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社会に貢献する、 卵子選抜・保管技術の開発を目指す 星野 由美

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広島大学大学院生物圏科学研究科 助教 星野 由美 氏

星野氏の行なっている卵子操作技術の開発は、生命の神秘である“生殖”の初期過程を理解するだけでなく、畜産分野では家畜の生産を支え、医療分野では妊娠を願う人の助けとなる等、実用面でも大きな影響を与えるものだ。現在は多くの分野の研究者を巻き込みながら、実用的な技術の開発という夢の実現に向けて走り始めている。

生殖を扱う世界を変える卵子操作技術

 受精やその後の発生を左右するのは卵子の質による部分が大きい。この分野の研究者の中では共通の見解だ。しかし、質の高い卵子を選抜し、質を保ったまま保管する技術は未だ改善の余地がある。これまでのところ、卵子の質を判断し選別する技術は確立されていない。また、良い卵子が選抜できたとしても、現在の凍結保存では、細胞毒性のある薬品の利用が必須、かつ凍結障害も免れないという課題がある。修士課程から卵子の染色体分配の研究を地道に続けていた星野氏は、これらの課題を解決すべく、卵子選抜技術、そして卵巣の未凍結保存技術の確立に挑戦している。

温度の差異で“良い卵子”がわかる

 星野氏は良い卵子を見分けるために、細胞内の温度の差異に注目する。0.2℃の差を見分けられる温度プローブを用いた研究で、卵子の染色体分配で重要な機能を果たす紡錘体や紡錘体極に存在する中心小体周辺物質の温度が高いと、受精後の染色体分配異常がほぼ100%起こらないことを発見した。紡錘体の温度が高い卵子では、染色体を分配する張力の起点である極が明瞭で、染色体もきれいに束ねられている。この状態だと染色体分配で異常が起こりにくいと星野氏は予測する。現在は仮説の検証を行いつつ、実際の卵子選抜に使用する非侵襲的な細胞内温度の測定方法を探索している。

実用化への熱意が拡げる研究の輪

 医師が参加する学会発表での「それってどうやって臨床にいかせるの」との問いが、彼女が技術の実用化に踏み出すきっかけとなった。

 「新しい技術の開発にはどうしても他分野の力が必要です。リバネスが開催する超異分野学会※1に参加してみて、普段出会わない異分野の研究者から刺激やアドバイスをもらい、研究に新たな視点が加わりました。それによって、技術開発という自分の夢が達成できるという可能性を感じることができました」。

 生命を知りたい、そして研究成果を世の中に生かしたいという純粋な思いが、多くの研究者・技術者を動かし、世界を変える技術を生み出しつつある。(文:重永美由希)

※1 超異分野学会はリバネスが毎年開催している学術イベント。専門化、細分化された研究の知識に横串を通し、他の分野の人でも利用できる知識を生み出すことを目指して、研究分野、業種の垣根を外して人が集まり、議論を行なっている。

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