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2017.09.01 研究費設置企業のご紹介

仮説を持ち寄り、研究的思考で新しい学び舎を創る 大阪明星学園

仮説を持ち寄り、研究的思考で新しい学び舎を創る

大阪明星学園は120年続くカトリック系私立中高一貫の男子校。リバネス研究費では初となる学校法人による研究費テーマ設置を行い、今後は学校現場を実証フィールドとして研究者と連携しながら学校教育の新しい形を模索していくつもりだ。“不易流行”を信念とする理事長の馬込新吉氏に本プロジェクトに懸ける思いを伺った。

本質を見極め、恐れず変化する

従来より日本の学校教育は体系化された知識の習得を中心としてきた。社会ニーズに応える形でこの傾向は高まり、現在では多くの中高学校教育が大学受験を見据えた勉強に終始していると馬込理事長は指摘する。知識を補う感動や驚きを伴う体験を、以前は家庭や地域コミュニティが与えていたのかもしれない。「しかし、社会が豊かになり、満ち足りた生活が日常となった現代では、現実にある課題を目の当たりにしたり、強烈に何かを渇望するという経験が少なくなったように思います」。“それだけで子供達が本当に成長するのか?”というのが同氏の疑問だ。目的や課題意識なき知識のインプットに陥ってはいないか。得られた知識を使い、社会の一員として何をなすかこそが重要だ。「すべての生徒らが自らの存在意義を問い、その答えを持ってしっかりと人生を歩んでいってほしい」と話す馬込理事長は、学校現場にも変革が必要な時期がきていると感じている。

少年よ、渇望せよ。

生徒らが自分自身を深く掘り下げて考えるためには、逆境でもがく中で、自分が何を求めるのか自問し、そしてその頑張りがなんらかの結果として跳ね返ってくる経験が重要なのではないかというのが現在の仮説だ。「そのためには知識だけではない、体験を伴う新しい教育方法が今の学校現場には必要だと感じています」。その原型を見たのが昨年12月に開催された“中高生のための学会サイエンスキャッスル”だった。そこには次世代の研究者たちが自らの興味や課題意識を軸に取り組んだ研究の成果を堂々と発表し、大学やベンチャー企業の研究者と積極的にディスカッションをする姿があった。また、譲れない思いを持った研究者の熱に直に触れる機会も、生徒らの意欲を掻き立てるきっかけになると感じたという。大阪明星学園は今年も関西大会の実施会場として校舎を開放する予定で、世代や分野を超えた多様な研究者の出会いを生む拠点として存在感を示しつつある。これに加え、今回の研究費設置を起点として、アカデミア研究者がもっと学校に足を運んでくれる流れを作ることが次の仕掛けだ。

ワクワクする仮説が集う学校に

「日本で一番、仮説が集まってくる学校にしていきたい。学校教員たちもそれぞれ自分の仮説を持っています。しかし、そのアイデアを実際に検証する手段をまだ持っていない」。本賞の申請者にはいい意味での刺激物となって、自分自身の仮説を投げ込んでほしいと思う。そして当校をフィールドに、その仮説を検証していくプロセスを共有してもらいたい。「教員たちもその姿を見て学ぶつもりでいます。これから10年、20年かけて本校は新しいカリキュラムや方法論を作っていかなくてはならない。今回の取り組みはその一歩目です」。今回募集するテーマに明確な範囲は設けていない。学校教育にダイレクトに関わるテーマはもちろん、学校現場を活用することで前進するであろう研究テーマや実証段階にある各種テクノロジーの開発など幅広く受け入れる。想像もつかなかった研究テーマが集まることを楽しみにしている。

教員と研究者が共に学ぶ

「このプロジェクトをきっかけに教育の世界にも研究的な思考が根付いていくといい」と同氏は未来の教育現場の在り方に思いを馳せる。覚悟と熱意を持った研究者が、仮説検証を進めていく姿を近くで見て多様な考えに触れることは、教員にとっても生徒にとっても貴重な学びとなるだろう。同時に、血の通った子供がいて、現場で戦っている先生がいるリアルな教育現場には、研究のヒントもたくさん転がっているはずだ。この学園が、研究者を含めた皆にとっての学び舎となることを期待する。(文・中嶋香織)

リバネス研究費申請お待ちしております

【2017年11月30日〆切】第38回リバネス研究費 大阪明星学園賞


PROFILE まごめ・しんきち

大阪明星学園理事長・校長。1951年長崎県佐世保市生まれ。1971年カトリック修道会「マリア会」入会、1987年上智大学神学部を卒業、翌年カトリック司祭叙階。暁星学園(東京)、海星学園(長崎)を経て1995年に大阪明星学園の副校長に着任。2009年に学校長に就任し、2016年より理事長を兼任。「他者の痛みがわかるクリスチャンセンスを身につけた若者を育てること」を目標に、日々教育活動につとめている。