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〜人は“食”に何を求めるようになるのか〜 株式会社?野家ホールディングス

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〈フードテックミートアップからの提言〉
〜人は“食”に何を求めるようになるのか〜

「ひと・健康・テクノロジー」をキーワードに、飲食業における新しい価値創造に挑み続ける株式会社?野家ホールディングスは、飲食店の再定義を推進している。これまで5回のリバネス研究費「はなまる賞」「?野家賞」を通じて7名の研究者を応援してきた。2017年3月、今後の飲食業はどう変わっていくのか、テクノロジーの導入で拓かれる未来とはどのようなものか、リバネス研究費の採択者である4名の研究者と、河村泰貴社長をはじめとする?野家メンバーが語り合う、第1回フードテックミートアップを開催した。

人口100億人時代における食とテクノロジー

 日本の人口は減少しますが、世界に目を向けると2050年には100億人に達します。“食”は生物として生きるための栄養の摂取という目的から、文化や産業の進展に伴い、団らん・コミュニケーションの場としての価値を提供するようになりました。今後、人は“食”に何を求めるようになるのか。こちらをテーマにディスカッションをしていきましょう。その中で、テクノロジーはどう活かされていくのでしょう。国内とグローバルの視点で切り分けた方がよさそうですが、食のテクノロジーはどちらを意識したものがよいでしょうか。

河村 確かにきれいな人口ピラミッドを描くフィリピンと、そうではない日本では食に求められているものが違います。一方で、基本的には技術開発は先進国の課題をターゲットにしていけばよいと考えています。それはフィリピンなどの国も将来的に発展し、日本と同様の道を辿ってくると想定しているからです。

 文化的な違いもあるのでは?

 あります。例えば日本でもサプリメントが広まりつつありますが、アメリカでの浸透具合と比べると大きく異なります。アメリカでは栄養補助に便利ということでポジティブな印象で広く普及していますが、日本では薬の偽物という捉え方をされることが多く、栄養はやはり食事から摂る方が良いとの考えが根強いです。

後藤 体質の違いも考慮しなくてはなりません。そもそも筋肉量が少ないアジア人は欧米人に比べ代謝異常を起こしやすいなど、人種や地域による違いがありますが、疫学的な視点での研究が日本では遅れていて、日本人独自のデータが不足しています。また、食事を含めた健康についての正しい情報が一般の方に届かないという課題もあります。

 世界的には人口が増える将来、食や農と並んでニーズが増加するのは食育も含めた教育でしょう。そして、テクノロジーが入っていくべき分野も重なっていると考えています。

鳴海 VR(Virtual Reality)の可能性のひとつとして、教育での活用があります。言葉だけでは実感を伴わないので伝わりづらいところもありますが、VRでは自分の10年後を体験することが可能です。VRでのシミュレーション体験で行動変化が起こる事例は、例えば人種差別の抑制など、いくつも研究成果として報告されています。もちろん食育にも活用できるでしょう。

嗜好性の多様化を外食産業が支える

 日本では、食は“栄養の摂取”から“食卓での団らん”へとその価値を変えてきました。そして近年では中食や外食が一般的になり、今後はさらなる少子高齢化や独身世帯の増加、働き方の多様化といった変化が起こります。今後、人は食に何を求めるようになるのでしょうか。

松本 “刺激”なのではないかと思います。私は音環境を変えることで生理学的・行動学的効果を提供することを目指しています。知見として、人に限らず動物にとって、新しい刺激は報酬になることがわかっています。例えば、新しい食感を作り出すことで楽しみをもたらしているのがお菓子。今後は食感にとどまらず、食に一層新しい刺激を求める時代になると考えています。

鳴海 まさに人は情報を食べていると考えており、音も情報のひとつです。人によって食に求める情報も、さらに“多様化”していくと思います。健康に特化する人、環境負荷にこだわる人、味のデータを求める人など、その多様性への対応をテクノロジーで支えたいと考えています。

小南 変わっていくというよりも、意外と100年後には“栄養”に戻っているかもしれないと思っています。今のタンパク質源である鶏、豚、牛といった家畜は遺伝的な多様性が小さく、これはひとつの病原体が原因で全滅するリスクを秘めています。そのため、これから注目されるのは魚、さらに未来は昆虫を食料資源として本格的に捉え、改めて栄養という観点に立ち戻っているのではないでしょうか。

後藤 みなさんと議論し、迷いも生じました。食事指導を行う場合、医者としては、医学的“王道”を推奨しているわけですが、一方で、それぞれの方が目指す“健康像”は異なります。食べることは生き方そのものに関わる課題であり、個別のニーズに応えることも大切であると改めて感じました。また、病気になってからではなく、子どものころから継続した食と健康についての“教育”が未来には必要だと一層強く思いました。

