リバネス研究費

2023年9月公募第62回リバネス研究費

第62回 日本ハム賞

畜産業の環境負荷低減、持続可能性に繋がるあらゆる研究

持続可能な家畜飼料、排泄物や非可食部位の利活用、加工プロセスの省エネルギー化や熱回収、加工残渣や食品ロスの低減やアップサイクル、またこれら一連の過程におけるGHGの削減、回収、有効活用など、持続可能な畜産業を実現することに繋がるあらゆる研究を募集します。

設置企業・組織 日本ハム株式会社
設置概要

採択件数:若干名

助成内容:研究費50万円

スケジュール 応募締切:2023年10月31日(火)18:00まで
審査結果:2024年3月ごろ、ご連絡予定
募集対象 ・大学・研究機関に所属する40歳以下の研究者
・海外に留学中の方でも申請可能
・研究室に所属して研究を始めていれば、学部生からでも申請可能
担当者より一言
日本ハムは持続可能な社会の実現に向け、サステナブル経営を実践しています。畜産業は人々の生活のために重要な役割を果たしている産業ですが、持続可能な産業となるためには多くの課題があります。将来にわたって安定的に良質な食品を提供する責任を果たしていくため、これらの課題に一緒に取り組んでいただける、熱意ある研究者との出会いを求めてリバネス研究費日本ハム賞を設置しました。皆様からのご提案をお待ちしております。
設置企業インタビュー記事
(左から)
中央研究所 リーダー 西山 泰孝 氏
中央研究所 所長 岩間 清 氏
中央研究所 プロモーター 森下 直樹 氏

畜産業の環境負荷低減、持続可能性に繋がるあらゆる研究

 持続可能な家畜飼料、排泄物や非可食部位の利活用、加工プロセスの省エネルギー化や熱回収、加工残渣や食品ロスの低減やアップサイクル、またこれら一連の過程におけるGHGの削減、回収、有効活用など、持続可能な畜産業を実現することに繋がるあらゆる研究を募集します。

 

自社だけでなく、業界を巻き込んでいく発信を

 日本ハムは中期経営計画で、2030年までに化石燃料由来CO2排出量を国内で46%以上削減する(2013年度比)という目標を掲げている。これを受けて、食品包装材の使用量カット、廃油を使ったボイラーなど積極的な取り組みを進めてきている。ただ、目標達成に向けては、まだまだ勢いをつけていく必要がある。具体的な取り組みとしては、看板商品でもある「シャウエッセン®」の包装形態変更で、プラスチック使用量28%カット、年間のCO2排出量約4,000トン削減を実現した。本取り組みは 『シャウエッセン®の断髪』として大々的に発信され、業界や消費者だけでなく従業員の意識改革にも繋がったという。

 また、2021年度には食品製造の過程で排出される動植物性の油脂を燃料とする廃油ボイラーを4工場に導入し、からあげなどの製造に使用したフライ油を燃料として再利用した。これにより、年間約2,200トンのCO2排出量削減が見込まれる。また2022年7月現在では、13カ所の事業所の屋根上に太陽光発電設備を導入しており、合計の年間推定総発電量は約3,900MkWh。これは一般家庭約1,330世帯分の年間電力使用量に相当し、年間約1,700トンのCO2排出量削減が見込まれている。環境課題が逼迫するなかで、諸外国に比べて遅れがちな日本の食品業界を、着手できるところから確実に挑戦することで、食品業界を牽引していきたいという想いがある。

 

アセットを積極活用して実証を進めたい

 ここ数年、植物性タンパク質原料を利用した代替肉や、培養肉といったアプローチからタンパク質食生産における環境課題に対応する取り組みが広がっており、日本ハムとしても当然それらに取り組んでいる。ただ今回の研究費設置で狙うのは、既存の畜肉・加工肉生産における環境負荷低減だ。家畜の生育時に排出するGHGの削減から商品の生産・加工現場での電気・熱エネルギー使用における省エネ・CO2回収、また家畜排泄物・食品廃棄物からのアップサイクルまでも含めた、解決に新しい技術が必要となる環境負荷低減のための取り組みだ。これには同社ですでに導入している環境対策をさらに加速する狙いがある。西山氏は「頂いた提案に対して、工場や農場からサンプルを出しつつ小規模な実証試験も進められればと考えています。また、実環境でラボと異なるデータが得られるかなど、自社のアセットをどう研究者に活用してもらって導入に向けた検討を進められるか、具体的に相談していきたいですね」と話す。日本ハム社内だけでは検証が難しいテーマであっても、必要に応じて取引先や試験農場、ものづくり企業などに協力を仰ぎながら進めていきたいと、この取り組みに向けた意気込みを話してくれた。

※CO2削減効果は、各拠点の電力供給会社の排出係数に基づき算出。

 

飼料から残渣活用まで、幅広いテーマを求める

 日本で最も多くの食肉を生産加工・販売しており、先進的な取り組みも導入している同社での実用性検証が進むことは、社会実装への最短スピードとなるだろう。例えば家畜飼料に未利用資源や微生物を利用していくことができれば、既存の輸入飼料の輸送時に排出されるCO2の削減に繋がり、同時に飼料高騰への対策にも繋がるはずだ。また、日本ハムグループは牛、豚、鶏の国内流通量の20%シェアを持ち、食肉製造の副産物は膨大な量が発生している。「血液、羽毛、骨、皮、端肉(カット残渣)などは、現在有効活用しているが、コストもかかり、またその結果CO2を排出している。これらをアップサイクルにより資源としてさらに活用できるような知見、技術があると面白いですね」と森下氏は話す。食肉製造の副産物は、活用のための技術を導入できれば、資源の山に変わるかもしれないのだ。

 国内食肉業界の第1位、世界でも第8位の大手メーカーとして、業界におけるGHG削減への取り組みを示していく責任が日本ハムにはある、と話す西山氏。今回の研究費公募において、すぐに実証・実装へと進めるテーマだけでなく、長い目線で技術開発が必要な課題の視点の提案も求めている。多くの研究者からの知恵を集めることで、持続可能な形で美味しい肉を食べ続けることができる社会を目指していく。(文・伊地知 聡)

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