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2017.07.03 冊子『incu・be』

人が集う「駅」に新たな価値を! モビリティ革命の同志求む 東日本旅客鉄道株式会社

    通勤、通学、通院やショッピングなど一日約1700万人ものユーザーを抱える東日本旅客鉄道株式会社(以下JR東日本)は2016年11月、技術革新中長期ビジョンを発表した。同社はIoTやビッグデータ、AIなど最先端の技術を活用してより良いサービスや安全性を提供していく“モビリティ革命”を実現する。「電車に乗って移動する」に留まらない、人々がより良い生活を送れるようなサービスを構築していくにはどうすれば良いのか。同社執行役員の横山氏に、その将来的な展望と今回のリバネス研究費JR東日本賞設置の狙いについて語ってもらった。

社会を支えるインフラのビッグデータ

 JR東日本は世界的な大都市圏である関東エリアのモビリティを支え続けている。昨今、センサーやその周辺機器の進歩を受けて、駅の利用に関する様々なデータを容易に取得できるようになってきた。実際に、山手線では既に各車両の混雑状況や、空調の効き具合、列車部品の劣化度などをリアルタイムでモニタリングすることができる。また、車両や駅設備・橋・トンネル、線路周りの崖や構造物の状態をモニタリングすることなども可能になりつつある。他にも列車の運行情報、駅の構内や駐車場、ホテルやコンビニをはじめとする駅ナカサービスなど人の移動に紐づく情報が蓄積されている。以上は一例にすぎないが、毎日、莫大な情報が生み出されているJR東日本が保有する各種施設(図1)は、まさにデータの宝庫といえる。さらに、品川駅と田町駅の間には2020年に新駅がオープン予定。駅と駅前の開発地を合わせると約13haもの巨大な商業施設群が生まれる巨大プロジェクトだ。本施設も今後、研究のフィールドとして活用できる可能性があるという。大掛かりな実証研究も実現できるかもしれない。

駅や鉄道インフラの存在価値を見直す

 同社では、蓄積されたこのビッグデータを活用した新たな取組みを行っていく予定だ。例えば、訪日外国人や交通弱者も含めた個々のお客さまに対しての柔軟なサービス提供や膨大な設備メンテナンス費用の削減、自動運転車などの導入も視野に入れた目的地までのシームレスな輸送サービスの構築などだ。JR東日本に集まるビッグデータを社会的に価値のあるサービス創出に役立てる。「そのために同社の人間も多く動いていますが、発想の拡がりが限定的です。斬新なアイデアを持つ異分野の研究者と共にイノベーションを生み出していきたいと考えています」。JR東日本の持つ広大な研究フィールドを有効活用することで、人が集まる場所である“駅”の存在価値を新たに発見・創出することができるのではと同氏は期待を寄せている。

お堅い鉄道業界に新風を!

 斬新な発想を持つ研究者と莫大なアセットを持つJR東日本が組むことで、イノベーティブなアイデアが生まれるのではないか。例えば、いくつもの種類のデータの組み合わせ方によって関係性を見出し、そこから新しいサービスを創造したり、従来意図していた範囲に留まらないデータの活用方法を見出したりすることも可能だろう。今回の研究助成の対象分野はセンサー技術、ネットワーク、データ処理、AI、フィールド実証研究など非常に多岐に渡ると横山氏は想定している。しかし、同社が何より重視しているのは、JR東日本とともに社会に新たな価値を提供するテーマに挑んでくれるというメンタリティ。そして、分野にとらわれずに社会課題を解決していくという柔軟性だ。「一見すると鉄道に関係ない研究も大歓迎です。共に世の中の一歩先を行き、社会課題を解決していく仲間を募集します」。

 ビッグデータ研究を進めるにあたっての大きなハードルのひとつが「データをどうやって集めるか」だが、今回に限っては心配は不要だ。自身のアイデアを試すことができる膨大なデータとフィールドがここにはある。是非リバネス研究費JR東日本賞へ応募を検討してほしい。(文・長 伸明)

研究申請お待ちしております

【7/31〆切】第37回リバネス研究費 JR東日本賞

東日本旅客鉄道株式会社
執行役員 総合企画本部 技術企画部長 兼 JR東日本研究開発センター所長
横山 淳

PROFILE  1981年日本国有鉄道(当時)入社。1987年に東日本旅客鉄道株式会社入社後は、仙台支社設備部長、本社設備部次長(保線担当)、パリ事務所長、JR東日本研究開発センターテクニカルセンター所長などを経て、2015年より現職。