お米に関するあらゆる研究
人文科学、社会科学、生物学、農学、栄養学、機械工学、建築学、環境学・制御工学など幅広い科学・技術分野の研究を募集します。
設置企業・組織 | 鈴茂器工株式会社 |
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設置概要 | 採択件数:若干名 |
スケジュール | 応募締切:2022年7月31日(日)18:00まで 審査結果:2022年10月下旬ごろにご連絡予定 |
募集対象 | ・大学・研究機関に所属する40歳以下の研究者 ・海外に留学中の方でも申請可能 ・研究室に所属して研究を始めていれば、学部生からでも申請可能 |
- 担当者より一言
- 鈴茂器工は、1981年に寿司ロボットを世界で初めて開発しました。国内外を含めて、寿司の大衆化に貢献したリーディングカンパニーであり、米飯文化への貢献度の高い企業です。寿司ロボットのシェアは約80%あり、海外へも80ヵ国以上に販売をしています。国内外で、おいしいご飯を実現するための最適なプロセスが求められています。おいしいご飯に関わる様々な研究やアイデアを結集し、科学的においしいを解明していきたいと考えています。ご飯を多岐にわたる分野からの研究や斬新なアイデアをお待ちしています。
設置企業インタビュー記事
執行役員 経営企画部本部長 秋田 一徳 氏
「おいしいご飯」を科学的に解き明かす
1955年、鈴茂器工株式会社は菓子の製造機器メーカーとして鈴木喜作によって創業。1981年、寿司のシャリ玉を機械で握る寿司ロボットを世界で初めて開発し、当時の回転寿司ブームを背景に、回転寿司市場の成長・拡大を支える立役者として、高級食であった寿司の大衆化に貢献。鈴茂器工は、アカデミアとの連携によって、自社のみならず日本の米飯文化の世界展開とイノベーションを加速したいと考える。リバネス研究費鈴茂器工賞の募集にあたって、機械メーカーが日本の生命線である「ご飯」のサイエンスに切り込む意気込みについて伺った。
さらなる味や品質向上のためには、科学が必要
創業以来、米飯加工のメーカーとして、回転寿司、丼チェーン店やファミリーレストラン、ホテル、旅館、スーパーなど多くのお店で職人技を再現する自動ロボットが導入され、『いつでもおいしいご飯を食べられる日常』を支えている。一方、同社のビジョン実現に向け、リアルテックの発掘・育成を進めながら、未解決の課題を、科学技術の集合体で解決するプラットフォーム「テックプランター」にも2021年より参画し、ベンチャー企業や研究者が持つ知見や技術を活用し、食の分野における様々な社会課題の解決を目指す取り組みを開始した。「我々はメーカーとして米飯加工の試行錯誤を繰り返してきました。その試行錯誤では、職人の技を機械化することで味や品質を保ちながら、大衆化することに貢献してきました。さらなる味や品質、価値の向上を目指すためには、根本となる科学、すなわち原理・原則に立ち返り、科学的に「ご飯」について深く理解する必要があると考えています」。
おいしさを構成する要素とは?
2022年、鈴茂器工では全国のお米に関連する研究者の発掘と知識を理解し、未来研究テーマを創出する「おいしいご飯研究所」をスタート。大学・研究機関に在籍する研究者の知識と鈴茂器工の資産を組み合わせ、ビジョンの実現に向けてどのように貢献できるかを仮説検証するプロジェクトだ。「どんな問いからアプローチするかについては、やはり鈴茂としてはど真ん中の米飯、すなわち「ご飯」の研究から取り組むべきだろうと判断しました」と話す秋田氏。過去の研究から、加工の過程で職人の技を再現し、米飯をやわらかくほぐし、ふんわりと空気を含むように盛り付ける独自技術「ほぐし機構」が誕生し、それを搭載した「ご飯盛付けロボット(Fuwarica)」は現在、主力製品のひとつだ。物理的(食感)要因についての研究開発は進められていたが、一方、化学的要因や生理的、心理的、社会的な側面での研究にはタッチ出来て来なかった。そもそも食味がどのように形成されるのかのメカニズムについての研究などご飯といえど範囲は広い。「そこで、今回は全国の大学・研究機関の研究者と共に、物理的、化学的、生理的、心理的、文化的な側面から対象を捉え、おいしいご飯とは何かを追求したいと考えています」。
アカデミアと連携して、「おいしいご飯」とは何かを徹底的に追求する
どうしたら、実際にご飯を食べる消費者へ「おいしいご飯」を提供できるだろうか。これが現在の秋田氏の大きな関心だ。温かいほかほかのご飯を食べるだけではなく、店頭に並べられている冷めたご飯を食べるときもある。どうしたら、冷めてもおいしいごはんになるのか。おいしいご飯は、「お米」がおいしければ、おいしいご飯になるとは限らない。保管、精米、洗米、炊飯、加工など様々な工程や、気温、湿度、水質、水流等の様々な状況に影響されて「おいしいご飯」になるかが決まってくる。また、味覚だけでなく、味覚を含めた視覚・聴覚・嗅覚・触覚の五感やその土地の文化など、人は様々な情報を捉え、思考し、記憶と感情を想起し、おいしさを体験する。このようなお米と人のメカニズムを深く研究することで、本質の理解につながるのではないだろうか。人文科学、社会科学、生物学、農学、栄養学、機械工学、建築学、環境学・制御工学など幅広い科学・技術分野の研究がこれに当たるだろう。今、リバネス研究費鈴茂器工賞の応募を開始するにあたり、秋田氏の期待はどこにあるのか。「様々な切り口で表現・研究されている研究者との連携を期待したいです。ビジョンや方向性が合致すれば、一緒に共同研究ができる。分野や肩書き、国籍も関係なく、おいしいご飯を一緒に研究したい方の応募に期待しています」。多様な切り口を持った研究者と鈴茂器工の連携が、将来の米飯のあり方を変えるかもしれない。
(文・齊藤 想聖)