2019年6月公募第45回リバネス研究費
第45回リバネス研究費 大正製薬ヘルスケア・ビューティケア賞 募集テーマはこちら
兵庫県立大学大学院 環境人間学研究科 環境人間学専攻 博士後期課程 1年
湯面 百希奈さん
- 採択テーマ
- ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)利用が若い女性の体型感・食行動に与える影響
ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の発達により写真や動画の共有が容易となり、他者と比較する機会が増えている。このことが、女性のやせ志向に影響を及ぼしている可能性があるという。兵庫県立大学大学院環境人間学研究科の湯面 百希奈氏は、若い女性のやせの減少に寄与することを目的として研究を行っている。
日本女性のやせに歯止めをかけろ
湯面氏が所属する研究室では、日本人若年女性の栄養課題をテーマに長年研究を行っている。多様な研究テーマの中から注目したキーワードが女性の「やせ」だ。日本人女性のやせは若い世代で多く、厚生労働省の報告によれば15~19歳の約5人に1人、20~29歳の4~5人に1人が、BMI18.5kg/m2未満の低体重(やせ)に分類される。成人女性でも全体の約1割にみられ、先進国の中で最も高い水準にある。女性の若年期のやせは、将来の骨粗鬆症やフレイルにつながることから、これまで様々な施策がなされてきた。しかし、過去20年以上、やせの割合は「高止まり」したまま改善されていないのが現状だ。さらに、妊娠前のやせは早産や低出生体重のリスクを高めることが知られており、次の世代の健康にも関わっている。「本当は気づいていながらも、ずっと先送りにしてきた問題です。少子化にもつながっていく今後極めて重要となるテーマだと思っています」。
ボディイメージの歪みを正す
これまでに、メディアやファッション雑誌などへの接触が女性のやせ志向に関連することが示されてきた。また、若い女性がやせたいと願う理由として、「他者との比較」に敏感であることが挙げられている。昨今のスマートフォンの普及により、ネット人口約1億人時代に突入した現在では、SNSの発達に伴い、ネット上で他者と繋がりやすく写真や動画の共有が簡易になった。そのため、他者と比較する機会が増え、やせ志向がさらに強まり、新たなやせが増加した可能性がある。このような流れは、ボディイメージの歪みに起因する。実際はやせているが、自分が理想とする「他者」と比較することで、自分は太っていると認識してしまうといったケースだ。そこで湯面氏は、SNSの影響を詳細に調査し、時代に適応した改善方法を提案することが女性のやせ問題を解決することにつながると考えた。10年前にはなかったであろう時代の変化を捉えた目新しいテーマだと言えるだろう。「自分の認識がいつのまにか歪んでしまっていることに、まず自分で気づく。その土台となる研究になればいい」と湯面氏は研究の意気込みを語ってくれた。多くの女性達が健康に、そして美しくあるという、両方を同時にサポートできる成果がここから出てくることを期待したい。(文・中嶋 香織)