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2021年6月公募第53回リバネス研究費

第53回リバネス研究費 コージンバイオ賞

培養を通じて人々の生活を向上させる可能性がある、未来に向けた研究

分野に限らず、「培養を通じて人々の生活を向上させる可能性がある、未来に向けた研究」を広く募集いたします。例として、応用生物学、免疫学、細胞工学、分子細胞生物学、獣医学、応用微生物学、情報工学といった分野を始め、培養と掛け合わせたあらゆる学問分野のテーマ・技術も対象とします。

設置企業・組織 コージンバイオ株式会社
設置概要

採択件数:若干名
助成内容:研究費50万円

スケジュール 応募締切:2021年7月31日(土)18:00まで
審査結果:2021年10月ごろ、ご連絡予定
募集対象 ・大学・研究機関に所属する40歳以下の研究者
・海外に留学中の方でも申請可能
・研究室に所属して研究を始めていれば、学部生からでも申請可能
担当者より一言
コージンバイオは、培地の開発・製造を行う国内培地メーカーで、製品・技術を通じて、社会・医療・バイオテクノロジーへの貢献を目指して、事業活動を行っております。日々、培養技術が発展していく中で、まだ眠っている革新的で、魅力ある技術・研究を微力ながらサポートをしたいと思い、今回の研究費を設立させて頂きました。募集対象は、ジャンルにこだわることなく、培養と掛け合わせた様々なテーマ・アイデアとなります。皆様の魅力あるテーマやアイデアと出会えるのを、非常に楽しみにしております。ご応募をお待ちしております。
設置企業インタビュー記事
(写真向かって左から)
組織培養研究部 風間 春香 氏
研究/細胞加工/品質保証統括 執行役員 對比地 久義 氏
常務取締役 中村 雄一 氏
営業第二部 課長代理 櫻井 裕己 氏

培地のことならコージンバイオを新しい当たり前に

バイオテクノロジーに関する研究で日々使われる“培地”。じつは、直販やOEM生産を含めると国内の多くの培地が同社で製造されている。研究者個人から、大企業まで、大小様々な相談が寄せられる理由は、「どんな相談でも断らない」姿勢から生まれた豊富な開発経験だ。今後益々、バイオテクノロジーの進展が求められる時代だからこそ、多くの人に認知され、知見を役立ててほしいと本研究費の設置を決めた。

創業から40年で、培地開発のトップランナーへ

同社は、微生物事業、組織培養事業、細胞加工事業の3つの柱で展開しており、国内培地製造ではシェアNo.1を誇る。微生物事業は、臨床・食品分野の病原菌検査や、様々な分野の品質検査に使用される微生物検査用培地を扱っている。特に、病院や製薬会社、検査センター等で使われており、この技術を生かした新型コロナの迅速検査キットも2020年9月に発売した。ウイルスに感染した証拠となる抗体を検出する検査で、これまで工場の従業員などに1万検査分を販売したという。組織培養事業は、再生医療や免疫療法の研究用途で使用される無血清培地をはじめとする組織培養用培地を扱っており、特に間葉系幹細胞や免疫系細胞ではシェアが高く、KBMブランドの培地を見たことがある人も多いだろう。また、2018年には、「味の素コージンバイオ株式会社」を設立し、臨床現場で使用できる培地の生産を開始した。これら再生医療培地技術を活用して、主に免疫療法、幹細胞治療を行う医療機関向けに、特定細胞加工物の製造も行っている。「製品や設備は充実している。だからこそ今後は、研究所や大学等に眠る培地に関する貴重な知見を活用し、世の中にないオリジナルな製品の開発に積極的に取り組んでいきたい」。

研究者からの相談について考え続け、業界の発展へ貢献

社名のコージンとは、“考える人(考人)の組織集団”の意図だ。コージンバイオ躍進の根底にあるのが、どんな無理難題が来ても、それを“考える機会”と捉え断らないスタンスだ。「こんな培地つくれないか」「コストを下げたい」などの相談に応え続けてきた結果、同社の培地が専門書に掲載される事例もある。それは、中枢神経系の発生と再生の研究をリードし2009年に紫綬褒章を受章した慶應義塾大学の岡野栄之教授率いる生理学教室に所属していた岡田先生からの相談だった。ES、iPS細胞から神経幹細胞への分化誘導において必要な“神経幹細胞用培地”で、8種類もの調整液を混合するため、扱う人により品質が安定しないという。そこで、同社が安定した混合液を製品化したところ、実験医学別冊※1に掲載された。再生医療が発展する中で、同書を参考とする多くの研究者が、同じ品質の培地を扱える環境を作ることで、研究の進展に寄与していくだろう。また、アカデミア発のスタートアップの相談などにも多数応じており、その一例としてiPS心筋細胞を扱う株式会社マイオリッジがある。マイオリッジは、iPS細胞から心筋細胞への分化誘導、そしてその培養に必要な培地において、タンパク質の代わりに低分子化合物を用いることで培養コストを1/100にする“プロテインフリー技術”を持つ京都大学発のスタートアップだ。彼らの高い技術力とビジョンに惹かれ、創業初期から支援を行ってきた。同社含む様々な支援の結果、iPS細胞から心筋細胞を作るマイオリッジの技術は発展し、2021年4月19日に米アリゾナ大学発スタートアップのAveryTherapeuticsとライセンス契約を締結した。これは、京都大学が保有するiPS細胞由来の心筋細胞の製造方法を海外企業に技術供与する初めての事例となった。
※1実験医学別冊(羊土社)III-8ES・iPS細胞から神経幹細胞への分化誘導 岡田洋平、岡野栄之

培地の可能性を追求する“無理難題”を求む

「人間は食べ物を変えると体が変わります。細胞や微生物も培地が変わると変化するんです。ただ生きて成長させるだけではなく、様々な可能性や影響まで『考える』ことが面白い」と話す中村取締役。取材に参加した同社の若手社員らは「細胞、微生物など既存研究での培地に関わるあらゆるテーマはもちろん、例えば、細胞農業などでの大量培養に用いる未精製で廉価な培地や、アニメで出てくる『人が浸かると傷が回復する溶液』とか、近未来的、SF的な夢があるテーマにもありですね」と、期待を寄せる。同社の発展のためには、外部からの大小様々な課題の持ち込みが重要と考え、今回は研究費以外にも、培地の無償サンプル提供を10件程度採択する予定だ。本研究費でも“断らない”姿勢を貫く同社と、培地を扱う多様な研究者との連携が多数生まれることを期待したい。(文・伊地知 聡)

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