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第52回リバネス研究費 環境革命賞 受賞者「プラスチックの物理的再生で、リサイクルプラスチックに対する固定概念を変える」大久保 光さん

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大久保 光さん
大久保 光さん

採択テーマ

産業廃棄物の循環を目的とした高分子の自己再生能力を利用したマテリアルリサイクル樹脂歯車の創製

京都工芸繊維大学 工芸科学科 機械工学系 助教
大久保 光 氏

プラスチックの物理的再生で、リサイクルプラスチックに対する固定概念を変える

京都工芸繊維大の大久保 光さんは機械工学の中でも”トライボロジー”という物質同士の摩擦や表面相互作用を分析する化学に近い領域の研究者だ。彼が見出した技術は、劣化し廃棄されたプラスチックの物性再生技術である。この技術が確立されれば、廃棄されたシャンプーボトルを集め、再びシャンプーボトルを製造する”水平リサイクル”が実現できる。

産業界が抱える廃棄プラスチック問題に着目

近代において生産・普及したプラスチック製品は、今や私たちの生活に不可欠なものとなっている。しかし,ほとんどが“使い捨て”を想定して生産され続けているために、近年では廃棄後の処理が問題となっている。特に、消費者の手に渡ったプラスチック製品はリサイクル率が高まりつつあるが、工場などにおいて利用されるプラスチック部品は安全性・信頼性の観点からリサイクル製品が使用できない。大久保さんは、適切なリサイクル処理によって材料的性質が低下しなければ、産業界においてもリサイクル製プラスチック部品の利用が実現すると考えた。

物性劣化を紐解く鍵は「成形時の記憶」

従来プラスチックの物性劣化は、プラスチックを構成する高分子が熱や紫外線によって分断されることが原因だとする化学劣化説によって説明されてきた。しかし大久保さんは、成形時に高分子中に残る応力の記憶がリサイクル後の製品にも残存することが物性劣化の主な原因となっているのではないかと考え、熱をかけながらプラスチックを混錬する独自の処理方法を生み出した。混錬処理を施したリサイクルプラスチックは新品に匹敵する延性を示し、リサイクル品特有の脆性が大きく改善された。また、物性だけでなく結晶構造も製品相当品とほぼ同様であることが確認された。すなわち、大久保さんの確立した手法を用いると高強度かつ高信頼性のリサイクルプラスチック製品を作ることができると証明されたのだ。

”水平リサイクル”実現への第一歩

今年度より京都工芸繊維大学に研究拠点を移した大久保さんは、研究室内で廃棄されるプラスチック製歯車を独自の処理方法によって廃棄前のプラスチック製歯車の状態へと再生しようと試みている。すなわち、物性及び機能を損なわない完全な”水平リサイクル”を実現する一歩を踏み出すのだ。また、研究室に留まらず、プラスチックの切削カス等を排出する製造業者と連携して現場における”水平リサイクル”の実現可能性についても今後探っていきたいと考えている。
”再生プラスチックは脆弱で機能性が乏しい”という固定概念を製造現場での成功事例の累積によって覆すことができれば、産業界からの廃棄プラスチックが0になる未来が訪れる。

(文・小山 奈津季)

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