環境に配慮した唯一無二の特長をもつ材料に関するあらゆる研究
例えば、下記のような分野横断的な研究を広く募集します。
・カーボンニュートラルに貢献する水素関連の材料及び技術の開発
・新しい発想に基づく複合材料の開発
・耐宇宙環境性をもつ無機材料の開発
・持続可能な社会の構築に向けた、実験と計算の連携・協働が可能な研究
・以下の特性をもつ材料に関する研究
劣化しにくく、長期的に使える素材
自己修復(生物模倣材料を含む)
分解の早い、もしくは分解の必要がない素材
設置企業・組織 | 京セラ株式会社 |
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設置概要 | 採択件数:若干名 助成内容:研究費50万円 |
スケジュール | 応募締切:2023年10月31日(火)18:00まで 審査結果:2024年6月にご連絡予定 |
募集対象 | ・大学・研究機関に所属する40歳以下の研究者 ・海外に留学中の方でも申請可能 ・研究室に所属して研究を始めていれば、学部生からでも申請可能 |
- 担当者より一言
- 京セラのものづくり研究所では、材料に向き合い、その特性を引き出すために何度も実験を繰り返した成果を、製品として生産し社会課題解決に貢献するため素材だけでなく製造プロセスを強く意識した研究開発を行っています。私たちは皆さんの研究にかける熱い思いや夢を受け止め、実現に向けて一緒に議論したいと考えています。研究テーマ例に限らず、新規複合材料の開発やその他分野横断的な研究テーマの募集をお待ちしています。
リバネス研究費の申請について
設置企業インタビュー記事
所長 大嶋 仁英氏 、材料創生開発部 野嶽 弘継氏 、恩地 涼樹氏 、GX開発部 平尾 和輝氏、先端機能部品開発部 長谷川 幸弘氏、開発推進部 川井 信也氏
互いの強みを活かせる「ものづくり」を進めたい
きりしまR&Dセンターに属するものづくり研究所は、京セラ株式会社が各地に拠点を置く研究所の中でも、工場が隣接し、製品化や生産を強く意識した研究開発が行われることが特長だ。昨年度実施したリバネス研究費では、セラミックスの既存の境地を超えることを目指して広く公募を行い、多くの研究者とのつながりができた。今年は、外部研究者との連携に強い関心を持つ若手社員4名が、申請テーマの方針立案から関わり、研究者の方々との新たな連携創出を目指す。
職人気質を活かした新しいものづくり
ものづくり研究所で行われる研究開発は、その成果が製品として生産され、世の中に普及させることができるか、そして社会、顧客、自社が「三方良し」となるかにこだわっている。例えば、研究所内で主に取り扱う非金属の無機固体材料であるセラミックスは、決して「聞き分けの良い」素材ではない。組成以外にも特性に影響を与える因子が多岐に渡り、同じ材料でも製造過程が少しでも異なると違う特性を持ったものが出来上がるためだ。その上、複合材料の開発ともなれば、期待する特性を持たせるために、腰を据えて地道に材料と向きあう必要がある。そのため、長年研究開発に取り組むことで、簡単には真似のできないものづくりの経験とテクニックを研究者が個々に習得していく文化が根づいている。「セラミックスのものづくりには、ノウハウを駆使する事、言い換えれば『職人気質』な姿勢が欠かせません。その点を大事にしつつ今回の研究費に応募いただく研究者の方々と共に新たなものづくりの形を考えたいのです」と川井氏は語る。
環境に配慮した、唯一無二の材料を求めて
今回2回目となる研究費設置に際して、3つの部署から4名の若手社員達が参加を希望し、テーマを設定した。GX(グリーントランスフォーメーション)開発部で燃料電池の開発に取り組む平尾氏のアイデアを元に、「環境に配慮した」材料に焦点を当てることにした。「最初は地球に優しい、といったキーワードも出てきましたが、人間本位にならずものづくりの視点から取り組める今のキーワードに落ち着きました」と平尾氏。企業の社会的責任として欠くことができない領域であることも決め手となった。それだけではなく、自身の技術や開発する材料が「唯一無二」であると言い切れる、熱い想いを持った研究者と共に、一緒にできることを議論したいと、二つ目のキーワードが全員一致で決まった。勿論、研究者が推し進めるあらゆる研究は、独自性のあるものだろう。そのこだわりを持っている技術や材料開発の中で、例えば製品化や生産プロセスまで見通しの立たないような課題があれば、一緒に解決に向けた議論を行うことが可能だ。また、4名それぞれが、これからアカデミア研究者と連携して実施したい研究テーマ例にも話が及んだ。例えば、複合材料の開発に取り組む材料創生開発部の野嶽氏と恩地氏は、材料特性に着目した研究を期待している。「衛星などに利用される構造材料は、宇宙空間の極低温にも耐える必要があります。同時に、地上だけでなく宇宙環境にも悪影響を与えないことにも配慮した材料開発が今後必要になると考えています」と野嶽氏。さらに、恩地氏は「長持ちさせるだけではなく、逆に生分解性を付与して早く分解させたりと、活用場面に応じた材料特性のアイデアを求めています」と語る。
協働して、社会に価値を生み出す
経験に基づくものづくりのプロセスをより効果的にするための分野横断的な動きも研究所で生まれつつある。先端機能部品開発部の長谷川氏は、「私が現在取り組む部品の開発では、構造計算にシミュレーションを取り入れています。将来的には、材料開発の中で私たちのこれまでの実験で培った経験を、計算科学の知見と組み合わせることで、より効果的なものづくりを実現したいです」と語る。ものづくり研究所の今後あるべき姿を、「素材を組み合わせて優れた特性をもつ材料を生み出す理想と、思い通りの結果がすぐには出ず思考錯誤する現実のギャップを埋めて、社会に新しい価値を生み出す存在」だと表現した4名だからこそ、研究者のどのようなアイデアや思いも正面から受け止めて、互いの強みを活かす方法を一緒に考えることができるはずだ。研究者の皆さんの「唯一無二」を、申請書や面談で存分にぶつけていただきたい。
(文・井上 剛史)