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2020年6月公募第49回リバネス研究費

第49回リバネス研究費 日本の研究.com賞 募集テーマはこちら

信州大学 学術研究・産学官連携推進機構 助教(URA)

久保 琢也さん

採択テーマ
研究力調査分析業務の効率化・高度化・民主化に向けたオンライン分析ツールの開発

研究力分析を効率的に誰でもできるようにする、URAの挑戦

株式会社バイオインパクトが設置した第49回リバネス研究費日本の研究.com賞は、大学の産学連携担当者やURA(University Research Administrator)を対象とした初めての試みだ。信州大学の久保氏は、URAとしての課題意識から、組織の研究力分析業務を効率化できるツールの開発を目的としたテーマで採択に至った。久保氏のように自ら仮説と課題をもつURAが研究のプレイヤーとなることで、新たな研究の仕組みが生まれてくる可能性がある。

マヤ言語の研究から研究力分析の世界へ

久保氏のバックグラウンドは心理言語学と呼ばれる、人がことばを話したり理解したりするためのメカニズムを解き明かす分野にある。日本語とは逆のVOS語順(動詞-目的語-主語)で話されるマヤ言語を対象とした、発話のメカニズムに関する研究で博士号を取得した。現在はURAとして、学内外の研究活動に関するデータを分析するIR(Institutional Research)業務に携わる。一見すると畑違いの領域に思われるが、統計解析の技能はもちろん、研究者の申請書をより伝わりやすくする校閲作業に心理言語学の専門性が活きるなど、研究で培った力を発揮している。

創造的な時間を増やし、研究力の強化へ

日本の研究.com賞に採択された久保氏のテーマは、研究機関の研究力の調査分析業務を効率的に、かつ誰でもできるようにするオンラインツールの開発だ。IR業務は文部科学省などの公的機関から公開されているデータを扱うことが多く、その量は膨大なものとなる。さらに、多くの場合それらのデータは分析に適した形にはなっていないため、前処理や集計の段階から各機関で行う必要があり、多大な労力がかかっているのが現状である。久保氏はこうした作業を効率化し、高度な分析スキルをもたない人でも、各機関の研究力などの比較分析ができるツールを自前で開発した。今回の申請は、そのツールのさらなる展開を見込んだものとなる。「IR業務をなるべく効率的にかつ誰もが行えるようにすることで、研究環境の改善や研究力強化につながるクリエイティブな提案に、皆の頭と時間をもっと使えるようにしたいのです」。久保氏が語る想いは、研究活動を支援するバイオインパクト社のビジョンともぴたりと重なる。

自らプレイヤーとなり研究の仕組みをつくる

URAの多くは博士号を有するが、自ら研究を立ち上げ主導することは稀であり、彼らが研究費を申請できる制度自体がない大学もある。しかし、自らが研究経験をもち、大学の制度や課題を熟知するという2つの専門性をもつURAには、新たな研究の仕組みを生み出すポテンシャルがあるのではないだろうか。「研究環境の実態や産学連携状況といった研究活動に関する研究という、あまり手がつけられていない領域を、URAだからこそ担っていくことができる」と久保氏は言う。豊富な学内ネットワークを活かして研究者を束ねた共同研究を主導し、企業と大学の新たな連携の形を探ることもできるだろう。今回の研究費を契機として、URAが研究費申請に動けるよう、これまでの制度を見直した大学も出てきた。久保氏の今後のアクションが、自ら仮説と研究課題をもったプレイヤーとして活躍する新しいURA像を示すことに期待がかかる。