リバネス研究費

2024年3月公募第64回リバネス研究費

第64回 エステー賞

天然物で生き物の健康や生活を豊かにする空気を創造するあらゆる研究

空気や天然物質を利用して生活の豊かさを向上させる、下記のようなテーマを広く募集します。
・天然物質の機能性の研究
・香りが体に与える影響を調べる研究
・空気の成分の調整や空間デザインが、体調や感覚に与える影響を調べる研究
・空気の調節や天然物質を利用したペットの健康の改善
・その他、空気や天然物質に関わる研究

設置企業・組織 エステー株式会社
設置概要

採択件数:若干名
助成内容:研究費50万円

スケジュール 応募締切:2024年4月30日(火)18:00まで
審査結果:2024年7月ごろにご連絡予定
募集対象 ・大学・研究機関に所属する40歳以下の研究者
・海外に留学中の方でも申請可能
・研究室に所属して研究を始めていれば、学部生からでも申請可能
担当者より一言
エステーでは、生活をより良くするために、天然物を積極的に活用しながら製品開発を行っています。特に、人の暮らしのすぐ隣にある空気に着目し、嫌なにおいを消臭するだけでなく、ストレスを低減し睡眠の質改善につながるような香りの製品を開発し、人々の暮らしの質やウェルネスの向上を目指しています。これまで以上に新しい製品につながる、自社だけでは生まれない研究アイデアを歓迎します。我々と共に、自分の研究を広めて世の中の役に立ちたいという想いを持っている方のご応募をお待ちしています。
設置企業インタビュー記事
(写真向かって右から)
新規事業開発室 クリアフォレスト担当
エグゼクティブエキスパート
奥平 壮臨 氏

日本かおり研究所株式会社
代表取締役社長
小澤 洋平 氏

空気を変える研究成果の社会実装で生活の豊かさに貢献する

消臭剤や防虫剤を中心に製品を展開しているエステー株式会社では、化学を利用して生活に根付いた課題の解決に取り組んできた。今回の研究費では、外部の研究者と連携し、自社のみではできない研究や商品開発に取り組むことで、これまで以上に生活の豊かさに貢献したいという想いがある。

天然物を使いやすくすることで生活を豊かにする

1946年の創業以降、エステーは人々の生活の課題を解決することに向き合ってきた。創業者である鈴木誠一氏は、戦後間もない頃に、母親の着物が虫食いにあったことから、女性にとって大切な衣類を虫食いから守る商品の開発に取り組んだ。当時、衣服は貴重品であり、多くの家庭では大切な財産だったとされている。そんな中、防虫剤の販売を開始したのが創業のきっかけとなっている。
また、時代に合わせて生活の課題を解決するために、天然物を活用した製品開発にも取り組んできた。例えば、唐辛子の成分をお米の虫よけに利用している米唐番は、古くから家庭で米の防虫に使われていた唐辛子をより使いやすく、終わりが分かるようにゲル化している。「伝承的に使われてきた自然の力を現代のテクノロジーでお客さんが使いやすい形に変えてお届けするという使命感を持っている」と奥平氏は語る。

外部の研究者と連携してできた森の力の社会実装

生活の課題を解決するために、化学やバイオテクノロジーを専門とする内部の研究員と共に研究開発を進めてきたが、これまで以上に新しいことを行うためには自社のみでは難しいとして、外部の研究者との連携に積極的に取り組んでいる。産官学連携で行った取り組みの一つが、森の力で空気を浄化する、クリアフォレスト事業だ。この事業を始めるにあたり、最初は森がどのように大気汚染物質を除去しているか、先行研究を調べてみたが、森の空気のどの成分がその役割を担っているのかはわからなかった。そこで、独立行政法人森林総合研究所(現国立研究開発法人森林研究・整備機構)と連携を行い、全国の森の空気を採取し、大気汚染物質が少ない綺麗な空気を調べる研究を始めた。その結果、北海道のトドマツの林の空気が非常に綺麗だと明らかになり、トドマツの枝葉から蒸散する有機性の揮発成分が空気の浄化作用を持つことを発見した。
トドマツの成分に空気浄化作用があることがわかると、車の中に入る排気ガスなどの浄化に使えないかという発想で、自動車用空気浄化剤を開発した。車の排気ガス中に含まれるNOxは気管支に影響を与える可能性があり、都市部で喘息などの子どもが多いと言われている。こうした社会課題の解決に貢献したいと思って生まれた製品である。「外部の研究者との共同研究の成果から、社会課題の解決につながる製品を作り出せた印象深いプロジェクトだった」と語る奥平氏からは、この事業にかけた熱量を伺うことができた。

エアケア×ウェルネスに着目して生活を変える空気を探究する

現在エステーでは、クリアフォレスト事業や消臭剤の開発に代表されるように、人間に欠かせない空気を通して生活を豊かにするエアケアに取り組んでいる。ここでは、悪臭といった課題の解決だけでなく、香りを用いた睡眠の質の改善といった空気に付加価値を与える製品の開発も進んでおり、様々なアプローチで生活の豊かさの向上を目指している。今回のリバネス研究費の設置に関しては、これまで研究してきた天然物や香りには着目しつつも、それ以外の研究テーマにも興味があるという。「香り×ウェルネスを一つの方針にしているが、ウェルネスの範囲は幅広く捉えている。人だけではなくペットなども対象となり、今まで知らなかったテーマが出てきても面白い」と小澤氏は語り、自社にはない発想を求めていることが伺えた。また、これまで研究としては面白いが社会に出ていないものを多く見てきて、勿体ないと思った事も多い。そのため、今まで研究成果を製品する事を得意とするエステーの経験と商品開発体制を活かして、申請者の研究の社会実装(商品化)に向けた支援も積極的に行うという。エステーと研究者の想いが重なり、生活がより良くなるための研究が進むきっかけとなる研究費にしたい。(文・八木 佐一郎)

現在募集中のリバネス研究費