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第50回リバネス研究費 プランテックス賞採択者「葉の老化に伴う光合成活性低下のメカニズム解明を目指す」嶋川 銀河さん

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採択テーマ

なぜ野外の植物は 老化しても元気なのか?

関西学院大学 理工学部 生命科学科 助教
嶋川 銀河 氏

葉の老化に伴う光合成活性低下のメカニズム解明を目指す

作物の収量向上には、効率よく光合成を行うことが欠かせない。嶋川氏は、葉の老化に伴う光合成活性の低下が環境により異なることに注目し、本メカニズムの解明が光合成活性を維持、収量増加につながるのではないかと考え研究に取組んでいる。

収量向上を目指すアプローチ

現在のペースで世界人口が増加し続けた場合、食料不足の解決のために2050年までに作物収量を5割増加させる必要があると言われている。作物収量に直結する葉の光合成生産は、発生から枯れるまでの葉寿命における積算光合成量で決まる。例えば、イネでは葉が発生してから枯れるまでの約80日の間に最大活性で光合成が行われるのはわずか数日である。これを考慮した場合、葉の最大光合成活性を1.5倍に改変するよりも、十分な光合成活性を維持できる期間を延ばすことが得策ではないかと嶋川氏は考えた。

葉の老化を早期に検知するマーカーの発見

光合成活性は、葉の老化が進むことで低下していくが、葉の老化誘導および老化初期過程における光合成装置およびその制御メカニズムの変化については未だ明らかになっていない。これまでに葉の老化に関する研究は多く行われてきたが、植物種や栽培環境により、老化に伴って生じる葉の光合成装置の変化が異なり評価が難しかった。嶋川氏は、フランスのCEA-Saclay研究所においてオオムギの葉の老化について研究を行ってきた。その結果、非破壊的な近赤外分光法を用いることで、生きたままの葉を簡便かつ迅速に測定できる方法を見つけ出した。この手法では、老化の指標として従来用いられるクロロフィル量よりも感度の高い老化マーカーであるプラストシアニンの量を見積もることができるため、老化の誘導を事前に察知することができるようになった。

屋内と屋外で異なる葉の光合成活性

屋内と屋外環境でオオムギ品種を栽培し、本手法で測定したところ、老化の初期過程で生成する活性酸素の分子種に違いがあることがわかった。屋外環境で栽培されたオオムギは、屋内環境で栽培されたものに比べて、老化した葉でも高い光合成活性を長期間維持することを見出した。このことは、野外での環境要因が老化葉における光合成活性を支えることを示しており、本賞ではこれまでの成果を基にメカニズム解明を進めていきたい考えだ。ゆくゆくは、葉が老化しても光合成活性を維持する方法を確立し、作物の生産性向上を見据えている。今後、嶋川氏の研究成果が露地や植物工場など様々な植物の生産性向上につながっていくことを期待したい。

(文・宮内 陽介)

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