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  • 第32回リバネス研究費 𠮷野家賞 採択者 鳴海 拓志さん

2016年6月公募第32回リバネス研究費

第32回リバネス研究費 𠮷野家賞 募集テーマはこちら

東京大学大学院 情報情報理工学系研究科 講師

鳴海 拓志さん

採択テーマ
五感情報提示により食品の情報的価値を向上させる食体験拡張手法の研究

情報の追加で美味しさ向上を実践したい

「美味しさは味だけでは決まらない。香りや色、温度、音などによっても大きく影響を受けます。調理以外で付加できる“情報”を提示することで、食に対する満足感の向上を目指します」。今回野家賞に採択された鳴海氏が意気込みを語ってくれた。VR(バーチャルリアリティ)のインターフェース開発を行い、嗅覚や味覚の拡張に取り組んでいる鳴海氏は「歯ごたえや盛り付けも料理の一部といわれるように、食はもともと五感をフル活用する活動です。そのためVRととても親和性が高い。しかし今のVRは視聴覚が中心で、味覚に関する研究は世界を見てもほとんどありません」と話す。「技術はあるだけでは意味がなく、実際に使えるものでなければならない」と考える同氏は、飲食店での実装を見据え、野家との協力体制を築けることにも期待を寄せている。

「作りたて感」で美味しさは増幅されるのか?

鳴海さんは「味覚」と他の五感を組み合わせた様々なアプローチで研究を推進する予定だ。これまでの研究でも、人工的に甘さと酸味を調整したジュースを飲んだ人は、同じ味にも関わらず、オレンジ色ならオレンジジュース、黄色ならりんごジュースだと感じることがわかっている。また、VRでクッキーの見た目と香りを変えると8割の人が「味が変わった」と答えるそうだ。今回主として挑むのは、視覚と聴覚で満足度を向上できるかの検証だ。他にも、食材の産地や加工工程の情報を視覚的に提示し、安全面への配慮を伝えることで満足感が変わるかなど、幅の広い研究計画を検討している。技術を実践できる形に変えていくチャレンジが野家賞をきっかけに加速しそうだ。

五感情報で食のアナリシスから食のシンセシスへ

鳴海氏は、情報付加によるヘルスとウェルネスの向上を目標に掲げている。これまでの食にまつわる情報の研究は「健康な食生活を送れているか?」というアナリシス(解析)だったが、これからは「五感情報を提供することで満足感を付与し、健康増進に資するにはどうしたらよいか?」というシンセシス(統合・開発)へと研究ステージを一段階先に進めたいという。「食べ物自体で追求できる価値は、食品会社や外食産業が高めている。私は、そこに情報を付加することでさらなる価値を創造していきたいです」と鳴海氏。未来の「食」は情報技術との融合によって拓かれるのかもしれない。