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第50回リバネス研究費 パナソニック アプライアンス社賞採択者「脳が未来を予測する仕組みを解き、モノに人らしさを」黒田 彗莉さん

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採択テーマ

予測符号化を模倣する深層生成学習モデル構築に向けた取り組み

お茶の水女子大学
人間文化創成科学研究科 博士前期課程1年(採択時)
黒田 彗莉 氏

脳が未来を予測する仕組みを解き、モノに人らしさを

飛んできたボールをキャッチする。どこに手を伸ばせばよいかを都度計算せずとも手を伸ばすことができる。これは脳が無意識のうちに情報を処理して瞬時に未来を予測しているからであるが、その仕組みはまだ分かっていない。黒田氏は人の予測の仕組みを解き明かし、深層学習モデルとして表現・実装しようと試みる。

瞬時に予測する脳の不思議

私たちは、言語や目の前の現象から様々な情報を受け取り、少し先の未来や過去といった時間関係を瞬時に捉えている。例えば、自動車が行き交う道路を渡る場面をイメージしてほしい。自動車が自分のいる方向に走ってきている時、私たちは自動車の位置や速度などの情報を読み取り、道路を渡りきれるかどうかを瞬時に判断している。つまり、車がどの時間にどの位置にいるのかという将来像を頭の中で予測しているのだ。黒田氏は、そのような不思議で見事な脳の働きに感動し、脳の仕組みを表現するアルゴリズムの研究に取組んでいる。

予測符号化の模倣で未来は予測できるか

近年の機械学習は目覚ましいスピードで進展しているが、ヒト脳のように、時間を認識して次に起こる事象を予測するには至っていない。ヒト脳は、環境から感覚器を通して入力される刺激と、過去の経験や知識などに基づいて導かれる予測との差分を処理するという、高度な情報処理を行っている。これを予測符号化といい、より精度の高い予測を実現している。黒田氏は、予測符号化を模倣することで、脳が時間関係を捉える構造や仕組みを機械学習モデルとして構築しようと挑戦する。現在は、自然動画像を用いて数秒先に起きる現象の予測まで可能なことが分かったという。今後はより長時間先まで正確性を伴って予測できるモデルへと発展させようと試みている。

モノに人らしさが備わる世界を目指して

本研究を社会の課題解決に活かしていきたいと考える黒田氏。そのひとつに、人手不足解消や負担軽減のために開発が進む、介護ロボットへの応用を考えているという。現在の介護ロボットは、人の次の行動を予測した上での動作はできない。もしロボットが、まるで人のように状況判断し自ら予測して動くことができたら、皆が安心して利用できるようになるのではないか。「こうした高度な予測技術が確立するまでには多くの時間がかかります。だからこそ、自分なりの考えを盛り込んで新しいモデルを開発したいです」。本研究の先には、黒田氏の考える“人らしさ”がモノに込められた、未来の世界が拡がっているに違いない。

担当研究員からひとこと

本研究によって、機械学習による未来予測が可能になると、“未来予想AI”を搭載した機器が、生活者の行動を予測して自律動作し、機器が生活者に寄り添って暮らしを支える未来がもたらされると期待します。「“未来予測”によって、機器に“人間らしさ”を与え、利便性だけではなく安心感をもたらしたい」という想いを持って研究を推進している黒田さんを応援したいと思います。

パナソニック株式会社 アプライアンス社 技術本部
和田 賢宣 氏

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