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2020年12月公募第51回リバネス研究費

第51回リバネス研究費 扶桑化学工業賞

「果実酸」や「コロイダルシリカ」の新たな世界を拓くあらゆる研究
〜フードテック×果実酸、未来のコロイダルシリカ〜

扶桑化学工業が強みとするのは「果実酸」と「コロイダルシリカ」です。この2つのニッチトップをキーワードに、例えば「Food Tech×果実酸」、「未来のコロイダルシリカ」など、共に研究開発することで既存基盤を最大限に活かした新領域を開拓できる提案を幅広く募集いたします。

設置企業・組織 扶桑化学工業株式会社
設置概要

採択件数:若干名
助成内容:研究費50万円

スケジュール 応募締切:2021年1月31日(日)23:59まで
審査結果:2021年4月ごろにご連絡予定
募集対象 ・大学・研究機関に所属する40歳以下の研究者
・海外に留学中の方でも申請可能
・研究室に所属して研究を始めていれば、学部生からでも申請可能
担当者より一言
設立から60年余、コツコツと築いてきた「果実酸」と「コロイダルシリカ」を核にする2つの事業領域は、国内外で信頼と実績ある「扶桑ブランド」を確立してきました。これからの時代を見据えた新たな事業領域の開拓にあたって、ドラスティックに飛び地を目指すこともできますが、私たちは最も自信と誇りのあるこの2つ領域を基盤にしたいと考えています。社内の研究者、技術者だけでは切り拓くことができない未知なる関連領域を、同異関わらず多様な分野で研究する若手の皆さんと一緒に創っていきたいと考えています。
設置企業インタビュー記事
(写真向かって左から)
管理本部 総務部 総務課 課長 兼 企画開発室 寺西 是志 氏
執行役員 企画開発室長 藤岡 篤 氏
ライフサイエンス事業部 営業開発部 営業開発課 兼 企画開発室 川﨑 悠里子 氏

ニッチトップの基盤を活かし、さらなる高みを共に目指したい

現名誉会長である赤澤庄三氏が、大阪大学薬学部の研究生として医薬品の研究に取り組み、1957年に設立した扶桑化学工業。60年余の歴史を持ち、2つの柱を軸にさまざまな製品を世に出し、国内外で高いシェアと信頼を獲得している。創業家のメンバーでもある藤岡氏が室長として率いる企画開発室では、培った歴史から未来を創るべく新たなチャレンジに取り組んでいる。

踏み台となる盤石な2本柱

扶桑化学工業には、核となる事業が大きく2つ存在する。ライフサイエンス事業と電子材料事業だ。6割を占めるライフサイエンス事業は、果実や野菜に多く含まれる酸味成分であるリンゴ酸やクエン酸などの幅広い有機酸の製造・販売事業である。特に、リンゴ酸は、国内唯一の製造メーカーであり、そのシェアは国内ではトップを誇り、世界40ヵ国以上に輸出している。他にも、グルコン酸、クエン酸、ビタミンCも国内でトップシェアを有している。その利用分野は、食品、飲料、工業、医薬品、化粧品、畜産、農業、水産など多岐に渡り、扶桑ブランドとしての信頼と共に、多くのユーザーとのコネクションを構築してきている。

一方、残り4割を占める電子材料事業は、半導体製造の研磨工程に使用されるゾルゲル法によって製造する超高純度コロイダルシリカの販売が中心だ。超高純度コロイダルシリカは、原料のシリケートからの一貫生産体制を確立しており、半導体業界の厳しい品質要求に長年に渡り応え続けてきた実績がある。シリコンウェハーのファイナルポリッシングスラリーおよびCMP(化学的機械的平坦化)スラリーの原料として、半導体、電子材料、光学材料の分野で世界トップシェアを確立している。近年ではゾルゲル法によるコロイダルシリカのパウダー化技術を確立し、研磨分野以外の高機能材料への応用開発も進めている状況だ。

どちらの事業も、その高品質な材料供給、品質管理技術、品質保証など、それぞれのシェアを裏付ける高度に確立された基盤があるのが大きな特徴である。

飛び地ではない、まだ見ぬ周辺領域の探求

このような盤石な事業をもつ扶桑化学工業だからこそ、飛び地ではなく周辺領域に新たなフィールドを模索し続けている。ライフサイエンス事業は、安定した事業ではあるが今後の飛躍的な成長に向け、奮闘が続いている。また電子材料事業では、半導体業界全般を最終ユーザーとして抱えてはいるが、半導体製造プロセス自体が成熟した状況にあり、今後の産業成長においてそのプロセスに大きな変革が求められるだろう。このような背景にあって、リンゴ酸やクエン酸などの果実酸においては、かつてその主な用途は食品や飲料の酸味料であったが、日持ち向上、酸化防止、品質改良など多くの機能を持つ果実酸製剤として新たな用途開発と製品化を実現してきた。さらに果実酸の誘導体は、農業、漁業、工業、バイオテクノロジー産業、精密産業などの幅広い分野へとフィールドを広げてきている。同様に、半導体のシリコンウエハーを鏡面に仕上げる研磨剤用途としての超高純度コロイダルシリカは、特殊な反応技術、精製技術、環境対策など、精密化学薬品製造において培ってきた優れた独自技術・ノウハウを活かして、化粧品、医薬品、プラスチックなどの機能性化学品分野に展開してきている。しかし、このような用途開発、製品化も社内に留まらない展望を見込みたいという。異分野・異業種を含めた外部研究者の新たな視点で、扶桑化学工業の強みとの掛け算が強く求められている。

共に開拓し、国内トップから世界を目指そう

それぞれの事業をニッチトップでやってきたからこそ、社内では気づかない視点があるのではないかと担当の藤岡氏はいう。果実酸やコロイダルシリカとの関連を重視しつつ「実はこの製品、こういう使い方があるのか、このような研究の切り口もあるのか」といった新規事業開発の種に期待を寄せる。果実酸やコロイダルシリカのど真ん中の研究者は素直にその領域の最先端をぶつけるのも良いだろう。また、異分野・異業種の研究者であれば、その取り組む研究の拡張範囲に果実酸やコロイダルシリカのまだ見ぬベクトルとの接点を見出すことがポイントになる。果実酸とコロイダルシリカの融合領域を見いだせるなら、さらに興味深い研究テーマといえる。現業の延長線上、周辺領域、融合領域が、扶桑化学工業が外部研究者と共に開拓したい新たなフィールドであり、トップシェアという基盤から生み出される新規事業として、力強く世界を目指せる研究、開発になるだろう。(文・岡崎 敬)

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