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第51回リバネス研究費 カイオム・バイオサイエンス賞 採択者「二度の研究費挑戦で進化した抗体医薬の種」遠藤 瑞己さん

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遠藤 瑞己さん

採択テーマ

熱機能性ケージド抗体を用いた生体深部で治療効果を誘導する医療技術の創出

東京大学大学院 理学系研究科化学専攻 助教
遠藤 瑞己 氏

二度の研究費挑戦で進化した抗体医薬の種

光や熱を使ってタンパク質の機能を制御し細胞を操作するツールの開発を行う遠藤氏は、カイオム・バイオサイエンス(以下、カイオム)賞に二度挑戦し、二度目に見事採択された。挑戦的なテーマを進化させた同氏に、研究のコンセプトや申請の思いを聞いた。

光で抗体を操るというアイデア

遠藤氏が学部学生だった2009年、光受容タンパク質を使って光で細胞移動を誘導する手法が発表された。この論文を読み、光でタンパク質に機能を付与できることのおもしろさに惹かれる。自身でも植物の光応答タンパク質を利用した細胞機能を制御するツールを開発し、有効性を実感する一方で、留学時に光受容能を付与した細胞内タンパク質が細胞の形態異常を起こすという壁にぶち当たった。光のスイッチとしての特性は活かしつつ、細胞への影響を抑える方法を研究室メンバーと議論する中で、光で標的分子への結合のオン/オフを切り替えられる抗体のアイデアが生まれた。抗体の抗原認識部位を光応答性の分子でキャップし、光刺激でキャップが外れて抗原に結合するようになる。これが遠藤氏が考えた方法だ。

社会実装への第一歩

「研究を深めていくだけでなく、成果を社会に還元したいという思いも持っています」と語る遠藤氏は、この手法を疾患の治療方法にも使えないかと考えた。ここで課題として挙がってきたのが、利用する近赤外光が生体深部まで届きにくいという点だ。考えをめぐらせる中で、熱でキャップの結合を制御し、抗体の結合能を操るという仮説に至った。折よく、2019年12月に公募が出ていたカイオム賞を知り、アイデアの検証を進めてみようと申請。この時は、惜しくも採択には至らなかった。

研究員との議論で広がった研究の視野

実は、不採択だった2019年度のテーマは今回採択されたものと同じテーマ。しかし、1年で大きく進化を遂げた。前回はカイオム社の研究員との面談審査まで進んだものの、研究員から出た応用面の質問などに十分に答えきれなかった。この時の悔しさは、どうしたら自分の研究をより魅力的に伝えられるのかを考えるきっかけになったという。2020年12月に新たな公募が出たことを知り、申請。そして採択に至った。「今回の申請は前回よりも進歩しており、実験機材を導入してすでに検証を始めているところにも感銘を受けた」と、面談に同席したカイオム社研究担当マネージャーの浅越健二郎氏も高い評価を寄せる。この研究費を通して成長した遠藤氏の研究アイデアが、抗体医薬の新たなツールの一つとして花開く日を心待ちにしたい。

(文・髙橋 宏之)

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