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第47回超異分野学会賞採択者「異分野を大胆に掛け算し、健康と食の課題を解く」五領田 小百合さん

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[第47回リバネス研究費超異分野学会賞]採択者インタビュー 
【採択者】
五領田 小百合 氏(辻料理教育研究所研究員、
獨協医科大学医学部公衆衛生学講座 協力研究員、鶴岡市立農業経営者育成学校 SEADS 研修生)
【採択テーマ】
料理人・パティシエの挑戦! ランダム化比較試験を用いた健康無関心層における健康的な食選択継続と食品ロス低減のための多店舗介入研究
【研究費情報】
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NIPPON DATA2010の調査結果によると、不健康な食習慣には、実は学歴や経済状況等の健康の社会的決定要因の差が影響しているという。国立医薬基盤・健康・栄養研究所(健栄研)で当時この研究に携わっていたのが五領田氏だ。公衆衛生学と行動経済学、さらには調理・製菓学校や農業経営まで、異色の研究経歴を駆使して健康と食の課題に挑む。

健康無関心層が無意識に健康になるために

 「健康に対して無関心な方々でも、無意識のうちに健康的な食選択を継続できる仕組みが必要だ」と考えた五領田 氏は、今回採択されたテーマにおいて、店舗に効果的な仕掛けを施すことで、健康志向の商品を自然に手に取るシス テム構築を目指す。例えば商品POPやアンケートなど、ちょっとした意識づけで人に望ましい行動を促す “ ナッジ ” の要素を取り入れている。都内製菓店で予備実験をしたところ、対象商品の売上が 2 倍も向上する結果が得られたという。店舗側には、売れ残りがちな健康志向食品の売 上改善に加え、フードロスを削減できる利点もある。今年度からはスーパーマーケット等の複数店舗の協力を得て、健康な食行動を促しながら、ビジネスとしても持続可能な仕組みを模索する。

公衆衛生学×行動経済学への転身

 五領田氏を特徴付けるのはそのユニークな研究経歴だ。元々の専攻は薬理学だったが、「医学研究の背景にある医療統計やデータを十分に理解したい」という思いから博士課程の途中でデータサイエンス分野への転向を決めた。そこで出会ったのが、健康に関わるデータを基に集団の健康の実現を目指す公衆衛生学と、人の行動変容を促す行動経済学の融合分野だ。翌年には、第一人者であるハーバード公衆衛生大学院イチロー・カワチ教授の元へ留学し、その基礎を学んだ。大胆なキャリアを歩む五領田氏だが、新しい専門への転向に当初は不安もあったという。「違う分野を歩んできたからこそ、各所で見つけた課題を組み合わせ、新しい研究スタイルを作っていい、と先生から諭され考え方が変わりました」と話す。

健康と食と農の課題を、超異分野で解決する

 もう一つ五領田氏を象徴するキーワードが“食”だ。学生時代に飲食店勤務を7年経験し、調理師免許まで取得した中で、フードロスを始め現場の様々な課題に直面してきた。「公衆衛生学を学んだことで、健康と食の課題が研究テーマとして結びつきました。それを横断的に解決するには、食の現場に協力を仰ぐ必要があると感じ、日本最大の調理・製菓学校である辻調グループ(辻調)に手紙を書いたんです」。五領田氏の熱意が通じ、博士号取得後は辻調で現場の料理人やパティシエと協働して研究に邁進する。その中で生まれた着想が今回の採択テーマだ。直近では、食の根幹を担う農業分野でも新たな挑戦を始めた。今年4月からは日本で唯一のユネスコ食文化創造都市である山形県鶴岡市で農業経営を学びながら、現地の農家と複数の教育研究機関とで、共に新たな社会課題解決型の研究プロジェクトを立ち上げている。まさに「超異分野学会」の理念を体現する五領田氏の活躍に、これからも目が離せない。(文・塚越光)

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