リバネス研究費

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2022年9月公募第58回リバネス研究費

第58回 東洋紡 高分子科学賞

高分子材料の基礎的、汎用的な研究
高分子材料に関する幅広い“科学”研究を募集します。キーワードとして、有機合成、重合反応、有機・無機化学、材料科学、熱力学、相平衡、 組織形成、電気化学、表面・界面化学などが挙げられますが、これに限りません。幅広く、 高分子材料に関する基礎的または汎用的な研究を対象としています。

設置企業・組織 東洋紡株式会社
設置概要

採択件数:若干名
助成内容:研究費50万円

スケジュール 応募締切:2022年10月31日(月)18:00まで
審査結果:2023年1月ごろにご連絡予定
募集対象 ・大学・研究機関に所属する40歳以下の研究者
・海外に留学中の方でも申請可能
・研究室に所属して研究を始めていれば、学部生からでも申請可能
担当者より一言
2022年5月、東洋紡は創立140周年を迎えました。これからも、素材+サイエンスで人と地球に求められるソリューションを創造し続けるグループを目指します。このために、高分子科学 (ポリマーサイエンス) に関する幅広い分野から研究テーマを募集し、ご支援します。新しい材料や応用分野への展開を視野に入れたテーマのみならず、原点を見据えた基礎研究も含めた“サイエンス”の提案を歓迎いたします。
Beyond Horizons 超えていこう、もっと先へーー 皆さんとともに。
設置企業インタビュー記事
イノベーション戦略部長 飯塚 憲央氏
総合研究所 コーポレート研究所 ケミカル基盤ユニット・サステナブルインキュベーションユニット 部長 佐藤 万紀氏

特徴ある高分子材料をつくるためには、アカデミアの視点が必要だ

「リバネス研究費東洋紡 高分子科学賞」は、今回が2回目の設置となる。前回、審査から携わった東洋紡株式会社 総合研究所の佐藤 万紀氏は「普段の研究開発の中ではきっと巡り会えなかった、基礎的な研究に邁進する若手研究者に出逢うことができました」と振り返る。佐藤氏の話からは、基礎研究を大切にし、アカデミアと研究所の呼応によって確かな技術発展を目指す東洋紡の姿勢がうかがえた。

 

ユニークな素材開発の裏で積み重ねてきたもの

 耐熱性、対薬品性に特化したフィルター材料や、通気性に優れた洗える高弾発性クッションの材料など。「これまでも、東洋紡は特徴的な製品を世に出し続けてきているという自負はあります」と佐藤氏。これらは、高分子の特性を追求する地道な研究の中で生まれたものだ。機能のメカニズムなどの知見が十分にあったからこそ社会のニーズに合わせて応用し、画期的な素材の誕生へと繋がった。このことから、現時点では応用先が想定できないテーマであっても、高分子の不思議な特性について明らかにしようとする研究は非常に重要だと佐藤氏は考えている。

  一方で、反応や現象の機構解明などの基礎研究を、企業が独自で行なうのは難しい時代になってきていることも感じている。だからこそ、アカデミアで学問として素材の基本的な知見を得るための研究を進める研究者を応援していきたい。そして、そんな研究者とのパートナーシップが、新しい素材開発を実現する鍵になる、と考えている。

 

アカデミア独自の目線×企業の知見が新たなアイデアに

 東洋紡の研究所で進められているテーマは、分子設計、合成、重合から、構造制御、応用を見据えたシミュレーションなど様々だ。佐藤氏は、本研究費の申請者及び採択者に、東洋紡の研究員と積極的に関わってほしいと考えている。「その専門分野の最先端を走っている人と話せるのは楽しいこと。昨年、面談審査に参加して、改めてそう思いました」。アカデミアの世界で得られる専門的であり最先端の知識、そして企業の中に蓄積されているノウハウや経験。これらを掛け合わせることによって、申請者と研究員とが互いに刺激を受け、新しい気づきを得られるものと確信している。

 実際、昨年度の申請者とも早速ディスカッションや共同研究などを開始。継続的なコミュニケーションをとり始めている。ゆくゆくは、新たな素材開発を始める際のコンセプトを固める段階でアイデアを加えてもらったり、製品化するときに学術的視点から斬新なアプローチを提案してもらえたりするような息の長い関係性を築きたいと、研究所としての関わり方も考えているようだ。

 

研究者の「未知に挑む姿勢」を応援したい

 今年度の「東洋紡 高分子科学賞」においても「高分子材料に関する基礎的または汎用的な研究」をテーマに掲げる。申請書のなかで重要視するのは、アプリケーションを意識した記述よりも「どうしてそれを明らかにしたいのか」。申請者の思いや考えを素直にぶつけてほしいという。未知に挑む姿勢こそが斬新なアイデアの種であり、そんな研究者と連携していけることが、10年後、20年後に必要とされる未来の素材に繋がると確信しているのだ。  一方、企業としてはもちろん、未来だけを見ているわけではない。いま社会に必要とされているプロダクト開発にも力を入れており、生分解性プラスチックの開発やマイクロプラスチック発生の減少などに対するソリューションなどの研究も行っている。しかし、そこでも必要だと感じているのは、研究者としての学術的視点に基づいた意見なのだ。

 「一人の研究者として自分が不思議に思うことに出逢ったのならば、ぜひそれを突き詰めてほしい。それが明らかになるまでには、長い時間がかかると思います。それでも、 自分が明らかにしたいことに向かって日々邁進していく研究者を、企業として応援し続けたいですね」と語る。東洋紡は、アカデミアの若手研究者が自らの好奇心に従って突き詰めていく、高分子科学の基礎的な知見に大きな価値を見出し、「リバネス研究費東洋紡 高分子科学賞」の設置というかたちで未来の仲間を応援したいと考えている。

(文・小山奈津季)

現在募集中のリバネス研究費