健やかな生活とサステナブルな未来を実現する、新しい‶食”を創造する研究
【持続可能な食品生産に関する研究】
代替タンパク、未利用資源・食品製造副産物の有効活用、食品製造・保存の省エネ化など
【食べる“人”視点の研究】
行動科学、心理学、脳科学、予防医学、ヒューマンコンピュータインタラクションなど
【より良い食をつくる基盤研究】
香り、脂質、物性、乳化に関する研究など
上記を始め、新しい“食”を創造するあらゆる研究を募集します。
設置企業・組織 | 日本水産株式会社 |
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設置概要 | 採択件数:若干名 |
スケジュール | 応募締切:2022年7月31日(日)18:00まで 審査結果:2022年12月下旬ごろにご連絡予定 |
募集対象 | ・大学・研究機関に所属する40歳以下の研究者 ・海外に留学中の方でも申請可能 ・研究室に所属して研究を始めていれば、学部生からでも申請可能 |
- 担当者より一言
- 「水の水道におけるは、水産物の生産配給における理想である。」、これがニッスイの創業の理念です。
創業以来110余年のニッスイの歴史の中で、水産のみならず、食品・ファインケミカル分野の事業を開拓し、あらゆる人の「食と健康」を支える技術開発を行ってきました。そして今、食を取り巻く環境が目まぐるしく変化している中で、人々の健やかな生活とサステナブルな未来を実現するための「新しい“食”の創造」が次なる目標です。これを実現するためには、食に直接かかわる研究のみならず、様々な分野との融合が必要かもしれません。私たちと一緒に新しい食の創造と未来へチャレンジしたい!という研究者の皆様、ぜひ、新たな航海を始めませんか。
リバネス研究費の申請について
設置企業インタビュー記事
日本水産株式会社
中央研究所健康基盤研究室
小尾 純志 氏
中央研究所水産食品研究室
重本 絢音 氏
中央研究所水産食品研究室
井ノ原 康太 氏
変化する社会の中で、 新しい“食”を創造していきたい
110余年の間、水産食品を世の中に供給してきた日本水産(ニッスイ)。水産・食品・ファインケミカルと幅広く“食”に関わる研究開発を行ってきた。そんなニッスイが若手研究者とともに新しい“食”の可能性を探ろうとしている。
“食”の未来を捉える
2022年4月、ニッスイは長期ビジョンを策定、「2030年のありたい姿」を「人にも地球にもやさしい食を世界にお届けするリーディングカンパニー」とした。地球温暖化や海洋酸性化など海洋環境の変化により、水産資源を始めとした食資源の不足が叫ばれ始めている。それだけではない。 新型コロナウイルス感染拡大によるステイホーム推奨など 私達を取り巻く生活環境や食事習慣は大きく変化した。また、おいしさや健康など食の価値観は多様化している。つまり20年後、30年後の未来で、私たちの食がどうなっているのか誰も予想がつかない。この変化に対応していくためには、企業内部に閉じない新たな発想を広げていく必要がある。
社外の知を若手研究員がつなぐ
そこで着目したのが、アカデミアの若手研究者のアイデアだ。昨年ニッスイは初めてリバネス研究費を設置した。テクノロジーを活用して食をアップデートするあらゆる研究を求め、「ぜひ斬新なアイデアを投げてほしい」と呼びかけたところ、数多くの研究テーマが寄せられた。それらの審査を担当したのは、ニッスイの研究開発の未来を担う、若手研究員たちだ。普段はマグロの餌や食品の香りの研究、機能性脂質の製造プロセス開発などを行う彼らは、自分たちの業務や専門性から発想を広げ、思いがけない分野の研究者との新結合を求め、審査に取り組んだ。そこで採択されたのが、高感度の“おいしさ可視化技術”を目指し、ヒト味覚・嗅覚受容体の網羅的解析を行う静岡県立大学の尾城一恵氏だった。このとき尾城氏を推薦したのは、食品の香りの研究に入社以来関わってきたニッスイの若手研究員だ。「従来技術では実現できなかった、これまでにない高度なおいしさや機能性を創れる可能性がある」と期待を寄せた。この二人の研究者の“知”がつながることで、食のアップデートへ向けた新たな試みが始まろうとしている。
マイナスをプラスに変え、持続可能な食へ
今年度のニッスイ賞では、新たな顔ぶれの若手研究員3人が審査を担当する。今回の対象分野は「健やかな生活とサステナブルな未来を実現する、新しい“食”を創造する研究」だ。その中でも、特にどのような研究テーマに期待を寄せたいか、ワークショップを行いながら3人の意見を出し合った(写真)。一つめの軸は、持続的な食品生産に関する研究だ。機能性油脂の精製プロセスを開発する小尾氏は「例えばイワシの油からEPAを抽出する際に加工残渣が生じています。従来なら捨てられている未利用資源や食品製造副産物を、いかに有効活用していくかに興味があります」と語る。“植物肉”の研究開発を行う重本氏は、代替タンパクや、食品製造・保存の省エネルギー化にも関心を示す。「植物肉は畜肉より環境負荷が低いと言われる一方、大豆を加工するにも加熱などのエネルギーがかかります。食品製造プロセスをいかに低エネルギー化するか、についても研究者の皆さんの自由な発想をぜひ伺いたいです」と話す。
食べる“人”に健やかな生活を
もう一つの軸は、“人”視点の研究だ。エビなどの水産加工研究を行う井ノ原氏は、「最近社内でデザイン思考を学んだことをきっかけに、食品を作る過程だけではなく、それを食べる人の行動や心理、嗜好性について興味が広がっています」と話す。多様化する世の中に対し、食の力でおいしさと健康を届けていくには、“人”に軸足を置いた研究も重要になる。ここには行動科学や心理学、脳科学、あるいは予防医学の観点や、ヒューマンコンピュータインタラクションの分野なども関わってくるだろう。「現時点では “食”を対象にしていない方でも、“人”そのものが研究対象 であれば、ぜひアイデアを寄せてほしい」と重本氏も力を込める。この他にも、香り、脂質、食品の物性や乳化など、より良い食を追求してきたニッスイならではの基盤研究の強みに、新たな発想を掛け合わせる提案も大歓迎だ。「まだ見ぬ、食の力を。」長期ビジョンのもと、この春ニッスイが新たに掲げたブランドタグラインだ。変化の激しい今だからこそ、食にはまだ見ぬ力があると信じる。そんなニッスイの若手研究員らと共に、新しい“食”を創造していく研究仲間を求めている。
(文・滝野 翔大)