リバネス研究費

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2020年12月公募第51回リバネス研究費

第51回リバネス研究費 ダイセルヘルスケア賞

腸からヒトの健康を考える、あらゆる研究

例えば健康機能性を持つ食品素材や伝統食に関する研究や、腸内代謝・腸内細菌の共生・菌と菌の関係・腸内や口腔内細菌とヒトの健康との関係に関する研究、微生物機能の活用・開発に関する研究など、腸と健康の間を繋げる様々なテーマを募集します。

設置企業・組織 株式会社ダイセル
設置概要

採択件数:若干名
助成内容:研究費50万円

スケジュール 応募締切:2021年1月29日(金)23:59まで
審査結果:2021年4月ごろにご連絡予定
募集対象 ・大学・研究機関に所属する40歳以下の研究者
・海外に留学中の方でも申請可能
・研究室に所属して研究を始めていれば、学部生からでも申請可能
担当者より一言
ダイセルでは、腸内細菌をキーワードに、ヒトの健康に資する食品素材の開発を進めています。最近話題の腸内細菌叢ですが、そこにいる菌が何をしているのかは、まだ詳しくわかっていません。当社では、腸内細菌叢を構成する微生物によって、食品中のポリフェノールなど機能性成分が代謝され、効果が発揮されることに目をつけ、腸内細菌による代謝物発酵を検討しておりますが、他にもまだまだ活用できる方法はあると思います。腸内細菌をキーワードに、ヒトの健康に資する研究を募集します。ぜひ、私たちと一緒に、菌の持つ可能性を探索し、活用いたしませんか。 皆さんの応募をお待ちしております。
設置企業インタビュー記事
(写真向かって左から)
株式会社ダイセル ヘルスケアSBU
事業推進室長 稲井田 有希 氏
事業推進室事業戦略グループ マネージャー 卯川 裕一 氏

多様な研究者の知恵とともに、腸からの健康を考える

1919年に8つのセルロイド会社が合併して設立されたダイセル(当時の社名は大日本セルロイド株式会社)。化学に強みを持つ会社として100年あまりを歩んできた同社だが、ヘルスケアSBU(Strategic Business Unit)では新たに「腸から健康を作る」ことを狙いとした製品群を作っていこうとしている。

30年の歴史を持つ嫌気性細菌ライブラリ

テレビCMなどでも“化学”を強調するダイセルだが、実は30年以上も微生物を用いた研究の歴史がある。もとは酢酸の発酵生産など化成品の原料生産プロセスから始まり、嫌気性細菌を用いたものづくりの研究開発が進んだ。そこから医薬中間体の生産という事業へと繋がり、研究にもフィードバックがかかる中で蓄積されてきた嫌気性細菌ライブラリは今や数千にものぼる。ヘルスケアSBUではこれを機能性食品素材の開発に活用していこうとしているのだ。

「社内では、例えばポリフェノールを様々な細菌で代謝して、健康に寄与する素材を開発できないかと検討しています」と話す稲井田氏。そうして生まれた製品の一つにエクオールがある。これは大豆イソフラボンの一種であるダイゼインが腸内細菌による代謝を受けて生成される物質で、イソフラボン摂取による更年期障害の緩和や骨粗鬆症の改善効能は、実はエクオールによるものであるという仮説が有力視されている。そして実は、ダイゼインをエクオールに代謝できる能力を持つ細菌が腸内にいる人は日本人で約50%、欧米人では30%弱しかいないのだ。それであれば、体外でエクオールを生産し、サプリメントとして摂取した方が半数以上の人にとっては良いはず。これと同様に、腸内で代謝されることで効能を発揮したり、強めたりする素材があれば、ダイセルのライブラリから高生産菌を見つけて社会に価値を提供することができるだろう。

視野を広く、新たな研究を生み出したい

一方で、こうした“腸内代謝物”だけにこだわるわけではない、と卯川氏はいう。例えば上市済み製品の一つであるラクトビオン酸は、腸内でのエクオール産生促進作用を持つプレバイオティクス素材として働く。このカテゴリで新たな素材を知っている研究者がいれば、ダイセルのライブラリと掛け合わせることで機能の基礎的理解が進むかもしれない。また、微生物と腸管、微生物同士の関わりについての研究が深まれば、ライブラリにある菌そのものがプロバイオティクス製品になるかもしれない。「もともと化成品を作ってきた会社で、特定の菌種や腸内機能の研究を深めてきたわけではありません。だからこそ、広い視野で腸から健康を作ることに繋がるテーマを提案して欲しいと考えています」。

これまでダイセルでは、機能性の評価や体内での代謝プロセスなどで複数の研究者と共同で研究を進めてきた。「機能性と代謝解析はそれぞれに専門的な研究者がいて、両方に強い人はあまりいない印象があります」。なればこそ、いずれかにフォーカスしたテーマの提案があれば、これまでのネットワークからもう一方の専門家とも連携を作り、研究を深める橋渡しも可能だという。「素材も植物由来に限定して考えてはいません。動物性の成分、微細藻類なども歓迎です」。化学メーカーだからこその良い意味でのこだわりのなさで、視野を広く様々な研究者と連携したいと考えている。

連携を深め、社会に貢献する製品づくりを目指す

例えば地方や海外の伝統食で健康に良いとされるものの、in vitroや動物試験ではっきりした効果が見えないものはないだろうか。もしかしたら、ヒト腸内細菌による代謝が重要かもしれない。あるいは既に着目している成分があれば、ダイセルがそれを作り、検証をともに進めることができる。複数の微生物が関わる代謝ネットワークを見ているならば、ライブラリを活用してin vitroでの検証もできる可能性がある。今回のリバネス研究費では、研究者が持つテーマとダイセルの武器のかけ合わせによる新たな研究の創出も積極的に狙っている。

腸から健康を、というのは最近よく聞く言葉だが、そもそも健康とは何なのか。口にしたものが消化、代謝されて何が起こるのか。「様々な研究者の方が持つ視点を我々も学びながら、社会に貢献できる製品づくりをしていきたい」と話す両氏。自らのテーマを社会に羽ばたかせるきっかけを作りたい研究者を待っている。(文・西山 哲史)

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