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2017.02.20 冊子『incu・be』

サイエンスと社会の 架け橋になるための修行期間 黒瀬 絵理香

高校生のときに血液に興味をもち、将来は自分の専門を生かして仕事をしたいと思い、バイオ分野の学部に進学した黒瀬絵理香さん。学部時代の経験を通して目標を見つけた彼女が進学先に選んだのが熊本大学発生医学研究所(以下、発生研)だった。彼女は発生研のどこに魅力を感じ、どのように自分自身を鍛えているのだろうか。

深く、幅広く、学べる環境を探して

黒瀬さんは、県内の別の大学で応用生命科学を学びながら起業部を立ち上げ、ビジネスプランを考え、チームを作り、ビジネスプランコンテストに出場した経験をもつ。「起業部の活動を通して、研究者は論文を出すことに、経営者はビジネスを大きくすることに注力していて、両者がかけ離れており、社会にサイエンスが活かされていない現状を知りました」。そのような中で研究成果を世の中に届ける、研究界と世の中の橋渡しができる人材になりたいと思うようになったという。そのためには研究を深めることと、社会を知る活動の両方が必要だったのです」と語る黒瀬さん。そんな彼女が、サイエンスを深く探求し、さらに幅広く社会での経験もできる発生研を進学先に選ぶには時間はかからなかった。程なく黒瀬さんは発生研の門戸をたたき、HIGOプログラムのもと自分が目指す目標に向かって歩み始めたのだ。

社会で求められる、研究者の姿

2016年8月から1か月間、彼女はHIGOプログラムの一環でアメリカのシリコンバレーを訪れ、現地の大学や企業を訪問した。シリコンバレーは多国籍でキャリアチェンジは当たり前、常に新しい価値が創造される現場だった。そこでは、自らの考えを相手に伝えられないと生き残ることはできず、黒瀬さん自身も1人の研究者として意見を求められた。また、博士のプレゼンスが高く、博士号をもっていないと相手にされない現実も知った。

日本では感じられなかった研究者の価値を感じ、自分が身につけなければならないと感じたもの。それは、高い専門性や英会話力だけではなく、思考力、プレゼンテーション力、そして発信するものに対して責任をもつことだった。これらを鍛えるため、HIGOプログラムを通じて、中小企業の技術評価をする会社やシンガポールの企業でのインターンシップを予定しているという。

大学院は将来のための修行期間

現在は、講義や発生医学に関するセミナーを受講しながら、造血幹細胞の分化に関する研究を行っている。ES細胞から造血幹細胞への分化を誘導する仕組みを解明し、白血病などの血液の病気の治療に貢献することが目標だ。すぐに相談できる相手がいる環境があるため、最先端の実験機器を使った測定や遺伝子組換えマウスを用いた実験など先端的な研究を進めやすいと話す。

学部4年生時に経験した就職活動も、自分の考えを大きく変えた契機だったと振り返る。将来を考える上で、「自分がこれから何をしたいか」という問いにぶつかったのだ。「あの問いが自分の大学院選びにつながったと思います」。今は研究と社会現場での経験の両方ができて、毎日の生活は充実している。「慣れないことも多いですが、発生研での経験は私にとって目標を達成できる人になるための修業のようなものですね」と黒瀬さんは目を輝かせた。

黒瀬 絵理香さん プロフィール

熊本県出身。崇城大学生物生命学部卒業後、2016年に熊本大学大学院に入学し、HIGOプログラム生に選抜される。現在は、発生医学研究所幹細胞部門組織幹細胞分野に所属し造血幹細胞の研究の傍ら、Kumamoto Innovation Labを結成し、学生による異分野交流会を定期的に行っている。

(文 福田 裕士)

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3月11日(土)・12日(日)
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4月22日(土)@熊本
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