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第47回味の素ファインテクノ 機能性材料賞採択者「古くて新しい“有機電気化学”で、環境調和型物質合成に挑む」 信田 尚毅さん

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[第47回リバネス研究費 味の素ファインテクノ 機能性材料賞]採択者インタビュー 
【採択者】
信田 尚毅 氏(東京工業大学 物質理工学院 特任助教)
【採択テーマ】
カチオンの分子機能を最大化する高分子材料の創出
【研究費情報】
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一般にはあまり聞き慣れない言葉かもしれないが、“有機電気化学”は電気エネルギーを反応の駆動力として利用する有機電解合成を基軸とした学問だ。18世紀を起源として20世紀後半に急速に進歩し、昨今特に環境分野への応用が注目されている。信田氏は、有機電気化学で創る新材料で環境調和型工業プロセスへの寄与を狙う。

伝統の有機電気化学で辿り着いた新発想

学部時代はイオン液体を研究していた信田氏。電荷挙動へのさらなる関心から、有機電気化学分野で著名だった東京工業大学渕上寿雄教授(現・同名誉教授)・稲木信介助教(現・同准教授)の研究室へ進学。そこでは、通電により電子移動を制御することで、複雑な分子変換や、不活性結合の活性化など、まるで手品のように反応を駆動させる魅力に惹かれた。研究に没頭する中で、ある出会いがあった。「私は、一電子移動によって挙動が変わるラジカルカチオンのような化学種に着目していましたが、反応性が非常に高いため寿命が短く、反応性の理解や制御が困難でした。その制御方法として辿り着いたのが、非配位性アニオンであるBArFでした」と申請内容へのきっかけを振り返る信田氏。

BArFアニオンでラジカルカチオンを安定化

本申請で信田氏は、世界初となるBArFを高分子側鎖に導入した新規高分子合成を行い、光触媒や酸化剤、発光源といった任意の外部刺激によって反応する“機能性カチオン”の反応制御を目指す。BArFは中心にアニオンを持ちカチオンと静電相互作用こそするものの、大きな立体構造のためカチオンを直接配位させず周囲に保持したまま安定化できる。また、求核性が非常に小さくカチオンの反応性を阻害しないため、反応駆動力を最大化できるのだ。「簡単な塩交換により様々な機能性カチオンを導入可能です」と信田氏。つまり、BArFを用いて“機能性カチオン含有高分子”が作成できれば、有機合成における様々な反応場への応用可能性が拓けるのだ。

様々な化学プロセスの高効率化に貢献

 有機電気化学は、溶液を通電するというシンプルな手法のため、既存の化学プラントに導入しやすく、かつ反応を進める試薬も減らせるため環境調和型技術として近年注目されている。「採択企業は、まさに様々な材料の化学工業プロセスを有している。本研究の発展として、ぜひ同社へ貢献したい」。本研究が発展した暁には、様々な有機化学反応の高収率化や触媒の高性能化など“化学プロセスの高効率化”に貢献する材料になるだろう。

(文・伊地知 聡)

担当研究員からひとこと 

味の素ファインテクノ株式会社 研究開発部第4グループ 長嶋 将毅 氏

パソコンの半導体向けのフィルム状絶縁材料の開発をしています。信田先生は知識が深くて広く、かつ説明が上手で、ディスカッションが非常に面白かったです。先生の研究が進めば、これまでにない全く新しい反応場が作れるかもしれません。その汎用性と将来性に期待して採択させていただきました。

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