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2022年3月公募第56回リバネス研究費

第56回リバネス研究費 興和 リチウム賞

リチウムを活用した次世代電池に関わる、あらゆる研究

部材や材料研究から、新たなセルの用途開発、さらにはリサイクルや急速充電等の周辺技術まで。リチウムを活用した次世代電池に関わる技術を幅広く募集します。

設置企業・組織 興和株式会社
設置概要

採択件数:若干名
助成内容:研究費50万円

スケジュール 応募締切:2022年5月9日(月)18:00まで
審査結果:2022年7月中旬ごろにご連絡予定
募集対象 ・大学・研究機関に所属する40歳以下の研究者
・海外に留学中の方でも申請可能
・研究室に所属して研究を始めていれば、学部生からでも申請可能
担当者より一言
興和グループは常に時代の変化をとらえチャレンジする進取の精神と、堅実なモノづくりの精神を両輪として、「健康と環境 」をテーマに様々な事業活動を展開し、これまでの常識にとらわれない新たな価値創造に努めています。皆様の研究を実用化する、社会の課題を共に解決していく、その様な機会を得たいと願っております。沢山の応募お待ちしております。
設置企業インタビュー記事
(写真向かって左から)
興和株式会社 産業関連事業部 化学第二部
 第二課 坂井 敬次 氏
 第二課 チーフ 恒川 健也 氏
 部長 三品 靖治 氏
 第二課 課長 畑 義人 氏
 第二課 チーフ 関根 優輔 氏

熱意あふれる研究者と共に、日本の次世代電池産業を牽引する企業へ

キューピーコーワやバンテリン、キャベジンといった医薬品でその名を聞くことも多い興和株式会社だが、じつは彼らの祖業は綿布問屋。その意志を脈々と受け継ぎ、産業関連事業部 化学第二部第二課は、120年以上続けてきた商社業の一端を担う。現在メインで扱っている商材は「リチウム」だ。リチウム電池の普及が広がる今、これから求められる商社の新たな存在価値を見出すべく、今回初めてリバネス研究費 興和 リチウム賞を設置した。

トレーディング+αの価値を求めて

興和株式会社を中心とした興和グループの事業は非常に多岐にわたる。繊維・機械・建材などの商社業、さらには医薬品・医療用機器・ビジョンユニット・省エネ・創エネ関連製品などのメーカー業も併せ持っている。こうした幅広い事業展開の中で、興和グループがリチウムの取り扱いを開始したのは約25年前。チリの資源大手であるSQM社への投資がきっかけだという。2000年頃からは電池への用途拡大によりメイン商材へ発展。SQM社との強いパイプを活かし、興和株式会社は炭酸リチウム供給の国内トップシェアを誇ってきた。しかしながら、メーカーの材料調達や販売の内製化、さらにインターネットの普及による生産者と販売者の直接取引を理由に、他の多くの商社と同様、興和株式会社でも単なるトレーディングからの脱却が叫ばれ始めているという。そこで、バリューチェーン全体を持つことによる付加価値をさらに上げるため、これまで育ててきた強いパイプと、メーカー業のノウハウ、これら強みにアカデミア研究者の知識を組み合わせることで新しい事業創出を目指しているのだ。興和グループの経営ビジョンは「健康と環境」。脱炭素社会に貢献すべく、次世代電池産業における改革に挑もうとしている。

再び日本の電池産業に活気を

2000年頃から取り扱いが増えたリチウムだが、現在は中国や韓国の勢いに押され、縮小傾向にあるという。「2014年から5年間チリに赴任していたのですが、赴任後に帰国すると、業界の勢いがあまりに下がっていることに驚きました」と、担当者の畑氏は語る。しかし、電池産業はいわば日本の御家芸の一つだ。リチウム電池の父といわれる旭化成の吉野彰名誉フェローがノーベル化学賞を受賞したことも記憶に新しいだろう。その他、車業界を中心としながら日本は民生用の市場で成長拡大し、世界を牽引してきたのだ。「日本には世界の電池産業を築き上げてきた技術力がある。だからこそもう一度、“日本発” のブランドを復活させたいです。」汎用品では中国や韓国には敵わないかもしれないが、少量多品種な高付加価値製品であれば日本の技術力が活きるはず。そのためには、日本が誇る研究者や技術者との連携を強化し、新しい技術開発をしていく必要がある。

研究者と築く、未来を創るパートナーシップ

こうした背景から興和株式会社が、研究者との協業を強く意識し始めたのは2.3年前から。しかし、いわゆる“文系”の社員が多い中、研究者とのコミュニケーションにはいくつかのハードルがあったという。研究開発はその成果が長期的だ。その分、多くのステークホルダーを納得させて巻き込んでいくためには、技術の詳細や他の技術との比較を説明することが必須となる。しかし技術の深い理解はそう容易ではない。また、どの技術が今後の産業を担っていくのか、自社の強みを活かしやすいのか、これらを目利きする力も必要だ。こうした “研究者とのコミュニケーション力”と“目利き力”を得ること、また自社だけでは判断できない要素を相談できる研究者ネットワークの構築も、今回のリバネス研究費の目的の一つだ。一方、興和株式会社は研究者にはない、リチウム電池業界を支える多くの企業との強いパイプラインを保持している。「これらを組み合わせて、どんな新しいことを仕掛けられるのか。業界の未来を共に考えていけるようなパートナーとなる研究者を待っています。」

実用化への熱意を共に燃やす

今回の研究費で興和株式会社が求めている技術は『リチウムを活用した次世代電池に関わる、あらゆる研究』だ。部材・材料から用途開発、その他充電やリサイクル等の周辺技術までと幅広い。もちろん高い技術力を期待しているが、それにも勝り大切にしていることは研究者の “実用化へのパッション” だという。「研究の新規性へのこだわりよりも、この技術を絶対に世の中に出したいという強い思いを持った人に出会いたいですね。そんな研究者の方とビジョンを共有し、社会の課題を共に解決していきたい」と畑氏ら。「商社業でも、商材の競争力だけでは決して売れません。やはり思いを持った営業マンの存在が不可欠なのです」。
部材やセルのプロトタイプ作製から、メーカーと連携した実証試験まで、自社の多様な事業や多くのステークホルダーを活かし、出会った研究者に様々な連携可能性を提示できるのが同社の強みだ。リチウム電池において、材料から製品までを一貫して行える企業は未だ少ないが、このリバネス研究費をきっかけに興和株式会社は、そんな次世代電池業界の真のインテグレーターを目指していく。

(文・河嶋 伊都子)

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