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  • 第58回 フォーカスシステムズ超異分野賞 採択者 入江 駿さん

2022年9月公募第58回リバネス研究費

第58回 フォーカスシステムズ超異分野賞 募集テーマはこちら

獨協医科大学 先端医科学統合研究施設 先端医科学研究センター スマート医療研究部門 助教

入江 駿さん

採択テーマ
こどもの心理発達と集団コミュニケーションを促す新しいAIシステムの開発 〜臨床・工学・芸術領域に属する3人の理学療法士の共創〜

人々がバーチャルとリアルの両方で活躍できる社会へ

 障害をもった人たちが、一方的に支援サービスを受ける社会体制から、彼らを取り巻くあらゆるステークホルダーが、お互いに平等な立場で活動する社会を、特に幼少期から取り入れるべきだと考える獨協医科大学の入江氏。現実とバーチャル空間をどのように活用することで、その実現を目指すのか話を聞いた。

 

知識を融合する社会実装型研究

 入江氏は、理学療法士の資格を取得後、運動器不安定症患者やその基礎疾患を有するリハビリテーションの現場において、ロボットや電気的刺激を活用した運動機能の改善に関する研究開発を推進してきた。「体の機能を良くするための支援ももちろん大切なことですが、今は生き方そのものの支援に繋がる研究をしていきたいと考えています」と話す。アカデミアでの基礎研究に加えて、ベンチャー企業での応用研究やエンジニアとしての経験を活かし、2021年に獨協医科大学に着任後は、実験心理学と情報工学に関わる知識を融合し、全ての人のコミュニケーションを円滑化することを目指した社会実装型の研究を推進している。

多様性を受け入れるコミュニケーション

 自閉スペクトラム症などの発達障害の病態解明が進展した今日では、障害を抱える人々に向けた発達支援サービスの普及が拡大しつつある。しかし、支援に関わる保育士・理学療法士・作業療法士等の負担は大きく、支援を充実させる必要がある幼少期、学童期の子どもに対して十分なケアが行えない状況にある。そこで、今回の研究では、乳幼児を対象として、コミュニケーション支援を目的にしたAIアプリケーションの研究開発に取り組む。すでに、人の顔の表情がコミュニケーションにおける心理的な引き込みに大きな役割を果たすということを明らかとしてきた入江氏。その知見を活かし、今回の検証では、複数の児童の笑顔を自動的に検出し、それぞれの笑顔を採点し、合計点数に応じた演出を行うコンテンツを作成する。多人数での自然な遊びの中で、お互いが笑顔になるような、自然なコミュニケーションを取れるようになることで、コミュニケーションに不安を抱える児童の発達ケアに貢献することが狙いだ。

現実空間とバーチャル空間の接続によるハードルの突破

 入江氏が目指すのは、全ての人がバーチャルでもリアルでも活躍できる世界だ。「障害を持っていることは、他人からは一見わかりにくく、当事者にしか気がつかないことも多いんです」。実際に、発達障害の当事者は、感情の機微を読みにくい、コミュニケーションの得手・不得手、スキルの偏りなど、様々な要因で社会に適応しづらくなってしまうケースも多い。そこで、現実空間とバーチャル空間を繋ぐことで、現実では困難であった感情表現やコミュニケーションを円滑化し、より多くのアイデアや知識が生まれる現場を実現していきたいと話す。