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  • 第40回リバネス研究費 超異分野・ヘルスケア研究創出賞 採択者 出野 智史さん

2018年3月公募第40回リバネス研究費

第40回リバネス研究費 超異分野・ヘルスケア研究創出賞 募集テーマはこちら

慶應義塾大学医学部 麻酔学教室 助教

出野 智史さん

採択テーマ
術後肺炎予防を主眼とした漢方製剤による免疫補助療法の開発 〜肺防御因子増強と肺組織保護効果の検証〜

麻酔科医として臨床現場にも立つ出野氏は、学生時代より東洋医学を学んできた経験から、急性期医療への漢方薬の活用に着目している。麻酔科が携わる周術期*医療において、術後肺炎は死亡率が高く、患者の予後にも大きな影響を与える重篤な感染性合併症だ。手術の侵襲により免疫が撹乱されることが一因だが、それを是正する有効な免疫補助療法は未だ確立されていない。また、薬剤耐性菌の増加に伴って“病原菌をやっつける”抗菌薬による治療法の限界も指摘されている。そこで注目したのが、体が持つ治癒力を引き出す漢方薬だった。外来診療では広く普及してきた漢方薬だが、周術期医療への活用例は限られている。
*注:周術期とは、手術中を含む術前・術中・術後の一連の期間を指す。

現在、免疫を低下させた肺炎モデルマウスを用いて、漢方薬のひとつ“補中益気湯”が複数の肺防御因子の増強を介し、細菌性肺炎に対する感染予防効果を示すことを確認している。今後は患者への臨床応用を目指し、術後肺炎への有効性を実証できるよう更に基礎的なエビデンスを積み重ねていく予定だ。東洋医学といえば中国や台湾も有名だが、これらの国々では伝統医学と西洋医学の医師免許が分かれており、実は日本の医師だけが西洋医学と東洋医学の両方を扱える強みがあるという。「漢方を西洋医学に融合させた日本独自のアプローチで、周術期医療の質を向上させたい」と出野氏は熱を込めて語った。