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2019年3月公募第44回リバネス研究費

第44回リバネス研究費 ダスキン開発研究所賞 募集テーマはこちら

群馬大学大学院 理工学府 修士課程1年

茂木 佑介さん

採択テーマ
サーキュレータと空気清浄機の連携による省エネで高効率なスギ花粉除去システムの確立

生活の質向上のために、気流解析シミュレーションソフトを使って室内の空気清浄システムの開発に取り組む茂木氏。今回採択されたのは、サーキュレータと空気清浄機を連携させ、省エネで高効率な花粉除去を行うアイデアだ。

気流を操り花粉を除去

日本国民の約30%が罹患しているとも言われる花粉症。長く続く鼻水・くしゃみ・目のかゆみといった症状は生活の質を著しく低下させてしまう。茂木氏は研究室で独自に開発されたシミュレーションソフト「CAMPAS」(※1)を用いて室内での花粉の挙動を推定し、効率的な除去方法の提案を目指している。室内の花粉除去といえば空気清浄機だが、実はその気流を部屋の家具が乱して除去効率を低下させていることが、CAMPASを用いたシミュレーションで明らかとなった。そこで着目したのが室内の気流を循環させるサーキュレータだ。サーキュレータを使って花粉侵入率が最も高い玄関口から空気清浄機まで花粉を搬送すれば、除去効率を改善できるのではないかと考えたのだ。
※1気流解析及びエアロゾル挙動シミュレーションソフト及び解析ツール群(CFDandAerosolMotionPropertyAnalysisSuite,CAMPAS)

空気清浄機の高効率利用を目指して

サーキュレータと空気清浄機の連携稼働についてCAMPASによるシミュレーションを行った結果、わずかだが花粉除去効率の改善がみられ、花粉除去にかかる時間が半減、消費電力も3分の1に軽減されることが推定されたという。しかし、現実の環境下に適用できるかは未知数だ。例えば、サーキュレータから生じる螺旋状の気流をシミュレーション上では再現できておらず、粒子搬送能力を正確に反映できていないという課題があったのだ。そこで、茂木氏は研究室内に簡易実験室を製作し、ダストセンサーをマイコンで制御して、実際にサーキュレータの粒子搬送能力を評価する実験を計画している。「シミュレーションが主軸の研究ですが、実験で実測値を得ればシミュレーションの精度を検証できるので重要だと考えています」と意欲的だ。

シミュレーション研究を活かして生活の質向上

研究室に眠っていたマイコンを活用して、実測値をシミュレーションに組み合わせるアイデアは、工業高校出身でマイコン制御の経験のあった茂木氏が、自ら指導教員に提案したものだ。実測値を元に、より正確に室内の気流や花粉の挙動をシミュレーションできるようになれば、例えば空気清浄機の効果を最大限に発揮できるサーキュレータや家具の配置の提案など、花粉症患者が安心して快適に過ごせる環境構築に大きく貢献できるかもしれない。「将来的には、携帯で部屋の写真を撮ったら、その場でシミュレーション結果を算出できるような技術につながればと思っています」。予測から実測まで取り組む茂木氏の研究を通して、住みよい生活空間の実現が見えてくる。 (文・仲栄真礁)