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第47回カイオム・バイオサイエンス賞採択者「医師という目線で研究と臨床を繋ぐ」貴田 浩志さん

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[第47回リバネス研究費カイオム・バイオサイエンス賞]採択者インタビュー 
【採択者】
貴田 浩志 氏(福岡大学 医学部 解剖学講座 助教)
【採択テーマ】
ウルトラファインバブルを用いた膠芽腫の抗PD-L1抗体/p53遺伝子治療法の開発
【研究費情報】
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抗体医薬において、効率的に患部に抗体を届けるドラッグデリバリーシステム(DDS)には依然課題がある。そこにウルトラファインバブルを用いたDDS技術を適用し、抗体治療と遺伝子治療を融合した新たな治療法を提案するのが貴田氏だ。医療現場に根ざした研究を実現させる、というその思いを聞いた。

既存に頼らず、自分で創る

 神経内科医として豊富な臨床経験を積んできた貴田氏であったが、既存の治療方法に限界を感じることもあったという。「神経疾患は進行の抑制や症状の緩和が主な治療であり、今でも根治できないものが多い。その現状を打開するための治療開発研究が必要だと考えました」。特に注目したのが、異常な遺伝子の修復や正常な遺伝子の導入により、疾患を治療する遺伝子治療だ。そして、遺伝子治療の大きな課題の一つである、目的の遺伝子を特定の細胞だけに届ける方法を探す中で出会ったのが、福岡大学で長年研究されてきたウルトラファインバブルの技術であった。

がん抑制の三重戦略

 ウルトラファインバブルとは、直径1μm未満の超微小気泡である。生体内での滞留性が高く、体内の目的部位で超音波照射を行うことで、薬剤を含有させたバブルが破裂し、疾患部位のみに薬剤を送達できるさせるシステムとして期待されている。貴田氏の戦略は、ウルトラファインバブルにがん抑制遺伝子のp53遺伝子と、免疫チェックポイント阻害薬である抗PD-L1抗体の両方を組み込むことで、悪性脳腫瘍の一つである膠芽腫の治療を目指すものだ。「当初は腫瘍以外の疾患を標的とし、治療遺伝子を組み込んだバブルを、病変に送達するキャリアとして、抗体を使う想定でした。今回の研究費への応募を機に、腫瘍的疾患を標的とし抗体自身の分子標的薬としての効果も掛け合わせたら、遺伝子治療と免疫治療の相乗効果を狙える、と着想したのです」。加えて、超音波照射とバブル崩壊そのものが腫瘍細胞にダメージを与えるため、さらなる抗腫瘍効果も期待できるという。

実臨床に向けてシナジーを生み出す

 抗体医薬は治療標的の枯渇が指摘されてきたが、貴田氏のように分子標的薬かつDDSのツールとして利用し、かつ他の治療薬との組み合わせも図れば、その用途はさらに広がりうるだろう。「臨床医であることが私の強みです。研究だけで終わらせず、この技術を実臨床の現場に持っていくことを目指したい」と話す。臨床と研究のシナジーを生む貴田氏のような存在が、モダリティを問わずこれからの創薬が発展する鍵の一つとなるだろう。(文・濱口真慈)

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