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第50回リバネス研究費 パナソニック アプライアンス社賞採択者「失われた声を取り戻す、新たな装着型デバイスの開発へ」竹内 雅樹さん

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採択テーマ

喉頭がん患者のための 失われた声を取り戻すデバイスの開発

東京大学 工学系研究科電気系工学専攻 修士課程2年(採択時)
竹内 雅樹 氏

失われた声を取り戻す、新たな装着型デバイスの開発へ

人々は、肺からの気流を声帯で振動させて発声している。しかし、がん治療等のため咽頭摘出や気管切開手術を受けることで、失声を余儀なくされた方は多い。口(舌)、咽頭、喉頭がんの1年間の新規罹患者数は、世界中で約75万人(2018年)に上るという。その中で東京大学の竹内氏は、声を失った患者さんの意見を聞きながら、従来の概念を変える新たな装着型デバイスの開発に挑む。

人の声に近いデバイス開発への挑戦

電気式人工喉頭( EL )は、声を失った方向けの発声補助器具だ。振動する器具先端を喉元に押し当てて、口内に振動を響かせ、舌や口を動かすことで声に変える仕組みだ。操作が簡単なものの、声帯音源と異なる単調な振動音を用いるため機械的な声しか出せない、使用時に片手が塞がる、その見た目から奇異の視線を向けられるといった様々な課題が存在する。「20年以上前に日本で初めて製品化されたELが、今も主流として市販されていることに驚きました」。そこで竹内氏らは、独自のアルゴリズムを用いて自然な声を出せる、首元装着型のウェアラブルデバイス“Syrinx”の開発に挑んでいる。

身につけたいと思えるデバイスに

首元の装着部分には円柱型の2つの振動子があり、予め録音した過去の自分の声から作製した振動音を流す仕組みだ。これにより自然な声を実現する。振動音の作製アルゴリズムは、音声変換で用いられる機械学習技術を独自に応用させたものだという。また、身に着けやすいデザインを追求したことも特徴だ。バックルは軽量で頑丈な素材を使い、首の太さに合わせて調整可能で、気分によって色も変えられる。「身につけてかっこいいと思える、時計のようなスタイリッシュなデザインを目指しました」。機能の追求に留まらず、義手や義足の開発を行うデザイナーと共に、実際に患者さんの意見を聞いて作製したことがこだわりだ。

声を失った方が不自由なく話せる社会へ

竹内氏の原体験は、喉頭摘出によって声を失った患者のコミュニティ“銀鈴会”の発声映像との出会いにある。練習によって声はでるが、健常者の声からは程遠いと感じた。「実際に銀鈴会を訪ねたところ、人に近い声で話したいと打ち明けられました」。技術進展がされていない現実を知り、自らが先駆者となるべくチームを作って動き出したという。
「ビジョンは、声を失った方が日常生活で何不自由なく話せる社会を作ることです」と竹内氏。社会実装に向けて越えるべき課題は多くある。音質がばらつく、振動音漏れのノイズが耳障り、抑揚がつけられないなどが挙げられ、共同研究先を探したいという。従来の発声補助器具の概念を打ち破り、技術革新に向け奔走する竹内氏のこれからに注目だ。

担当研究員からひとこと

竹内さんの研究が進み世の中に出たら、声を失った患者さんにどれだけ喜んでもらえるでしょうか。まさに心と体を健やかにする研究テーマだと思います。大きなチャレンジであり、まだまだ大きな壁もあると思います。それでも壁を乗り越えてくれると感じた、竹内さんの行動力と、周りを巻き込み前へ進める人間性に触れ私も応援したくなり、採択させていただきました。

パナソニック株式会社 アプライアンス社 事業開発センター
渡邉 正人 氏

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