「ひと」の価値を最大化する自動化技術に関する研究
ロボティクス、データサイエンス、情報通信、XR、コミュニケーション、薬学、医学、 材料工学、電子工学、人間行動学、心理学、経済学、建築学、デザイン、ものづくり、など 分野を問わず幅広い科学・技術分野の研究を募集します。
設置企業・組織 | 株式会社吉野家 |
---|---|
設置概要 | 採択件数:若干名 |
スケジュール | 応募締切:2021年8月31日(火)18:00まで 審査結果:2021年11月ごろ、ご連絡予定 |
募集対象 | ・大学・研究機関に所属する40歳以下の研究者 ・海外に留学中の方でも申請可能 ・研究室に所属して研究を始めていれば、学部生からでも申請可能 |
- 担当者より一言
- 新しい生活様式への変化によって、食事環境に期待される要素は様変わりしています。安心・ 安全な店舗空間作りはもちろんですが、「ひと」 だからこそ発揮できる価値が以前にも増して注目されています。「ひと」同士が表情を見ながらコミュニケー ションを取るからこそ、独りではない安心感や、アットホーム感が創出され、生活を豊かにしていたことを社会全体が再認識しました。このような時代だからこそ、「ひと」がやらなくても良いことは自動化・効率化するアイデアで、「ひと」の価値を最大化することが求められるのではないでしょうか。まだ誰も最適解を見出せていないこの課題こそ、研究者の方々と知恵を出し合いながら、アイデア発想と実証に取り組んで行くべきと考えています。自由な発想で「ひと」の価値を最大化する自動化技術に関する研究テーマを募集します。また、研究費をお渡しするだけでなく、実際に𠮷野家の店舗等を活用し た研究や実証試験も全面的にご協力いたします。
設置企業インタビュー記事
飲食業の未来を研究者と共に創りたい
どのように社会が変化しようとも、「ひと」本来の価値を中心に考えていきたい。テクノロジー活用で、「ひと」の価値の最大化を目指しているのが𠮷野家の未来創造研究所だ。課題解決への熱意を持った𠮷野家の研究員と、研究者の知識を掛け合わせて実現したい飲食業の未来について聞いた。
テクノロジー活用で「ひと」の価値に光を当てる
新しい生活様式への変化によって、食に求められる根源的な価値は変わらないものの、食事環境に期待される要素は様変わりした。安心・安全な店舗空間が求められ、会話は最小限に抑えられている。そのような時代だからこそ、飲食店で働く「ひと」とお客様の限られたコミュニケーションを豊かにしたいと𠮷野家は考える。𠮷野家では2025年に向けた長期ビジョンとして、「ひと・健康・テクノロジー」をキーワードに、「ひと」だからこそ発揮できる価値を最大化すべく、テクノロジー導入や共創パートナーと連携した研究開発を行ってきた。これらの活動を通じて、「ひと」同士のコミュニケーション活性化や、店舗で働く「ひと」の付加価値業務の最大化を実現している。例えば、「自動食器洗浄ライン」では、協働ロボットの活用によって食器洗浄作業の時間を最小化し、お客様とのコミュニケーションに集中できる環境を構築している。他にも、過去に提供していた「つながる食堂」では、東京と大阪の2店舗間をハイクオリティーの映像と音声での接続に加えて、目線を合わせて話せる技術を実装することで、離れている家族や友人でもあたかも対面で話しているような食体験を提供してきた。そのこだわりで、「ひと」だからこその温かみを演出している。他にも、シフト調整を自動化するなど、テクノロジーを組み合わせることで、「ひと」が本来持っている価値に光を当てている。
研究者と共に現場の課題を解決してきた
なぜ、𠮷野家が研究所を構え、研究開発に取組むのだろうか。それは、「ひと」がやらなくてもよい作業をテクノロジー活用で削減し、「ひと」本来の価値が発揮される時間を最大化するためだ。これまで未来創造研究所では、現場の課題を熟知した𠮷野家の研究員と、テクノロジーを持った研究者や企業が連携し、課題解決に取組んできた。例えば、過去の研究費採択者からは、働く環境を効果的に設計することで知的生産性を高めるテーマが提案され、店舗での光や音、休憩スペースの設計アイデアの実証が取組まれた。他にも、人間が認知できない超高周波音が人の認知機能や情動に影響を与えることを活用し、リラックス空間を実現する研究テーマも採択。これらはお客様と働く「ひと」の双方が心地良く関われる店舗となる、まさに「ひと」の価値を最大化する研究だ。一方で、自動化による付加価値時間の創出事例としては、従業員のシフト表を自動で作成するシステム開発がある。AIと行動心理学を活用して、シフト表上の欠員への候補者をリコメンドする機能を搭載しており、欠員への出勤候補者のリコメンドと行動心理学上の交渉アドバイスを受けることで、店長と従業員双方が快適にやりとりできている。この事例では、未来創造研究所の仮説構築から始まり、AI研究者や社会心理学者との連携で実現した。一方で、専門性の高い町工場と熱に関わる研究開発も進め、過熱水蒸気を活用して冷えたご飯を数秒で熱々に温める製品開発も進めている。現場を熟知した𠮷野家の視点と、研究者の研究への熱意が掛け合わさったことで当初は困難だったことも実証から社会実装まで実現している。
「ひと」を支える自動化技術の研究者を募る
飲食業に求められることは日々変わっている。テイクアウト比率の増加に伴い、時間が経っても持続される美味しさが求められ、店舗では安心・安全な空間作りが重要視される。その一方で、「ひと」だからこそ発揮できる価値が以前にも増して注目されている。「ひと」同士が表情を見ながらコミュニケーションを取るからこそ、独りではない安心感や、アットホーム感が創出され、生活を豊かにしていたことに社会は気づいた。このような時代だからこそ、「ひと」がやらなくても良いことは自動化・効率化するアイデアで、「ひと」同士のコミュニケーション価値を最大化することが求められるのではないだろうか。まだ誰も最適解を見出せていないこの課題こそ、研究者の方々と現場を熟知した未来創造研究所が知恵を出し合いながら、アイデア発想と実証に取組んで行くべきと、春木氏は考える。今回の研究費募集では、アイデアの精度や実証の有無よりも、研究者ならではの視点から仮説を投げ込んでいただき、議論と実証を行いながら解決の方向性を見出していきたい。能動的に飲食業の未来を創造していく仲間を募る。(文・内山 啓文)