設置企業インタビュー記事
(写真向かって右から)
新規事業企画部 部長 清水 政一 氏
新規事業企画部 横倉 精二 氏

安定生産を武器に、高分子の新たな可能性を社会に実装する

戦後、日本のものづくりをケミストリーで支えたいという熱い思いを持った研究者たちによって立ち上がった綜研化学は、現在、日本を再び盛り上げられるような方法を探索している。その鍵を握るのは、やはり熱い思いを持った研究者の力だ。これまでに綜研化学が培った高分子合成のノウハウを活かして、ケミストリーの新しい世界を切り拓ける仲間と取り組みたい未来の形について語った。

戦後に立ち上がった化学ベンチャー

戦後の日本の復興に化学技術で貢献しようと、8人の研究者からスタートした綜研化学は、「小なりとも最優の会社となって社会に貢献しよう」という創業の精神を大事にしてきた企業だ。工業的に化学物質を生産する際には、いかに熱を安定して制御するかが重要である。しかし、終戦間もない頃のものづくりは、熱を反応釜に伝える熱媒体を海外からの輸入品に依存しており、高価かつ入手が困難であった。そのような時代に、綜研化学は国産で初めて熱媒体の工業化に成功し、以来、技術力の綜研として日本のものづくりを影で支え続けてきている。1948年の創業時から変わらず、化学のプラントエンジニアリングという伝統的な強みを持った綜研化学では、「企業の規模は小さくとも、とある領域ではベストになってやろうという心意気を大事にしている」と清水氏は語る。3年前に発足し同氏が部長を務める新規事業企画部は、綜研化学設立当初のように日本を盛り上げる研究を推進するために、綜研化学の技術力を活かせるような外部連携を進めることをミッションとしている。

安定生産という強みを活かした高分子作り

綜研化学では、強みであるプラントエンジニアリングの知見を活かして、微粉体、粘着剤、重合技術を中心とした扱いにくい化学物質や性質が不安定な物質の安定合成を実現してきた。高分子は様々な原料モノマーを用いるため、原料の組み合わせや分子量によって、高粘度となることや、安定した性状が出せないといった合成難易度の高いものが存在する。これらの高分子は例え優れた性質を持っていたとしても、量産に不向きで研究開発も進まない。綜研化学では、このような困難な物質の合成ニーズに誠実に向き合い挑戦し続け、幅広いニーズに答えられる高分子材料の量産プロセスを構築してきた。その結果、現在は液晶パネルのフィルム貼り付け用粘着剤や、複合コピー機などで使用されるトナーキャリア用微粒子などは、トップクラスの市場シェアを有するに至っている。最近では、植物由来の抗菌剤に注目して物質・材料研究機構(NIMS)との連携を進めている。一般的な抗菌剤は石油や銀などを原料として開発されているが、NIMSではこれら有限資源に替わる循環型資源を原料とした植物由来の抗菌剤の技術開発を進めており、綜研化学の技術を使ってその工業生産に取り組んだ。抗菌剤の知見をあまり持たない綜研化学の研究者ではあったが、合成処方の改良を重ねることで量産試作に成功した。担当した横倉氏は「工業的な合成に関する知見や、課題に対して試行錯誤してやり遂げる姿勢が活きたと思います」と語った。現在この素材はマーケティングフェーズへと進み、商品化に向けてさらなる開発が進んでいる。

未開拓な高分子の可能性を開拓する

これまで培った高分子の安定生産に関するノウハウを活用して、新規事業企画部ではアカデミアとの共同研究を積極的に行っている。今回のリバネス研究費ではライフサイエンス、エネルギー、サステナビリティの分野に応用可能な高分子素材の開発に繋がるテーマを募集する。「大きすぎない企業なので、結果はどうあれ一緒に共同研究をやり切れると思う。楽しくやっていける研究者の方と一緒に挑戦したい」。テクノロジーを面白がろうという研究所として設立された当初の思いと、現在の綜研化学としてテクノロジーで日本へ再び貢献したいという思い、そして研究成果を社会に届けたいという研究者の思いがぶつかって共同研究が始まる。そんな反応釜のような熱い場にしていきたい。 (文・田濤 修平)

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