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2013.03.01 リバネス研究費:採択者発表

第12回リバネス研究費 トミーデジタルバイオロジー賞 採択者発表

第12回リバネス研究費
トミーデジタルバイオロジー賞の採択者が決定いたしました。
採択者および研究課題名は以下のとおりでございます。

■ 受賞者
菊島健児(きくしまけんじ)

■ テーマ
非侵襲in vivoイメージング技術を用いたマクロファージによる腫瘍血管新生制御機構の解明

■ 所属
東京大学大学院理学系研究科物理学専攻樋口研究室

■ 採択者の声
私はin vivoイメージング技術の開発を行っていますが、対象となる細胞、および分子を標識するために多くの抗体や試薬を試す必要があります。これまでに、BioLegend社の抗体を試していたこともあり、応募させていただきました。
新たな研究分野を開拓する過程においては、イチかバチかで新たな試薬や実験器具などを試してみる必要がありますが、研究費の限られている私たちには、高額の出費をしたにもかかわらず、思うような結果が得られないリスクが常に付きまといます。リバネス研究費では、ユニークな実験装置の貸出しや製品の購入サポートを通して、新たな研究技術開発の可能性を後押ししていただけます。
是非、読者の皆様にも挑戦していただければと思っています。

採択通知書授与式の様子は以下からごらん下さい。

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第12回リバネス研究費トミーデジタルバイオロジー賞採択通知書授与式

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トミーデジタルバイオロジー株式会社の本社にて、採択者の東京大学大学院理学系研究科物理学専攻樋口研究室の特任研究員菊島健児氏へ採択通知書の授与式が開催された。当日の様子と菊島氏のこれまでの研究について簡単にご紹介したい。

 

生体分子の1分子解析

菊島氏が所属する東京大学大学院理学系研究科物理学専攻樋口研究室は、2008年に樋口秀男教授が東京大学に移ってきた時に設立された研究室だ。樋口氏はこれまでにキネシンの運動を10µsの時間分解能と2nmの空間分解能という精度で測定し、その 実験結果をもとに分子運動メカニズムを提案するなど、ナノレベルでの分子の動きについて研究成果を挙げてきた。東京大学に赴任してから進めている研究では、測定の精度を1Åレベルにまで高める研究が進んでいる。ここまで測定精度を上げることで、神経・筋肉・一般細胞で働くモータータンパク質1分子の動きを原子レベルで捉えようとしている。

 

モータータンパク質の研究

菊島氏は大学院以降モータータンパク質の1種であるダイニンの解析を中心に研究に取組んできた。鞭毛には運動性をもたらす軸糸という主に微小管によって構成されている構造体が存在する。その中に滑り運動によって鞭毛の屈曲を生み出すA小管とB小管呼ばれる微小管がある。A小管からは隣り合う微小管に対してダイニンで構成される内腕、外腕と呼ばれる構造体を伸ばしている。菊島氏はこの内腕、外腕のダイニンがどのように鞭毛の運動性を生み出すかということについて研究を行ってきた。

 

in vivoイメージングへ

樋口研究室はJST CRESTの「in vivoナノイメージング技術の開発と生体運動機構の解明」と新学術領域研究「ナノメディシン分子科学」でin vivoイメージングによって細胞内の分子反応について解析するための実験系の構築と、それを用いた現象の解明に取組んできているため、研究室に技術やノウハウが蓄積している。2010年から樋口研究室にメンバーとして加わった菊島氏は、所属以来in vivoイメージングの観察系の構築に取組む。採択テーマである「非侵襲in vivoイメージング技術を用いたマクロファージによる腫瘍血管新生制御機構の解明」も現在の研究の発展上にある。量子ドットは高い量子効率を持ち、褪色しにくいという性質を持つため、生体にあまりダメージを与えることなくin vivoのイメージングを長時間行うことができる。「私たちの研究室では量子ドットを用いて、約100µm深度における非侵襲in vivoマウス耳介内において、好中球内部における小胞運動を3次元、または高時空間分解能でイメージングする技術の開発に成功しています。この技術を応用することにより、生体内における様々な分子メカニズムの解明に貢献できると考えています」と菊島氏は語る。

 

期待が高まった採択通知書授与式

トミーデジタルバイオロジー株式会社の常務取締役の南保義則氏をはじめとしたスタッフの方たちを交えて採択通知書の授与式は実施された。採択通知書の授与に引き続いて行われた菊島氏による発表では、量子ドットを用いたマウスの耳介のin vivoイメージングの様子が紹介された。好中球の内部の小胞の運動が映像で流れると、トミーデジタルバイオロジーのスタッフも真剣な表情で見入っていた。量子ドットを使った実験についての質問やこれからのスケジュールについてもディスカッションがなされ、研究の開始に向けて期待の高まる会となった。

菊島氏はスイスのコラボレーターのところへ3ヶ月程度留学することが決まっており、研究の開始は帰国後から。トミーデジタルバイオロジー社が扱うBioLegend社の抗体と菊島氏の技術が融合することで、新しい医療技術が生まれることが楽しみだ。

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