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2017.07.03 冊子『incu・be』

研究者の自由な発想で 飲食店を再定義する 株式会社𠮷野家

 今回で3回目となるリバネス研究費𠮷野家賞。毎年継続して研究費を設置するのは、𠮷野家が掲げる「ひと・健康・テクノロジー」をキーワードとした長期経営ビジョンの実現を、研究者との連携によって加速したいという想いからだ。未来創造研究所の春木茂氏は、これまでに出会った研究者との取組みを振り返って、視野の広さや行動力が非常に魅力的と述べる。テクノロジーによる未来の外食産業の創造を目指す春木氏に話を伺った。

テクノロジーで未来の飲食店を創造する

 𠮷野家の未来創造研究所は、未来の飲食業の在り方を考え続け、新たなテクノロジーを店舗に導入することにより、「ひと」への価値提供を推進する研究所だ。「飲食業は、“おいしい”のように情緒的な側面が多く、あまりテクノロジーが入ってこなかった分野です。しかし、今後はひとがやらなくてもよい作業はテクノロジーで補完したい。それによって生まれた余裕でお客様へのサービスを充実させたい。もちろん従業員への負担ももっと軽減したい。これが野家がテクノロジー導入に踏み切った想いです」と春木氏は話す。現在は12のプロジェクトが並行して走っている。例えば、重たい丼を積み上げる作業の自動化だ。2016年度の経済産業省のロボット導入実証事業の採択を受け、ロボット開発を担うベンチャー企業とタッグを組み、食器洗浄機から出てくる濡れた食器を識別してラッキングするロボットを開発、店舗への導入に至った。

 この12のプロジェクトは、既存の技術をいかに店舗実装できる形にするかに重きをおいて進められている。一方、リバネス研究費では、若手研究者の自由な発想で、未来の店舗の可能性を拡げるテクノロジー研究を推進することを考えて進めてきた。「将来的に飲食店の価値を高める研究を応援したいです」。

魅力を感じる研究者の力

 春木氏はリバネス研究費の採択者と連携してプロジェクトを進めるうちに、テクノロジーはもちろんのこと、研究者の「ひと」としての魅力を強く感じるようになったと話す。テクノロジーとはほとんど縁のない世界だったため、最初は研究者というと後ずさりしてしまう気持ちがあった。「研究テーマは絞り込んでいるけれども、視野は広い。論理立てて、エビデンスを持って話すところが信頼できます。なにより、会った時に感じるのは最後までやりきる、というパッションです。そして行動力を伴うのが研究者の強み」と感じているそうだ。𠮷野家の目指すビジョンと合致するならば、未来創造研究所からは、牛肉などの食材はもちろん、店舗を研究フィールドとして提供することも可能だ。「研究と実社会をつなぐきっかけになればと思っています。知りたい、実践したいという熱のある研究者には、ぜひ応募してほしい」と春木氏は話す。

異分野だからできる店舗の自由な研究

 3回目のリバネス研究費の募集テーマは「店舗を取り巻く環境と人の行動変容の関係を追求する研究」。春木氏が強調するのは“自由な発想”での応募を待っているということだ。「今すぐできることでなくてもよいです。前回採択した、マウスの音の嗜好性研究も、将来BGMに活かせるかもしれないと発想が広がりました。VRによる視覚や聴覚へのアプローチも非常におもしろく、どちらも採択すると決めました」と笑いながら、まったく異なる分野の研究とコラボレーションできていることが嬉しいと話す。今回のテーマも、飲食店や食と無理やり結びつける必要はないという。「飲食店の再定義は、今までになかった組み合わせからしかできないと考えています。未来の飲食店と結びつけるのは我々も一緒になって考えます。研究者のみなさんからの、想像を掻き立てるような自由な発想を楽しみにしています。野家も全力で研究をサポートします。一緒にパートナーとなって走りたい」と締めくくった。未来の飲食店を一歩進めるテクノロジーの開発が、またひとつ始まる。(文・戸金 悠)

第37回リバネス研究費𠮷野家賞 募集中

テーマ:「店舗を取り巻く環境と人の行動変容の関係を追求する研究」
採択件数:若干名
助成内容:研究費50万円
申請締切:2017年7月31日(月)24時まで

〈過去の採択テーマ〉

第28回 「未来の外食産業を創造する研究」
・解凍方法の最適化に向けたタンパク質分解の解析
東京大学 小南 友里 氏

第32回 「五感と感性や行動の関連性を追求する研究」
・五感情報提示により食品の情報的価値を向上させる食体験拡張手法の研究
東京大学 鳴海 拓志 氏
・音響環境における周波数特徴と嗜好性の関係
国立精神・神経医療研究センター 松本 結 氏

PROFILE
株式会社𠮷野家未来創造研究所 未来施設・設計担当 部長
春木 茂
1963年生まれ。1985年株式会社𠮷野家入社。2000年同社東海北陸営業部部長、2005年西日本事業部管理室長。2008年中国、合弁会社福建𠮷野家快餐有限公司総経理。2012年?野家第三営業本部本部長を経て2015年1月より現職。