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2018年6月公募第41回リバネス研究費

第41回リバネス研究費 カイオム賞 募集テーマはこちら

東京工業大学 科学技術創成研究院 助教

福嶋 俊明さん

採択テーマ
クッシング病の抗体医薬開発に向けた発症メカニズムの解明

クッシング病は、脳下垂体にできた腫瘍から副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が過剰に分泌されて起こる内分泌疾患で、厚生労働省の定めた指定難病の一つだ。ACTHの過剰分泌の分子機構が解明されることで、従来の外科的手術療法に代わる新たな治療法が見出されるかもしれない。

福嶋氏の所属研究室は、これまで、動物細胞が持つ多様な機能が細胞内の種々のタンパク質の“ユビキチン化修飾”によって制御されるしくみを研究しており、中でもUbiquitin-SpecificProtease8(USP8)と呼ばれる脱ユビキチン化酵素に着目していた。一方、ドイツの臨床研究者のグループは、クッシング病患者の腫瘍でUSP8遺伝子に頻繁に変異が起きていることを見出した。この両者が共同研究を行い、遺伝子変異によって“過剰に活性化したUSP8”が生じることが疾患発症の原因であることを突き止めた。USP8は広範な組織に発現し細胞生存に必須であるため、これに直接作用する薬剤には副作用が懸念される。そこで、下垂体腫瘍細胞においてUSP8がターゲットとするタンパク質を探索し、その機能を解析することで、副作用の少ない薬剤標的を見出すことを目指す。「本研究室の駒田雅之教授が始めたUSP8の基礎研究が発展し、今、クッシング病患者の治療に繋がろうとしている」と福嶋氏は語る。基礎研究を続けてきた研究者たちの手によって、難病治療の可能性が大きく開かれようとしている。
(文・五十嵐 圭介)