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「人に貢献したい」その夢が、 学びの輪を紡いでいく お茶の水女子大学長 室伏 きみ子

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お茶の水女子大学長 室伏 きみ子

あなたの知らない!? 私の大学

日本に700校以上ある大学。教育にかける想いや理念、情熱も大学の数だけある。外から見ているだけではなかなかわからない大学の個性や特色を、大学トップの言葉から紐解いていきます。

今回は、国内屈指の女子大学であるお茶の水女子大学の室伏きみ子学長にお話を伺った。大学の統廃合が進む中、なぜ国立の女子大学で在り続けるのか。その真意は性別の壁を遥かに越えていた。「自分以外の誰かに貢献するために学びたい」。そう願うすべての女性に門戸を広げることは、結果として、世界中の人に学びの輪を広げていくことだったのだ。

「学ぶ意欲を持つすべての女性たち」のための場を作り続ける

1875年、日本初の「女性のための国立高等教育機関」として設立された東京女子師範学校を起源に持つお茶の水女子大学。卒業後、教職に就くことで学費が免除されることから、女性のための師範学校設立は、経済的な理由で進学を断念せざるを得なかった多くの女子学生に学問を修めるチャンスを与えた。日本初の女性理学博士となった保井コノ氏も同学の卒業生であり、研究者・教育者として活躍した。「学ぶ意欲をもつすべての女性のために—」。140年以上の時を経て今もなお、その精神は引き継がれている。2004年の大学法人化に伴い、国立の女子大学の存在意義を問い直した際に、お茶の水女子大学はすべての学ぶ意欲のある女性の「真摯な夢の実現の場として存在する」ことを掲げた。それを明確に示す取り組みとして、女性という理由で、自国で教育が受けられないアフガニスタンや開発途上国の女性を受け入れ、研究指導や教員向けの研修を行った。国立大学として女子大学を貫くその姿勢は、日本国が女性の教育を支援していることの象徴でもあるのだ。

「真摯な夢」を持つ学生を育みたい

お茶の水女子大学が「学び」を届ける先は、現在では女性のみにとどまらず、あらゆる世代や場所へと広がっている。「自分の利益のためではなく、世のため、人のために学び、学びの輪を広げたいと考える教職員や学生たちが本学には揃っています」と室伏学長は誇る。東日本大震災後には、設備を失い理科の実験ができなくなってしまった子どもたちのために専用の実験キットをつくり、多くの研究者や学生が出前授業などを継続して行っている。2006年に設立されたサイエンス&エデュケーションセンターでは、南海トラフ等のこれから地震が起こる可能性がある場所へ、災害時に迅速に教育環境を復旧するシステムを開発中だ。少人数教育を実施することで、教員と学生の交流も密なものとなり、先達の意志がまた引き継がれていく。「真摯な夢とは、自分以外の人、国、社会に貢献したいと願う気持ちです。そんな夢を持った学生を育む場所であり続けたい」と室伏学長は語る。

学べる分野を広げ、「学びたい」思いに応える

そして2016年4月、お茶の水女子大学は、新たな学びの場を生み出すべく、特に近年不足しているといわれている理工系女性人材に着目し、大学院に「生活工学共同専攻」を設けた。あえて「生活工学」と標しているのは、工学の基礎から応用まで幅広く学問を理解した上で、生活者の視点で人間生活の多様な課題を解決する人材の育成を目指しているからだ。さらに、ライフスタイルの多様化に応じて、工学分野を越えた広範な分野の教員も研究指導に加わることが特徴だ。「男性とは異なるライフスタイルを持つ女性は、ものづくりの分野にも新しい風を吹かせることができます。ここから巣立った彼女たちが活躍することで、工学を『学びたい』と思う人が一歩踏み出すきっかけになれば」と室伏学長は願いを込める。

「学びたい」すべての人の思いに応え、学びの場や機会を提供する。それがお茶の水女子大学が先人より受け継ぎ、実現し続ける「真摯な夢」なのだろう。

取材を終えて

私がリバネスと出会ったのは、お茶の水女子大学で開かれた博士課程学生向けの企業説明会でした。男子学生である私の相談にも快く乗っていただいたことを、よく覚えています。どんな相手にでも、人の成長に関わる場面を全力でサポートしてくださるその姿勢には、長く伝えられ続けてきた大学の理念があったこと、取材を通して知ることができました。 (文 鷲見 卓也)

大学DATA お茶の水女子大学(国立大学・1875年創立)

東京女子師範学校の設立から140年以上の歴史を持つ女子大学。比較的小規模なキャンパスだが、文学、教育学から舞踊などの芸術、理学、生活科学まで幅広い分野における少人数教育による細やかな指導を行う。大学院が人間文化創成科学研究科のみであるのは、学科内の異分野交流を促す狙い。結婚や出産などのライフイベントに合わせた休学や復学、育児支援に柔軟に対応するなど、学生の多様なニーズに応える体制を有することも大きな特徴。

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