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2022年6月公募第57回リバネス研究費

第57回リバネス研究費 ダスキン開発研究所賞 募集テーマはこちら

福岡大学 薬学部 臨床薬物治療学 講師

村田 雄介さん

採択テーマ
部屋も心もクリーンに ~アロマセラピーによる心身&環境衛生~

身体に繋がる「心の衛生環境」を整える

薬剤師として、そして研究者として疾患と向き合ってきた、福岡大学の村田雄介氏。身体への直接的なアプローチだけでなく、心を整えることで健康な身体と生活を実現することを目指し、アロマセラピーの科学的効果検証に挑戦している。

 

薬に加え、新たな治療の選択肢をつくる

村田氏が注目する「アロマセラピー」とは、不安抑制などを誘導する香りをもつ精油を用いた治療法だ。精油の輸入業を営んでいたフランスの化学者、ガットフォセが、自らの重度の火傷をラベンダー油で治療し、その治癒力に着目したのが始まりとされている。これまでにも香りによる経験的なリラックス効果や安眠効果の報告例はあるが、科学的な検証はほとんどされていない。被験者が香りを認識すれば、「効果があるかもしれない」と感じてしまい、ブラインド実験が難しいからだ。個人によって異なる、香りの嗜好性なども影響する。しかし、村田氏は薬を使えない状況でアロマセラピーが活躍する可能性に希望を持っている。きっかけは、幼い娘が喘息を発症した時のこと。薬を受け付けてくれず、藁にも縋る思いで「喘息に有効」とされる精油を使用すると、咳が治まった。静かに眠る我が子を見て、アロマセラピーに対する見方が変わった。

 

香りがアレルギー反応に与える変化を検証

これまで村田氏は、うつ病など、精神的ストレス負荷が脳に与える影響に注目して研究を行ってきた。その中で、下痢、頭痛、アトピーなどの中には心理社会的ストレスが原因となって引き起こされるものがあり、身体を衛(まも)るためには心にもアプローチする必要があると考えるようになった。そこで、神経に働きかける香りが疾患に与える影響に着目した。基礎実験を行い、これまでに論文などでも見たことのない結果が見出されてきた。特に、最近ではマウスを用いた行動実験により、ペパーミントとカモミールジャーマンの香りが他の香りと比べて掻き行動を抑える傾向があることが示唆された。

▲マウスに異なる香りを嗅が せたときに掻き行動に差が見られた。

 

「生を衛る」を実現するために

子供が成長とともに様々なアレルギー疾患を発症する現象であるアレルギーマーチにも、いつかはアロマセラピーで介入したいと考えていた村田氏。この課題に興味を持つ学生も現れ、いざ研究を始めようとした時に見つけたのが本賞の公募だった。「アカデミアと企業が手を組み、他者と知識を共有しながら進めていくという考え方に共感し、貴重な時間を割いてでも挑戦しようと思いました」。募集テーマに含まれる「衛生」という言葉には健康状態の維持と向上、さらに、病気の予防と治療という意味がある。「元々、場所や空間だけでなく、人間もまた整えるべき対象だと考えてきました。個人の健康から、公共衛生へと拡げていきたいです」。アロマセラピーの効果を検証する挑戦がいよいよ始まる。(文・伊達山泉)

 

担当研究員からひとこと

株式会社ダスキン ハイジーンコントロール研究室 渡邊 仁美 氏

村田先生がご研究されているアロマセラピーは、セルフケアの1つとして世界中から注目され続けています。みなさまが今よりもより豊かな生活を送るためのお手伝いになるよう、【ココロ】の衛生環境を整える商品の開発へと繋げていきたいと考えております。