採択者の声

2023年6月公募第61回リバネス研究費

第61回 𠮷野家賞 募集テーマはこちら

法政大学 理工学部応用情報工学科 学部1年

福原 陸翔さん

採択テーマ
人類の健康を食から改善する研究開発及び、生体の情報と食の関係性について 〜栄養介入による健康の実現〜

手軽に体調を把握し、個別最適な食生活で健康になる

日々の食生活が健康に直結しているのは間違いない。しかし、健康にとって何を食べるのが正解か、毎日の食事選びに悩んだことがあるだろう。福原氏は、その日の自分の体調を可視化し、誰でも食を通じて健康に暮らすことができる未来づくりに挑戦している。

データを使って健康を可視化する

高校時代、AIや機械学習に熱中していた福原氏。データを扱うのが好きで、心拍データ等の生体情報から人の感情を推測するなど、データを解析して、これまで見えなかった事象を見つけることが楽しかったという。そんな福原氏にとって転機となったのは、高校生を対象にした起業家支援のプラグラムに参加していた株式会社RelieFoodの加納颯人氏との出会いだった。加納氏は家族の食物アレルギーをきっかけに、特定の食材を取り入れることができない人々のためのレシピ開発を手掛け、食を通して健康課題の解決を目指す活動を行っていた。その彼の理念に惹かれ、福原氏も食に興味を持ち、「食事は1日3回毎日取るのに、健康状態は年1回の健康検診で知るという人も多い。日々の生体情報から食生活と健康との関係性を見える化することで、健康課題の解決につなげられるかもしれない」と考えるようになった。そうして、福原氏は、推測した健康状態から自分の健康に合った食事を提案できないかと考え、加納氏と共に健康を食から改善する研究を開始した。

もっと手軽に、もっと正確に

 個人にとって最適な食事を知るには、どうしたら良いだろうか?既存のアプリにも、個別最適化した食事を提案するサービスは存在する。だたし、毎日の献立を登録する必要があり、それを手間だと感じる人も多い。そこで福原氏は、生体情報のデータを解析し、そのタイミングでの最適な食の提案ができるアプリケーションを構想している。ところが、リアルタイムでの測定と解析を行うには、膨大なデータを適切に処理する技術と、人体から正確な生体情報を取得する技術などを高度に組み合わせることが必要となる。そこで、福原氏は大学の情報系学部で専門知識を学び技術を磨くとともに、東京医科歯科大学で食と免疫についての研究を行うことにした。広範にわたる知識と経験を活用して、体に合った食の推薦の精度をさらに高められると思ったからだ。

訪れるほど健康になるお店を目指して

 高齢化社会が進むにつれ、生活習慣病の予防やアンチエイジングなど生活者の健康ニーズは高まりつつある。𠮷野家では牛丼を誰もが楽しんでもらえるようサラシア牛丼・ベジ牛など「食生活の改善に役立つ牛丼」の商品開発・販売にも取り組み続けている。大学で得た知見・研究結果をもとに、𠮷野家を訪れるお客さんに成果を試してもらいたいと福原氏は語る。「将来的には、来店したお客さんのその日の体調をもとにオーダーを取り、最適な料理を提供するような体験を届けたいです」と話す福原氏は現在、大学の学部1年生だ。大学での研究は始まったばかりだが、だからこそ伸びしろもある。誰もが健康に暮らせる未来の実現に向けた福原氏の取り組み今後も目が離せない。

(文・尹 晃哲)