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2020年6月公募第49回リバネス研究費

第49回リバネス研究費 ダスキン開発研究所賞 募集テーマはこちら

東京大学大学院 工学院機械系機械コース 修士課程2年

山口 悠弘さん

採択テーマ
感染症防止のための空気質モニタリングに向けたフリーフロー型バクテリアセンサーの開発

1粒子計測が、バクテリアやウイルスの脅威を低減する

山口氏は細菌やウイルスの拡散追跡に必須となる1粒子計測技術の研究を行っている。空間に存在するバクテリアやウイルスの数や種類を可視化し、安心・安全な空間をつくる環境センシングインフラの構築を目指している。

ものづくりを通じて医療の発展に貢献する

昔から「物を作りたい、それによって人の役に立ちたい」という思いを持っており、学部時代はロボットの開発に情熱 を燃やしていたという山口氏。仲間とともに挑戦したロボットグランプリでは、写真や絵画を素早く模写するお絵描きロボットを開発し、審査員を務めた地域の子どもたちを大いに楽しませた。この経験を経て、人の役に立つものづくりに対する思いを益々強くした山口氏は、薬学や医学の道に進んだ親しい友人たちと語り合ううちに「自分は、エンジニアの立場から医療に貢献するのだ」と心に決めたという。そのような折に出会ったのが山本研究室の「1粒子計測」という研究テーマだ。

粒子のインピーダンス計測が同定の鍵

バクテリアやウイルスの同定には、PCR やイムノクロマト法などを用いるのが一般的である。しかしこれらの手法だと、既知のものしか検出できず、同定にも時間がかかる。山口氏らが研究する、マイクロ流体デバイスによる1粒子計測技術は、これらの課題を解決する新たな同定手法として期待される。マイクロ流路中に測定電極を配置し、流路を流れてくるバクテリアそれぞれに、様々な周波数の電圧を印加していく。これにより1粒子ごとにインピーダンスを測定でき、得られたパターンからバクテリア種の同定を行うのだ。「従来法では検出できなかった未知・新型ウイルスやバクテリアも検出できるようになるでしょう」と語る山口氏。現代社会のニーズに応える技術として今花開こうとしている。

次世代の環境センシングのインフラへ

しかし1粒子計測には克服すべき課題もある。流路のサンプルが詰まって動作不良を起こすのだ。山口氏はこの課題を克服するため、流路内に電圧を印加してバクテリアを1列に並べ、詰まりを解消する手法を開発している。「いずれはスマートフォンや、空気清浄機などにも搭載される、掌サイズのバクテリアセンサーとして、様々なシーンで利用されてほ しい」と語る山口氏。次世代の環境センシングのインフラとなりうる、今後の研究に大いに期待したい。
(文・石尾 淳一郎)

担当研究員からひとこと

株式会社ダスキン 開発研究所 応用研究室 吉田 拓音 氏
山口さんが開発に取り組んでいるデバイスで環境をセンシングする時代が近い将来に実現するのではないかと考えています。ダスキンとしては、現場に近い立場から、ニーズやサンプルを提供していくことでこれからも応援していきたいと考えています。