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2019年3月公募第44回リバネス研究費

第44回リバネス研究費 ダスキン開発研究所賞 募集テーマはこちら

千葉大学 予防医学センター 健康都市・空間デザイン学分野 特任准教授

鈴木 規道さん

採択テーマ
生活スタイルとシックハウス症候群の関係 ~掃除の頻度や質は疾患予防につながるのか?~

環境を改善することで人々の健康に寄与する、環境改善型予防医学を専門とする鈴木氏。本賞で採択されたのは、掃除の頻度や質などの生活スタイルが、人々の健康にどれだけ寄与するのかを明らかにする研究だ。

医工連携で挑む環境改善型予防医学

鈴木氏は大学卒業後に、住宅や店舗の設計業務を担当する中で、建材などに含まれる化学物質が起因の一つと考えられるシックハウス症候群(※1)について関心を抱く。偶然にも、その後、千葉大学予防医学センターに参画し、携わったプロジェクトの一つが、化学物質を削減することで疾患を予防する街づくりを目指した「ケミレスタウンプロジェクト」(※2)だ。工学的知見だけでなく、医学的エビデンスも加えながら空間デザインや暮らし方を提案することで、人々の健康を実現したいと考えた鈴木氏は、医学系の研究者らとともに、化学物質を限りなく低減した住宅が疾患を予防し、さらに健康増進に向かう「環境改善型予防医学」に取り組んでいる。

※1シックハウス症候群:居住に起因するめまい、吐き気、嘔吐、頭痛、湿疹など、様々な健康障害の総称であり、建材に含まれる化学物質が主な原因とされている。
※2ケミレスタウンプロジェクト:可能な限り化学物質を削減し、シックハウス症候群を予防する住空間を研究開発するプロジェクト。2007年より開始。共同研究コンソーシアムを組織して29社と共同研究を行った。現在は積水ハウスとの寄附講座を担当し健康住宅の開発を目指している。

生活スタイルは健康に影響するのか

人が1日のうち約80~90%を過ごすと言われる室内環境において、鈴木氏が次に注目するのがホコリだ。ホコリには繊維くずやダニの死骸・フン、ペットや人の毛・フケなどが含まれる上に、環境中の化学物質を吸着しやすく、アレルギーやシックハウス症候群の大きな要因となる。一方で、室内のホコリを減らすには掃除をした方がいいのは周知の事実だが、具体的にどんな掃除行動がいいのか、例えば週何回どんな掃除をしたらいいのか、そんな当たり前のことがエビデンスに基づいて示されていないのが現状だ。そこで鈴木氏は「、掃除の頻度」や「掃除の内容」など、掃除に関する様々な因子に着目し、どのような生活スタイルを送っている人がシックハウス症候群やアレルギー疾患を持っているのか、まずはWebアンケートを用いて横断研究を行うことを目指している。「生活スタイルによる室内環境の改善がどう健康に寄与するのか、予防医学的なエビデンスをとりたいですね」と鈴木氏は語る。

未来の健康へ一歩踏み出す

本研究費をきっかけにして、清掃サービスに関する独自の知見を持つダスキン社と連携できる点に、鈴木氏は期待を寄せている。すでに今回の研究で行うアンケート内容について、ダスキン社の研究員と議論を始めたところだ。「将来的には、顧客と定期的に対面できるダスキン社の協力も得ながら縦断研究を行うことができれば、掃除と健康の関係についてさらに強固なエビデンスを得られるかもしれません」と展望を語る。昨年には、暮らすだけで健康で活動的になる住空間・地域を目指した産学連携プロジェクトが、JSTの産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム(OPERA)に採択され、環境と健康について精力的に活動を広げる鈴木氏。目指すのは、環境を改善することで個人の努力なしに健康へ導く「0次予防」が実現される世界だ。健康と生活がより密接につながった私たちの未来に向けて、着実に歩みを進める。
(文・仲栄真 礁)