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沖縄の農業を救う身近な未利用植物資源 田場 聡

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琉球大学 農学部 田場 聡 教授

 農業の歴史は、病害虫との戦いの歴史であるといっても過言ではない。沖縄県の栽培現場に様々な技術を導入して病害診断や病害虫の防除を行ってきた。琉球大学農学部教授の田場聡先生は、沖縄の未利用な生物資源に着目し、病害虫防除に有用な植物を発見した。それは、大学のキャンパス内にも生えている身近な植物だった。

沖縄の農業を脅かす有害線虫

沖縄は様々な植物が分布するだけでなく多くの野菜類が栽培されているが、これらの植物に寄生する線虫類が問題となっている。特に沖縄の県木に指定され、木目の美しさも注目されているリュウキュウマツに寄生する北米原産のマツノザイセンチュウは、いわゆる「松枯れ」と呼ばれるマツ科樹木の感染症を引き起こす有害線虫だ。この線虫は松の樹皮を食べるマツノマダラカミキリを介して媒介され、最終的に急性萎凋(急激なしおれ)によって枯死させるのだ。この他、生育不良や収穫量の低下を招くネコブセンチュウやネグサレセンチュウによる農作物被害が後を絶たない。

有害線虫の防除に効く身近な植物

「多様な植物が生息している沖縄には、線虫類に対して殺虫作用をもつ植物が存在するのではないか」そう考えた田場先生は、沖縄に生息する植物約40種の防虫効果を検証した。その結果、外来種として沖縄に広く分布するアワユキセンダングサの抽出液が有害線虫類(ネコブ、ネグサレ、シストセンチュウおよびマツノザイセンチュウ)や農業害虫(アブラムシ、ハスモンヨトウおよびモンシロチョウ幼虫など)に対して高い殺虫・忌避作用を示すことを見出した。このような植物由来の防虫剤は生分解性で残留しにくく、他の生物への影響も少ないことが期待できるという。

多様な資源で現場に役立つ実用化研究を目指す

かつて農業試験場(現農業研究センター)勤務時代には、病害虫被害による農家の惨状を何度も目の当たりにした。その後、大学の研究室へ戻ってからは研究成果をいかに早く現場へ応用できるのかを考えて研究を進めるようになった。「私たちの研究は、農家の生活を守ることにもつながる」と語る田場先生は、社会課題の解決を考えて研究に取り組むように学生を指導している。日本で唯一多様な植物資源が活用できる沖縄だからこそ、環境負荷が小さく、持続性のある総合防除法の開発ができるのではないか。農業現場目線の実用化研究に熱が入る。

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