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第46回クボタイノベーションセンター賞採択者「リンゴ栽培における作業の省力化を目指す」太田垣 駿吾さん

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写真(左)太田垣氏、(右)滝川氏
[第46回リバネス研究費クボタイノベーションセンター賞]採択者インタビュー 
【採択者】
太田垣 駿吾 氏(名古屋大学大学院 生命農学研究科 講師)
【採択テーマ】
リンゴ栽培の省力化に向けた自家摘果性形質のマッピングと機構解明
【研究費情報】
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果樹においては、高品質の果実を作り出すために、樹木ごとに果実数や葉と果実のバランスなどをみた上で管理することが不可欠である。リンゴにおいても、果実の肥大、花芽の着生を促すために摘果が行われているが、そのほとんどは手作業に頼っている。太田 垣氏は、この摘果作業の軽減につながる研究を行なっている。

作業負荷のかかる摘果作業

 リンゴは果(花)そうと呼ばれる箇所に中心果1個、側果4、5個程度の果実(花)をつける。受粉すると複数の果実が着果するため、果実肥大と隔年結果防止のために中心果だけを着果させる「あら(一輪)摘果」と呼ばれる作業が必要とされる。通常、この作業には摘果ハサミが用いられているが、一般に満開後30日以内という短期間に作業を完了させる必要があり、多くの労力を必要としている。また、薬剤による摘花、摘果を実施することもあるが、処理時期が限られること、品種によっては効果が少ないことから、新規摘果技術の開発が強く求められている。

優れた落果特性を持つ系統を活用する

 太田 垣氏は、自家摘果と呼ばれる果実が自ら落果する機構を利用することで、リンゴの摘果作業の省力化を目指している。長野県果樹試験場により選抜された育成系統FYPr606は、側果落果率が90%程度と非常に高い自家摘果性を示すことが明らかにされている。落果する仕組みは、側果において満開後すぐに果実の軸部分の根元に離層が形成されることにより満開後1ヶ月以内に自然に脱離が起こる。この機構を活用していけば、摘果にかかる作業を大幅に減らすことができる。現在は、FYPr606を交配親とした自家摘果性をもつ新品種の効率的な選抜を実現すべく、FYPr606の示す自家摘果性の原因遺伝子のマッピングと形質判別用DNAマーカーの開発を行っている。さらに研究では、FYPr606の自家摘果機構を利用した摘果体系の確立を目的として、植物ホルモン処理による側果落果の促進効果について検証を進めている。

手作業からの脱却を目指して

 長野県で育成されたシナノスイートやシナノドルチェは、外観や食味が良いことから人気が出てきており生産量が増えているが、これらの品種は自家摘果性を示さない。「これらの品種とFYPr606を交雑させた個体を用いて自家摘果性の機構を明らかにし、摘果作業の効率化に繋がる品種作りに役立てていきたい」と太田垣氏は話す。試験場と協力して、すでにFYPr606と交雑した個体で落果特性を比較しているが、年1回春の限られた時期にしか検証ができないため、地道な研究が進められている。将来、自家落果性の高い品種が生み出され、あわせて植物ホルモン処理による摘果体系が確立されれば、作業の自動化・機械化も進むのではないかと期待を寄せている。リンゴ育種において一つの品種を作り出すには、10年以上かかるとされているが、太田垣氏の研究成果が生産現場の作業負荷の軽減につながっていくことに期待したい。(文・宮内 陽介)

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