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リバネス研究アワード2021 受賞講演レポート|細胞ひもの発想で広がる可能性(尾上 弘晃氏氏)

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尾上 弘晃 氏

リバネス研究アワード2021
[先端研究推進部門]

〈受賞者〉
慶應義塾大学 理工学部機械工学科
教授
尾上 弘晃 氏

受賞講演「細胞ひもの発想で広がる可能性」

マイクロ・ナノスケールの微細加工技術を基盤に、分子スケールからマクロスケールまで、階層化された人工システムをいかに構築するか、その原理を探究する尾上氏。その中でも、11年前にリバネス研究費にも採択された、細胞の“ひも”に関する研究の進展について語ってくれた。

細胞の“ひも”

私の専門は、元々は機械工学のマイクロマシンと呼ばれる分野です。中でも微小なパーティクルをたくさん並べる技術が専門で、半導体加工の技術や細胞アレイの研究をしていました。ところが留学先から帰国後、たまたま再生医療のプロジェクトに関わることになり、そこで、“ひも”で何か物を作りたいという発想に至ります。ひもは、皆さんご存じのとおり、様々な場所で使われている、物作りの非常に有効な形です。工芸品や着物、DNAやタンパク質まで、細長い構造が折りたたまれて構造をとる、とても興味深いユニットだと常々思っていました。実は、体の中にもひもみたいな構造がいっぱいあるぞ、と気づきました。例えば筋肉組織や、血管の組織、神経組織。いわゆる再生医療では、細胞を塊にして生体組織や臓器を作る“組織工学”という概念がありますが、それにはひもの形がいいんじゃないか、と発想を得たわけです。

細胞ファイバ技術を現実社会へ

では、細胞をどうやってひもの形にするか。ゲルでできた直径200μm程度のチューブの中で細胞を培養すると、当然空間が限られるので、細胞はその形にしか成長できません。このようにして、組織工学のためのひも状の細胞ユニット(細胞ファイバ)を作ることができ、これを使って組織を作る研究を進めてきました。また、細胞が入ったチューブは意外と頑丈なのですが、本物のひものように自在に取扱えるような操作技術も開発しました。私は今、大学で研究室を持ち、細胞ファイバ技術をより現実的にするために研究を続けています。例えば、カテーテルを使って腎臓にひも状の細胞組織を送達する、低侵襲な細胞移植法に取組んでいます。また、私がお手伝いしているセルファイバという会社では、細胞ファイバ技術の事業化に取組んでおり、そこからも日々インスピレーションを得ています。異分野が合わさって生まれる新しい技術、新しい発想を大事に、今後も研究を進めていきたいと思っています。

(構成・塚越 光)

プロフィール

2006年、東京大学大学院情報理工学系研究科にて博士号取得。2005~2009年、日本学術振興会特別研究員(DC2-PD)の間、カリフォルニア大学バークレー校にて客員研究員として細胞アレイの研究従事。帰国後2014年まで東京大学生産技術研究所助教。2010~2014年、JSTERATO竹内バイオ融合プロジェクトグループリーダーとして細胞ファイバ技術を開発。2014年より慶應義塾大学理工学部専任講師に着任、2016年より准教授。2016年より株式会社セルファイバ取締役。第5回リバネス研究費ニッピ賞(2010年)を受賞。

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