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第47回味の素ファインテクノ 機能性材料賞採択者「反射角度依存性のない液晶材料で、次世代産業基盤材料を創る」 久野 恭平さん

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[第47回リバネス研究費 味の素ファインテクノ 機能性材料賞]採択者インタビュー 
【採択者】
久野 恭平
氏(立命館大学 生命科学部 応用化学科 助教)
【採択テーマ】
キラル液晶高分子を基盤としたソフト反射材料の創製
【研究費情報】
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液晶材料の研究開発は、1888年のキラル液晶の発見に始まる。自発的にらせん状分子配向構造を形成する特徴から、キラル液晶材料の光学的応用が検討されてきた。しかし既存技術では、らせん軸が1次元方向に制御された材料が主であり、多次元での制御が求められていた。そこで久野氏は独自の多次元制御手法をもとに、反射角度依存性のないキラル液晶材料を開発した。

恩師の言葉に導かれ、液晶研究の道へ

久野氏の専門は分子配向制御に基づく機能材料設計であ る。この分野に進んだきっかけは、大学3年次の宍戸厚教授 との会話に遡る。初対面にもかかわらず、新材料開発におけ る分子配向制御の重要性についての魅力を懇切丁寧に語って くれたのだ。「優れた機能分子を設計・合成することに加え、 分子を並べることで、より多彩な機能材料の探求が可能にな る」という概念に惹かれ、宍戸教授のラボへ進んだ。そこで、 既存の分子配向技術とは異なる、新原理に基づく分子配向技 術の開発を目指し、2次元分子配向構造を自在に制御できる “動的光重合法”の開発(Sci. Adv. 2017)など、従来の前提を 覆す成果をあげてきた。

分子の並びで、光の反射を操る

今回採択された研究はさらに革新的だ。1次元的な制御が主であったキラル液晶において、3次元的な分子配向構造をnm~µmオーダーで緻密に制御した固体材料の創製は世界でも僅かである。しかし久野氏は、分散重合という極めて簡便なプロセスで、3次元的にらせん構造を制御した微粒子が得られることを発見した。また微粒子内部のらせん軸方向を放射状に制御することで、反射色の角度依存性がない全方位反射特性の発現に成功した。
キラル液晶材料は外部刺激に応じてらせん構造が変化し、色情報を変化できる。これを利用すれば、微粒子を任意の材料に塗布や添加することで、材料に加わった外部刺激(熱、電気、力)で発色を変化させ、ガラスなどへの液晶表示や、材料に加わる熱や力をカメラで簡便に定量化できる特異な情報センシング材料にもなる。将来の産業基盤材料になりうる可能性を秘める。

社会実装へ向けた挑戦が始まる

現在所属する堤治教授のもとでは、力学刺激応答性を有するキラル液晶材料を開発する。この成果で、2019年度の滋賀テックプランターでファイナリストに選ばれ、同年のディープテックグランプリでは企業賞を受賞。「産業界からの評価は本当に嬉しいです。本研究の先には、粒子材料の塗布添加における接着性など物性制御が必要。味の素ファインテクノ社はまさにその専門家でもあり、ぜひ支援いただき進めたい」と久野氏。産業界との連携で新たな革新的材料の誕生に期待したい。

(文・伊地知 聡)

担当研究員からひとこと 
味の素ファインテクノ株式会社 研究開発部第2グループ 名取 直輝 氏
精密電子部品、半導体、自動車業界などで用いられる、特に柔らかい性質の粘着シートを開発しています。久野先生のプレゼンテーションには終始圧倒されました。学術的な面白さはもちろん、見た目のわかりやすさ、そしてとにかく知識の深さと熱量に圧巻でした。今回の申請内容に限らず、先生の技術の産業応用にむけて自社メンバーと共に議論できたら嬉しいです。

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