春木 単身赴任をしていて、若い頃には感じたことはありませんでしたが、夜寂しいと思うことがあります。コンビニで店員さんに話しかけられるだけで嬉しくなるのです。年齢や環境によっても感情が異なってくると感じています。テクノロジーが発展した未来では、病気を治したいとか、今日は楽しい気持ちになりたいとか、“目的ごとに店を選ぶ”ようになるかもしれません。

 社会として熟度が進むにつれて、人により価値観や求めるものが多様化していきます。多様な嗜好性をテクノロジーが支えうる世界がやってくるのかもしれませんね。

これからも必要とされる存在へ

 最後に河村社長、いかがでしたか。

河村 研究者のみなさんが見据える世界観、本当に刺激的な意見をいただけました。食というテーマ、その中でも外食といわれる分野。僕たちの存在価値が問われている時代です。外食の中でも結婚式や誕生日を祝うといった特別な場所ではない“日常食”という分野を預かっている飲食店は絶滅の危機にあると思っています。ダイエットに代表されるように、食欲は簡単に承認欲求に負けてしまう、ということがここ10年でわかってきました。その流れが、一事業者に食い止められるのかはわかりません。しかし、飲食業は多くの人を雇用し、そして多くの人に食を提供しているという点から公益性も高いと自負しています。これからも必要とされていくために、ぜひ、研究者の力を貸していただければと思います。

リバネス研究費申請お待ちしております

【2017年7月31日〆切】第37回リバネス研究費 ?野家賞

PROFILE敬称略

後藤 伸子

慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科/(独)日本学術振興会特別研究員RPD
肥満症における脳内報酬系の異常について臨床および基礎研究を進めている。
第11回リバネス研究費はなまる賞
採択テーマ:報酬系の異常病態から見た過食メカニズムの解明と肥満症の治療戦略

小南 友里

東京大学大学院 農学生命科学研究科 水圏生物科学専攻
魚類の筋肉組織におけるタンパク質代謝や、食品プロセスにおけるタンパク質分解に関する研究を行なっている。
第28回リバネス研究費?野家賞
採択テーマ:解凍方法の最適化に向けたタンパク質分解の解析

鳴海 拓志

東京大学大学院 情報理工学系研究科
拡張現実感やライフログの技術を活用し、見た目や香りを変化させて食体験を拡張する研究を数多く行なっている。
第32回リバネス研究費?野家賞
採択テーマ:五感情報提示により食品の情報的価値を向上させる食体験拡張手法の研究

松本 結

国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 疾病研究第七部
マウスにおける音刺激の周波数特性と嗜好性の関係について行動学的・生理学的な研究を進めている。
第32回リバネス研究費?野家賞
採択テーマ:音響環境における周波数特徴と嗜好性の関係

河村 泰貴

株式会社?野家ホールディングス 代表取締役社長
1968年生まれ。1993年株式会社?野家ディー・アンド・シー(現:株式会社?野家ホールディングス)入社。1997年9月セゾン総合研究所出向の後、2001年8月同社企画室グループ企画担当。2004年7月株式会社はなまる取締役。2007年4月同社代表取締役社長。2012年9月より現職。現在は、株式会社?野家代表取締役社長を兼務。

辻 智子

株式会社?野家ホールディングス 執行役員 グループ商品本部 素材開発部 部長
1979年4月味の素株式会社入社。1999年5月株式会社ファンケル入社、2007年6月より取締役執行役員・総合研究所長兼株式会社品質安全研究センター代表取締役。2008年7月日本水産株式会社顧問。2009年3月日本水産株式会社顧問、生活科学研究所所長。2015年より現職。

春木 茂

株式会社?野家 未来創造研究所 未来施設・設計担当 部長
1985年株式会社?野家(現:株式会社?野家ホールディングス)入社。2000年同社東海北陸営業部部長、2005年同社西日本事業部管理室長。2008年合弁会社福建?野家快餐有限公司総経理。2012年株式会社?野家第三営業本部本部長を経て、2015年1月より現職。

丸 幸弘

株式会社リバネス 代表取締役CEO
大学院在学中に理工系大学生・大学院生のみでリバネスを設立。日本初「最先端科学の出前実験教室」をビジネス化。大学・地域に眠る経営資源や技術を組み合せて新事業のタネを生み出す「知識製造業」を営み、世界の知を集めるインフラ「知識プラットフォーム」を通じて、200以上のプロジェクトを進行させる。

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