採択者の声

抗体医薬は、生物が本来持つ免疫のシステムを活用する治療方法である。標的に対する特異性の高さと、近年の抗体作製技術の発展に伴い、これまで治療ができなかった病気に対する新たなアプローチを確立できる可能性があるとして注目を集めている。抗体医薬は、標的となる組織に到達することで機能する。しかしながら、これまでのがん細胞に対する抗体医薬を含んだ抗がん剤の開発は、二次元培養された単層の癌細胞に対する作用をもとに進められてきたため、多くの候補物質は、生体組織により近い状態では効果を発揮しなくなる。抗体の作製・選抜を研究してきた横山氏は、より生体内の細胞状態に近い三次元培養系をスクリーニングに用いることで、従来では得られなかった抗体が得られるのではないかと期待する。現在は、三次元培養した細胞塊を弛緩させるような機能を持つ抗体の作製を目指している。工学研究者として人の役に立つことを目指しながらも、自由な発想で研究を行なうことを念頭に置く横山氏は、「自由に発想できる分野だからこそ、特定の疾患に縛られない、アンメットメディカルニーズにもアプローチできうる技術を生み出していけるのでは」と話す。横山氏の研究から、これまで医学だけでは解決し得なかった課題が解決するだろう。